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女子サッカーに背を向け続けるJリーグのクラブたち

トピックス 大住良之(サッカージャーナリスト)

日本の女子サッカーが安定して発展するには、Jリーグのクラブが女子チームをもち、それぞれが日本のトップを目指さなければならない―。私はそう考えている。

2011年のワールドカップ優勝でいきなり「なでしこブーム」が訪れ、この年にはなでしこリーグで入場者が1万人を超す試合まで出たが、昨年の平均は2500人程度。今年はさらに落ちている。昨年ホームゲームの1試合平均が約6300人だったINAC神戸が今年は第8節終了時(ホームゲーム4試合)で1試合平均3844人という数字だ。

世界的に見ても、女子サッカーリーグの観客数は人気クラブでせいぜい2000人といったところ。プロとして成り立たせるのは非常に厳しい状況だ。プロとしては成り立たない。それではどのようにしたら、日本の女子選手に「良い環境」を用意することができるだろうか。

アマチュアのスポーツ選手にとって「良い環境」とは、自分の競技生活を理解してくれる職場があり、生活が安定していること、練習をするための決まった施設があること、そしてきちんとした指導者がいることなどだろう。

なでしこリーグには、INAC神戸を筆頭に女子サッカーに特化したクラブがたくさんある。そうしたクラブが今後もしっかりと運営され、長く続いてほしいと思うが、女子サッカーだけのクラブで選手たちに良い競技環境を提供し続けることは簡単ではないだろう。

だからJリーグなのだ。

その好例が、浦和レッズやアルビレックス新潟だろう。Jリーグのクラブだから、練習施設にも指導者にもこと欠かない。理解ある職場環境としては、地域の協賛企業がある。浦和や新潟の選手たちは、クラブの世話によりクラブ・スポンサーを中心とした地元の企業で雇用され、その企業での仕事をこなしながら練習や試合に励んでいる。職場の仲間たちから応援されることも、彼女たちの大きなモチベーションにつながっている。

高校の女子サッカーが過去10年間で長足の進歩を遂げ、大学も女子サッカーの強化に取り組むチームが増える一方にもかかわらず、卒業すると一部の選手を除いて多くがプレーをやめてしまうという現実がある。普通に就職をして、仕事をしながらプレーを続けるのは、並大抵のことではできないからだ。

日本全国には40ものJリーグクラブがある。そのすべてが女子のチームをきちんと運営してくれたら、日本の女子の競技環境は大幅に向上する。しかし現実はどうだろう。

現在、女子チームを保持しているJリーグのクラブは、12にすぎない。

なでしこリーグ所属チームをもつのが、ベガルタ仙台、浦和レッズ、ジェフ千葉、東京ヴェルディ、アルビレックス新潟の5クラブ、「チャレンジリーグ」に所属するチームをもつのは、セレッソ大阪、愛媛FCの2クラブ、地域リーグ所属チームをもつのが、ジュビロ磐田、岐阜FC、大分トリニータの3クラブ、そして県リーグ所属チームをもつのが、栃木SC、ザスパ草津群馬の2クラブだ。

このうち、C大阪、栃木、群馬の3クラブの女子は、18歳以下のチームで、高校生までだから、仕事の世話をする必要はない。

おわかりだろうか。女子チームの有無は、財力があるかどうかではないのだ。12クラブの内訳が、J1が5クラブ、J2が7クラブであることで明らかだろう。これらのクラブは、それぞれの地域のサッカーを代表する存在として自分たちのクラブがある以上、女子サッカーの発展にも責任があると考えて、それぞれに工夫して女子のチームの運営を行っているのだ。

1991年、Jリーグは、その立ち上げに当たって「2種」(高校年代)から「4種」(小学生年代)の男子のユース・ジュニアチームの保有を義務づけた。そのときに私は強く「5種」(女子)チームも含めてほしいと働きかけたが、当時の川淵三郎チェアマンはまったく関心を示さなかった。

そして2012年、Jリーグは「クラブライセンス」制度を制定し、2013シーズンから実施しているが、そこに「女子チームの保有」は義務づけられなかった。「女子チームの保有」はリストには入れられたが、必要度の等級は「C」(「達成が推奨されるものであり、将来において、達成が必須のものと改められる可能性があるもの」)とされ、義務づけられることはなかったのだ。

さらに、ご丁寧にも、「なお、当該女子チームは、公式競技会に参加する義務はなく、当該チームに所属する選手の登録は義務づけられない。

当該女子チームにおいて、サッカーの楽しさを提供し、他の女子チームとプレーする経験を得る機会を与えるために適切なイベント(スクール、クリニック、ミニトーナメント、地域レベルでのユース集会、等)を開催することが望ましい」と、ことさらにハードルを低くしている。これを読んで「うちも女子チームをもたなくては…」と思うクラブがどこにあるだろうか。

というわけで、日本のサッカーの人材と資金が集まるJリーグの40クラブのうち28クラブが、見事に女子サッカーに背を向けたままなのである。

栃木、草津、岐阜、愛媛といった、年間予算が5~7億円規模のクラブが女子チームを保有し、地域女子サッカーに対する責任ある態度を示している一方で、鹿島アントラーズ、大宮アルディージャ、柏レイソル、FC東京、川崎フロンターレ、横浜F・マリノス、清水エスパルス、名古屋グランパス、ガンバ大阪といった年間予算が30億円を超す経営規模のクラブが女子サッカーに知らん顔なのは、どうしてなのだろうか。

各クラブは、地域の女子サッカーの振興に対する責任をどう考えているのだろうか。そして、Jリーグは、なぜ女子チームの保有を「C」等級といった、わざわざ「もたなくていいよ」というようにスタンスにしたのだろうか。
(了)