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[高校総体2018]常盤木学園、成長しながらつかんだ初のインターハイ優勝

トピックス Takuma Omori(みなサカ編集長)

「厳しい山だなと思いましたけど、やりがいがある。どんどん成長していくと思う」

4得点をあげ、常盤木学園の攻撃の軸として活躍したFW中村恵実(3年)は十文字との1回戦で勝利した後の取材でこう話していた。中村の言葉どおり、チームは大会中に成長を重ねながらトーナメントを勝ち上がっていった。

十文字(1回戦)、作陽(2回戦)、藤枝順心(準決勝)、日ノ本学園(決勝)と、過去2シーズンの高体連主催大会で決勝進出したチームをすべて破り、インターハイを初制覇した。

大会のターニングポイントとなったは十文字との1回戦だった。「十文字戦がやっぱり響いてますね。あそこで勝てたことが本当に大きくて、十文字にも感謝してます」(大河内)と言うほど、チームに自信をもたらす勝利となった。

大会直前、チームに激震が走る。キャプテンを務める正GK今井佑香(3年)が練習で負傷。セカンドGK伊藤春紀(2年)がゴールマウスを守ることになったのだ。昨年からほぼすべての大会で今井がゴールを守り、伊藤が出場したのはわずか数分(チャレンジリーグ第1節で84分から出場)。常盤木ではもっとも替えの効かない存在を欠き、初戦に臨むこととなった。

試合は開始早々の1分に西野朱音(2年)の鮮やかなミドルシュートで先制。12分には津田真凛(3年)が追加点を挙げる。いい形でゲームに入ったが、落とし穴が待っていた。イージーミスからのFKを決められたり、負傷者が出ている間に失点するなど、2−3と逆転を許してしまう。

相手を勢いに乗らせ、自分たちにはダメージのある展開だったが、後半アディショナルタイムに試合をひっくり返す。同1分に中村恵実(3年)、同5分に北川愛莉(3年)がゴールネットを揺らして4−3とする。劇的な展開で崖っぷちから勝利を引き寄せた。

作陽との2回戦でも前半3分に加藤栞(3年)、10分に津田のゴールで早々に2点をリードする。だがここでもGKとDFの連携ミスから失点。1点差に詰め寄られた。だが前日と同じ轍は踏まない。失点から2分後に中村が追加点を挙げると、さらに2点を奪って粘る作陽を突き放した。終わってみれば5−1と圧倒した。

失点しても下を向くことなく、最後まで諦めない強いメンタル。守備陣のミスを攻撃陣がカバーする団結力。大会序盤で見せた「気持ち」と「団結力」は大会を戦い抜く原動力となった。

休息日をはさんで迎えた藤枝順心との準決勝は1点を争うゲームとなった。序盤から藤枝順心がボールを支配する時間が続くが、スタメン復帰した今井を中心としたDF陣は相手をゴールに寄せつけない。

だが好事魔多し。後半24分、今井がふたたび負傷しプレー続行が不可能となってしまう。この非常事態を大河内を中心とした最終ラインはもちろん、チーム全体が高い守備意識を持ってチャンスを守り抜いた。

GK交代直後こそバタついたが、徐々に最終ラインが落ち着きを取り戻す。素早い攻守の切り替えで相手の攻撃の目を摘み、セカンドボールを拾って押し込んでいく。この終盤の攻防を制した常盤木はワンチャンスを見逃さない。後半アディショナルタイム7分、柴山史菜(3年)のキープから津田が左足で決勝点を叩き込んだ。

決勝の日ノ本学園戦ではGK伊藤の良さが出た。3バックにプレスをかけてくる相手に対して、最後方で積極的にボールを受ける。足もとの技術が高い伊藤がボール回しに加わり、相手の圧力をかわしながら味方の援護を待つ。

すると前半終了間際の35分、安澤莉子(3年)が左サイドから上げたクロスから中村の先制点が生まれる。この時、ペナルティーエリア角付近から安澤にパスを出したのは、3バックの一角としてプレーしていた柴山である。攻撃にリズムが生まれ、全体を押し上げられた結果、最終ラインの柴山がゴール前で決定的な役割を果たした。後半に2点を追加した常盤木が3−0で快勝している。

全日本高校女子サッカー選手権(以下、選手権)に5度、2009年度まで高校チームも参加していた全日本女子ユース(U-18)サッカー選手権でも3度の優勝を誇る名門も近年は優勝から遠ざかっていた。2012年度の選手権以来、6年ぶりの全国制覇となった。

女子サッカーがインターハイの正式競技となり、今年で7回目を数える。有力選手が一部の強豪校に集まる時代は終わり、戦力の均衡が進んでいる。

抜きん出たチームがなく、多くのチームに優勝するチャンスがある中、常盤木は大会中に選手が成長しながら頂点まで上り詰めた。数多くの年代別代表選手が居並び、他を圧倒してきたかつてとはまったく異なる勝ち方であった。

「自分たちが新たな歴史を作っていこうという気持ちでこのインターハイを戦ってきた」。冒頭でもコメントを紹介した中村の言葉である。新たな歴史の第一歩を刻んだこの優勝の先には、どんな常盤木の未来があるのか?期待を持って、見守りたい。