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[選手権]十文字|最後のピースを探し続けた1年、ポゼッションサッカーを花開かせた守備力の向上

トピックス Takuma Omori(みなサカ編集長)

川端涼朱、熊谷明奈、豊原彩葉、佐藤幸恵、梶井風薫、源間葉月、鈴木紗理、村上真帆、松本茉奈加、中原さやか。

2014年のインターハイでスタメン、サブに名を連ねた、当時1年生だった十文字の3年生10人の顔ぶれである。

十文字は2シーズン前から彼女たちが中心になり、ポゼッションサッカーを磨き上げ、チームを熟成させてきた。だが1年時は選手権、昨年はインターハイの出場権を逃すなど、ここまでの道のりは順風満帆だったわけではない。

「ボール持ってて負けるは嫌ですよね。ボールを保持して一発でやられたり、セットプレーひとつで負けちゃう」(石山隆之監督)。ポゼッションで相手を圧倒しながらゴールをこじ開けられない。そして、一発のカウンターやセットプレーで失点を喫し、幾度も苦杯を舐めてきた。

「最後なので今までやってきた積み上げを勝っても負けても自分たちのスタイルでしっかりやろう」。石山監督はそう言って、選手を決勝のピッチに送り出している。

決勝のスコアは1−0。ノエビアスタジアム神戸の舞台で自分たちのサッカーを表現し、大商学園のシュートを2本に抑える完勝だった。特筆すべきは、1回戦から決勝までの5試合で許した失点がわずか1だったことである。

過去2回の全国大会では作陽の壁に阻まれた。昨年夏のインターハイでは準決勝で対戦。試合を優位に進めながらもコーナーキックから失点すると、相手の堅い守備組織を崩せず0−1で敗れている。

咋冬に昇格を果たした関東女子サッカーリーグ2部では、1年目から3位に食い込む健闘を見せる(勝ち点33、10勝1分3敗)。だが、リーグ2位の得点力(45得点)を誇る一方で失点も多かった(25失点)。

「どうにかして改善したいとスタッフに話して、(守備を)重点的にやって今大会に臨んだ」(石山監督)と、ついに本格的な守備の整備に着手する。

その成果がまず見られたのが、11月に行われたプレナスチャレンジリーグ入替戦予選大会だ。セレッソ大阪堺ガールズ、ヴィクサーレ沖縄FCナヴィータ、ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエと戦った予選リーグを無失点で切り抜ける。

キャプテンの村上は、「自分たちは失点が多かった。今回は無失点で終われたので、本当にそれがよかったです」と語り、勝利以上に3試合を無失点で終えたことを喜び、自信を
掴んだ。

そして選手権の準決勝では、先制直後に修徳の同点ゴールを許す。互いに手の内を知り尽くし重苦しい雰囲気の試合となったが、失点後も崩れない。修徳が得意とするコーナーキックを立て続けに与えたが、そこでも踏ん張った。巧さと脆さが同居した十文字の姿はもうそこにはなかった。

大商学園との決勝では、相手を圧倒したポゼッションだけではなく、献身的な守備も光った。蔵田あかりは対峙するサイドバックのマークを離さず、攻撃の起点を潰す。決勝点の場面では村上が寄せてバックパスを出させた後、中原さやかが相手GKまで走って詰め、けりだしたボールを奪ったものだ。

ゴール前の粘り強さ、球際の強さ、前線からのプレッシャーなど献身さだけではない。しっかりと守備陣形を整え、相手に反撃の余地を与えない。柴山コーチらスタッフ陣の指導のもと、隙のない守備組織を作り上げた。

「メンバーも変えてないのにこんなに締まるんだ」と、石山監督も選手の戦術理解度の速さに舌を巻いた。

関東リーグ昇格、チャレンジリーグ昇格、そして全国制覇。石山監督が手塩にかけて育てた3年生を軸に据えたチームはこの一年、いくつものハードルを乗り越えて目標を達成してきた。"守備"という最後のピースが埋まり、十文字のパズルは完成した。