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[なでしこジャパン]アルガルベカップで新エースの座を確保した横山久美

トピックス 大住良之(サッカージャーナリスト)
 高倉麻子監督率いるなでしこジャパン。2019年女子ワールドカップ(フランス)と2020年東京オリンピックに向け、早くも「新攻撃陣」が見え始めた。

 2011年の女子ワールドカップ優勝から、なでしこジャパンの攻撃陣はほぼ固定されてきた。右MFに川澄、左MFに宮間、そして2トップには大儀見(永里)と大野…。昨年3月のリオ・オリンピック予選まではほぼこの形だったのだが、5月に高倉監督就任後は永里だけが残り、その永里も「クラブでのプレーに集中したい」と代表を辞退、ことし3月1日から8日までポルトガルで行われたアルガルベカップではまったく新しい攻撃ラインがテストされ、ポジティブな結果を残した。

 大会自体は、世界のトップ4チームが昨年スタートしたアメリカの「SheBelieves Cup」に出場したためやや寂しいものとなった。そのなかでもなでしこジャパンはグループリーグでスペインに1−2で敗れ、アイスランドとノルウェーに2−0、5−6位決定戦でオランダに2−3と2勝2敗。結果自体は輝かしいものではなかった。

 「勝負どころでの危機感や察知能力がまだまだ足りないと感じました。一人ひとりが自分自身のプレーを真摯に受け止めて考えていくことが必要」と、高倉監督も厳しいコメントを出した(JFAの公式サイトより)。しかし昨年のFIFA U−20女子ワールドカップに出場した3選手(左サイドバックのDF北川ひかる、攻撃的MFの長谷川唯、そしてFWの籾木結花)が体格の大きな相手選手に堂々と技術で渡り合い、新世代の息吹を強く感じさせた大会となった。

 なかでも、攻撃ラインは、右MFに中里優(22歳、148センチ)、左MFに長谷川唯(20歳、156センチ)、FWに籾木結花(20歳、153センチ)、そしてFW横山久美(23歳、155センチ)という小柄なカルテットが並ぶと圧倒的なテクニックで相手をきりきり舞いさせ、高い可能性を感じさせた。

 中里は昨年のアメリカ遠征で初招集され、以後交代出場を含めると高倉監督指揮下の全7試合に出場。7試合に出場しているのはDFの熊谷紗希(7試合フル出場)、MF宇津木瑠美、そしてFW横山久美とこの中里だけというところに、高倉監督の期待の高さを感じる。

 左サイドのMFとしてプレーする長谷川唯は、アイスランド戦でミドルシュートとワンタッチシュートで見事な2点を決め、パス能力の高さ、大きな相手も守備で追い詰めるがんばりなど、昨年来の急成長ぶりを「なでしこジャパンデビュー」のアルガルベカップでも実証してみせた。

 籾木結花もアルガルベカップがデビュー戦。ノルウェー戦で先発し、後半28分まで出場した以外は3試合で交代出場だったが、左足での圧倒的なテクニックは短時間でも目を引いた。残念ながら得点はなかったが、横山久美と組む2トップは魅力たっぷりだった。

★★★

 そして横山久美である。2010年にトリニダード・トバゴで行われたU−17女子ワールドカップ準決勝の北朝鮮戦で見せた「5人抜きゴール」で一躍有名になったが、十文字高校を卒業して加入したなでしこリーグの岡山湯郷ベルでは力を出し切れず、2014年にチャレンジリーグ(当時の2部)の長野パルセイロ・レディースに移ってから得点力を爆発、2015年のアルガルベカップでなでしこジャパンに初招集された。

 しかし守備意識の低さ、スタミナ不足など欠点も目立ち、佐々木則夫監督下のなでしこジャパンでは厚い信頼を受けていたとはいえなかった。昨年3月のオリンピック予選では、唯一得点の雰囲気をもっていたが、完全なレギュラーとは言えなかった。

 だが、昨年来の高倉監督下では、全7試合に出場。昨年の親善試合3試合はいずれも交代出場だったが、ことしのアルガルベカップでは初戦に後半から出場して追撃の1点を決め、最後の2試合、ノルウェー戦とオランダ戦ではフル出場して2得点と1得点。4試合で4得点、昨年からの「高倉なでしこ」7試合で5得点と抜群の記録を残している。それだけでなく守備面での急成長、スタミナも不安なしと、総合的にハイレベルなFWになったことを示した。

 もちろんU−17で有名になったドリブル突破の力もある。足が速いわけではないが、細かなボールタッチで狭いスペースでも相手をかわし、シュートに持ち込む。だが何よりもそのシュートの正確さ、決定力がすごいのだ。

 ことしのアルガルベカップは、横山が完全なエースになったこと、そして高いテクニックをもった小柄な攻撃のカルテットが姿を現したことで記憶に残ることになるだろう。

 次のなでしこジャパンの活動は、4月9日の「キリンチャレンジカップ」コスタリカ戦(熊本県総合運動公園陸上競技場)。震災から1年の熊本で、横山を中心としたなでしこジャパンの「新攻撃カルテット」が輝くに違いない。 (了)