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[なでしこジャパン]長谷川がトップ下に定着、戦術的な選択肢を増やしたベルギー戦

トピックス 大住良之(サッカージャーナリスト)

 ヨーロッパ遠征の第2戦、なでしこジャパンは6月13日(日本時間14日)にベルギーと対戦し、1−1で引き分けた。

 後半24分、FW籾木結花のFKを相手DFがクリアし損ねたところを拾ったFW菅澤優衣香が思い切りよく決めて先制したが、その3分後にロングボールを起点にした攻めで右からのクロスを許し、MFファンゴープにヘディングで同点とされた。

 この日のなでしこジャパンは、おそらくチーム史上初めての3バック。GK山根恵里奈の前に右から高木ひかり、熊谷紗希、市瀬菜々の3バック。右アウトサイドには中島依美、左には杉田亜未、ボランチに阪口夢穂と中里優を置き、トップ下に長谷川唯、FWには横山久美と田中美南を並べた。「3−4−1−2」システムと呼んでいいだろう。

 なでしこジャパンがこれからこのシステムで戦うということではないだろう。チームとしては、いろいろな相手に対し柔軟に対応できるほうがいい。

★★★

 後半立ち上がりに市瀬を鮫島彩に代え、杉田に代えて佐々木繭を送り込んだが、4バックに戻したわけではなく、鮫島が3バックの左、左アウトサイドに佐々木という布陣だった。得点を許したシーンでは相手をつかまえきれなかったが、1試合を通じて大きな問題はなく、必要であればいつでも使えるのではないか。

 それ以上に興味深かったのは、完全に中心選手のひとりとなった長谷川を90分間「トップ下」として使ったことだ。長谷川はこれまで一貫して左サイドで使われてきた。その運動量とテクニック、そして戦術眼の高さを、より2トップとからめる位置で使ってみたいという思いが、高倉麻子監督にはあったのではないか。

 長谷川は最初の10分ほどはなかなかボールを触れなかったが、時間が進むとともに生き生きとプレーにからみ始め、後半には落ちない運動量で圧倒的な存在感を示すようになる。

長谷川がこのポジションで使えるめどが立ったことは、4バックでもこれまでの「4−2−2−2」だけでなく、中盤をダイヤモンド型にする「4−3−1−2」あるいは「4−1−3−2」などのシステムにしても十分機能するということだ。試合結果は残念だったが、なでしこジャパンと高倉監督にとって「戦術的選択肢」を大きく広げたという意味では収穫の大きな試合だったと言えるだろう。

★★★

 この日のGKは188センチの山根。4日前のオランダ戦で先発予定だった池田咲紀子がウォーミングアップ中の負傷でこのベルギー戦を前に離脱したのは残念だった。

オランダ戦に出場した山下杏也加は好プレーを見せたがまだ安定感がなく、この日の山根も高いボールへの強さを見せ、決定的なピンチも2回にわたって防いだが、後半10分には味方からのパスをコントロールミスして決定的なピンチを招くなど、やはり不安要素が大きい。

 プレーのスタイル、そして安定性からみると、現在のなでしこジャパンに最もふさわしいのは池田ではないか。この2試合でそのプレーが見られなかったのは残念だった。

 ベルギー戦で最も気になったのは、ドリブルに対する守備の弱さだった。相手がフリーでボールを受けてドリブルを始めるとなかなか止めきれず、次々と抜かれてピンチになってしまうことだ。守備組織が機能して相手にスペースを与えない状況では安定した守備ができるのだが、それがひとつゆるむと止めどころがなくなってしまう。

 組織的な守備にほころびができないようにすることが大事だが、それとともに、一対一の守備能力を高める努力が必要と思われた。闇雲に当たりに行ってあっさりとかわされるのではなく、粘り強くついていって足を出す守備を身につけなければならない。

★★★

 攻撃面で2試合を総括すると、この試合では得点することができなかったが、FW横山の存在感はますます大きくなり、そこに「トップ下・長谷川」という新たな選択肢ができたのは好材料と言える。しかしもうひとりのFWは、まだ流動的だ。

 田中は持ち味のスピードが欧州勢を相手にすると生きず、技術の粗さが目立った。菅澤は見事なゴールを決めたが、横山のパートナーとしてどう生きるか、まだわからない。籾木はテクニックと相手の守備の穴を見抜く目はあるが、右サイドからプレーをスタートさせたほうが生きるかもしれない。

 昨年来、いろいろなテストを繰り返し、若手に多くのチャンスを与えてきたなでしこジャパン。次の活動は、7月末から8月はじめにかけてアメリカの西海岸で開催される4カ国トーナメント。7月27日にブラジル、30日にオーストラリア、そして8月3日にアメリカと対戦する(日程はいずれも現地時間)。世界のトップクラスとのタイトルをかけた対戦で、強いなでしこジャパンを見てみたいものだ。
(了)