[選手権東北大会]ついに念願の宮城越え。専大北上が常盤木破り、決勝進出!
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PK戦で5人目の伊藤心愛が決めると、専大北上イレブンは一斉に走り出した。
第29回全日本高等学校女子サッカー選手権大会東北大会は31日、松島フットボールセンター(宮城県)で準決勝2試合が行われた。
専大北上(岩手①)は常盤木学園(宮城②)と対戦。2−2からのPK戦の末に勝利を収め、5年連続5度目の全国出場を決めた。
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試合は早々に動いた。前半3分、コーナーキックの混戦から川村瑠葵(2年)が押し込み、専大北上が先手を奪う。対する常盤木は15分、ドリブルしながらボールキープする山本結菜(3年)を高塚映奈(1年)が追い越すと、山本から高塚へ絶妙なスルーパスが通る。これを高塚が右足で決め、試合は振り出しに戻った。
早々にリードを失った専大北上だったが、真骨頂はここからだった。
常盤木の素早い寄せに対して、まったく動じることなくボールをつなぎ、相手陣内に侵入していく。冷静にパスコースを見つけ(作り)、ボールを動かし、出したらまた動く。これまでであれば、プレッシャーを恐れて蹴ってしまったり、ボールを失うような場面でも意図を持ってプレーした。
押し込まれる時間帯もあったが、CB泉穂奈美(3年)から前線の三井瑠奈(3年)、川村らにくさびのパスを入れ、セカンドボールを拾い、失地回復していく。状況に応じたプレーをピッチ上の選手が理解し、互いに通じ合う。
「ボールを動かすトレーニングをかなりやってきました。ボールの動かし方がわかってくると、ちゃんと相手を見られるようになった。怖がらずにボールを動かして、意図的に攻めることが、こういう相手にもできるようになった」と佐藤徳信監督。コロナ禍で練習が制限される時期があったなかでもチームの成長は止まっていなかった。
チームの2点目を決めたボランチの及川純奈。最後は足を攣らせて交代したが、豊富な運動量で攻守に貢献した。
後半開始早々の43分には川村萌々(3年)のミドルシュートが決まり、常盤木が逆転に成功する。接触で味方選手のプレーが止まり、不運な形での失点だったが、選手の心が折れることはなかった。
3分後、専大北上は三井がペナルティーエリアにドリブルで侵入する。密集を抜け出し、GKとの1対1から鋭いシュートを放つが、常盤木GK西川佳那(2年)がセーブ。こぼれ球に詰めた及川純奈(2年)が右足で押し込み、2−2とする。
「ボールを受けた時、相手の前に行けると思った。そこでいいコントロールができた。(シュートは)しっかりコースを狙ったんですけど、GKに読まれてしまいました」と、三井は得点のきっかけとなったドリブルからのシュートを振り返った。
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終盤は常盤木が徐々に攻勢を強めていく。左ウイングで先発した齊藤綾音(3年)をインサイドハーフに移すと、山本、川村との連携でパスが繋がり始める。そこにサイド攻撃が加わり、専大北上の守備陣をゴール前に釘付けにする。前半に比べると運動量が落ち、セカンドボールも拾えなくなったが、粘り強くゴール前を固める。
運も味方につけた。後半21分には常盤木FW山本が放ったシュートがゴールポストに直撃。35分には山本がドリブルで相手を引きつけ、左サイドの川村にパス。川村のクロスにフリーで合わせた齋藤綾音(3年)のヘディングシュートはクロスばーに当たって、専大北上GK村上優衣(3年)の手の中へ。
残り20分は防戦一方となり、ゴール前で守備をする時間が続いたが、2−2のままタイムアップ。決着はPK戦へと委ねられた。そのPK戦では先攻の常盤木5人目が外すと、後攻・専大北上の5人目・伊藤心愛が成功。ついに歓喜の瞬間が訪れた。
11月1日の決勝では聖和学園と対戦する。今年1月の東北新人戦では0−7、皇后杯東北大会では0−6で敗れている。「もちろん相手のことも気にしながらですが聖和だからと意識しすぎずに、しっかりと自分たちのスタイルを出していきたい。全国で勝ち上がるにはそういうことが必要」(佐藤監督)と。恐れるものはなにもない。平常心で東北の頂点をめざす。