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[U17女子W杯]従来の技術にスピード加わり躍動したリトルなでしこ、圧倒的な強さでベスト4進出

トピックス 大住良之(サッカージャーナリスト)

 中東のヨルダンで開催されている初めてのサッカーの世界大会、FIFA女子U−17ワールドカップで、「リトルなでしこ」が躍動している。グループリーグを3戦全勝、得点13、失点2で突破した後、準々決勝ではイングランドと対戦。これも圧倒的な試合内容で3−0と快勝して、2014年コスタリカ大会に続く連覇が視野にはいってきた。

 準決勝の相手はスペイン。10月17日午後7時(日本時間18日火曜日午前1時)に首都アンマンで行われる。ちなみに、もうひとつの準決勝はベネズエラ対北朝鮮。同日の午後4時(日本時間午後10時)にキックオフだ。

 前回、決勝戦でスペインを2−0で下して念願の初優勝を飾った日本。しかし第1回大会以来のこの大会での日本の記録は群を抜いている。

2008年にニュージーランドで始まったこの大会に過去4大会連続出場を果たし、20戦して16勝2分け2敗、勝ち点50は、2位の北朝鮮(21戦11勝6分け4敗、勝ち点39)を大きく引き離しているのだ。第1回大会の岩渕真奈をはじめ、毎回圧倒的なテクニックをもった選手を並べ、体は小さくてスピードはなくても、ショートパスをつないで攻め崩してしまう日本に、世界は手を焼いてきた。

 だが、今回、楠瀬直木監督が率いるリトルなでしこはひと味違う。テクニックの高い選手がそろっているのはもちろん、今回はスピードをもった選手が多く、チームとしても相手ゴールに向かうスピードが群を抜いているのだ。スピードのある攻撃に不可欠なボールなしでのスプリントの回数が多く、その距離も長いのが、今回のチームの大きな特徴だ。

★★★

 「スピード」を象徴するのがエースの植木理子(日テレ・メニーナ)だ。高い技術とシュート力に加え、相手に当たられても強靱な下半身でバランスを保ち、ワンタッチするごとにスピードが上がっていくドリブルは迫力がある。

 これまで4試合のうち3試合でMVPに選ばれ、準々決勝のイングランド戦では自陣で相手のパスをカットしてそこから50メートルをスピードドリブルで進み、右のスペースに送ったパスからFW遠藤純(JFAアカデミー福島)の先制点が生まれた。

それだけでなく、前半追加タイムには左サイドでパスを受けたMF宮澤ひなた星槎国際湘南)の内側を走り抜けてパスを受け、右足に持ち直してシュートを決めた。さらに後半35分には自陣左タッチライン際でパスを受け、そのままゴール正面まで実に55メートルをドリブルで進んで右足を振り抜き、ペナルティーアークの手前から強烈なシュートをゴール右上隅に叩き込んだ。

 植木のほかにも、攻撃陣にはスピードのある選手がそろっている。右サイドMFの宝田沙織(セレッソ大阪堺レディース)は168センチの大型で突破力を誇り、グループリーグのパラグアイ戦(5−0)で大活躍した。現時点ではややプレーが雑だが、それ以上にスケールの大きさを感じさせるアタッカーだ。FW遠藤は左利きのテクニシャンだがスピードもある。どくとくのリズムをもったドリブルは楽しみな存在だ。

 左サイドMFでプレーすることが多いMF宮澤は、本来はボランチタイプのプレーヤーのように見える。しかし技術や戦術理解のレベルが非常に高く、左サイドで攻撃をつくる役割を与えられている。

★★★

 だが、このチームの最大の強みはボランチの2人にある。身長154センチと小柄なMF菅野奏音(日テレ・メニーナ)は、チーム最年少の15歳(2000年10月30日生まれ)。だが小憎らしいほどに落ち着いており、確実にパスをつなぎ、攻撃にもからんでいく。

 菅野とボランチのコンビを組むのが、このチームのキャプテンであり、前回の優勝時にも全6試合中5試合にフル出場したMF長野風花(浦和レッズレディースユース)である。1999年3月9日生まれ。前大会の開幕時には、15歳の誕生日を過ぎてからわずか1週間という若さだった。

 高校2年生が中心の今大会のチームでは4人(GK2人)だけの高校3年生。これまで4試合にフル出場して大黒柱の活躍を見せている。ボランチの位置でボールを受け、キープし、ドリブルで運び、チームを落ち着かせる。ポニーテールに結んだ長い髪だけでなく、そのプレーの質の高さや守備時に見せる闘志は、澤穂希(引退)を思い起こさせる。

 長野が遠からぬ将来になでしこジャパンの中心になるのは間違いない。彼女の能力はその頭脳にあり、どんな形で相手がプレスをかけてきても必ず切り抜ける道を見いだし、遅滞なく実行することができる。ゲームメークの能力という面で、なでしこジャパンを含む日本の女子サッカーのなかでも傑出した力の持ち主であると言ってよい。

★★★

 全員を取りあげることはできないが、今回もリトルなでしこには多数の楽しみな選手がいる。連覇がなるかどうかはわからないが、日本の女子サッカーがその育成部門において正しい道を歩み、ユース年代を豊富な才能の泉としているのは間違いない。

 このチームを見ながら思うのは、「あとはパーソナリティーの勝負」だということだ。

 成長するための努力を続けられるか—。
 勝負がかかったときに責任を背負って戦うことができるか—。
 あらゆる面で、サッカー選手として生きることができるか—。

 ここまでは優秀な指導者に導いてこられただろう。だがこれからは自分自身が何をし、どう生きるかにかかっている。このチームから、ひとりでも多くが強いパーソナリティーをもった選手になってほしいと思う。
(了)