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[皇后杯]0−3で敗れた筑波大学の主将・小平真帆、高校時代の想いを遂げにインカレへ臨む

トピックス Takuma Omori(みなサカ編集長)

[2020.11.28 皇后杯1回戦 筑波大学 0-3 静岡SSUアスレジーナ]

皇后杯 JFA 第42回全日本女子サッカー選手権大会は28日、1回戦8試合を行った。高円宮記念JFA夢フィールドでは筑波大学と静岡SSUアスレジーナが対戦。4年ぶりに出場した筑波大だったが、0−3で敗れた。

前半は18分にコーナーキックから先制点を許すと、38分にはフリーキックから失点。風下に立った前半を無失点に抑えて後半に巻き返しを図るというプランは崩れた。

それでもチャンスは作っている。17分にはコーナーキックから蓮輪真琴がヘディングシュート。32分には梶井風薫のパスに反応した野嶋彩未がシュートに持ち込む。さらに36分にも決定機を作り出している。風下に立ちながらもセットプレー、カウンターからチャンスを作り出している。

「前半もチャンスを作れていたので、後半千葉が入ることで良い形でチャンスが作れると思っていました」とキャプテンの小平真帆が語る通り、筑波大は58分に投入した千葉玲海菜を軸に巻き返しを図る。

76分にはスローインを受けた千葉がターンして折り返したボールを蓮輪がシュート。その5分後には右サイドを突破した河部真依がシュートする。だがいずれも相手GKの好セーブに阻まれた。

幾度も決定機を作りながらも決め切れない。そして迎えた86分、勝負を決定づける3点目をアスレジーナに決められた。


筑波大学は今シーズンの関東大学女子サッカーリーグを2位でフィニッシュ。今年で34回目となる同リーグで過去6度の3位を上回り、史上最高成績を残した。

前述した千葉(藤枝順心)、蓮輪(作陽)、今年は野嶋(藤枝順心)、月東優季乃(十文字)ら、高校年代の全国大会で優勝・準優勝を経験している選手も多い。チームの中心は強化指定選手としてジェフ市原・千葉レディースでもプレーする千葉であることは間違いない。

だがこの日は千葉が出場していない前半にもチャンスを作り出し、後半は千葉にマークが集中する状況下で周囲の選手が活かしてシュートするシーンもあった。チームの総合力が上がり、千葉もより活きるようになったのではないか。

「今年は関東大学リーグでもアシストは千葉がしてくれたんですけど、いろんな選手が点を取りました。チーム全員で戦術を固めながら積み重ねているので、誰が出ても同じような戦いができるようになり日々成長している」(小平)

小平が言う通り、今シーズンは14ゴールしているが、得点者は9人を数える(また千葉は7アシスト)。12月24日に開幕するインカレでは、13年度以来の決勝進出、そして優勝への期待も高まる。

その13年度の大会に関東第6代表として出場した筑波大は1回戦から勝ち上がっていった。2回戦、準々決勝ではPKの末に関東学園大学と新潟医療福祉大学を退けると、準決勝では東京国際大学に2−1で勝利。吉備国際大学との決勝では敗れたものの、延長戦に持ち込むなど接戦を演じている。

「GK(國香想子)は中学、高校とバレーボール部、センターバックのふたりは柔道部(菅原明香)と帰宅部(平麗実)」と、当時の指揮官・三輪由衣監督(現在は帝塚山学院女子サッカー部監督)は試合後にコメントしている。

対戦相手は選手獲得に力を入れていた大学ばかり。しかも決勝では主力数人が怪我や警告累積による出場停止などで不在。個々の能力で圧倒的に上回る相手に対して、チーム力で対抗して掴んだ準優勝だった。

そんな戦いぶりにココロを動かされたひとりの女子高生プレーヤーがいた。当時、文京学院大学女子高校に在籍していた小平である。

「大学でもサッカーを続けたいと思っていて、学業もしっかりできる大学を考えていました。筑波大学はずっと選択肢にありました。当時も今もブランクがある選手や初心者がいる中でチーム力で戦っているのが筑波大です。その時は延長戦までいった熱い戦いでした。その姿を見てこのユニフォームを着てプレーしたい。そして西が丘のピッチに立ちたいという気持ちが確信に変わった」

高3時の受験では不合格となったが、「筑波に行きたい気持ちが強かった」と思いは揺るがない。翌年、見事に合格を勝ち取った。3年越しの思いが実り、夢のスタートラインに立ったのである。

「小平は”ザ真面目”という選手でした。練習でも試合でも常に”全力ガール”」と、文京学院の山田ゆり香監督(当時は中学監督)は当時を振り返る。当時の床爪克至監督(現在は中学監督)はそんな彼女にキャプテンを託している。

では彼女自身はどんな高校生活を送ったのか。”高校時代の経験で今に生かされていることは?”という問いに対して、小平は次のように語っている。

「床爪先生はすごく選手が考えるようにさせてくれた。基本的に見守ってくれるという方でした。(試合の)流れが悪かったらキャプテンの自分が中心になって流れを変えようとか、練習でも雰囲気が悪い時に選手自身で引き締めようというのはありました。そこは大学に入ってもその時の意識、気持ちというのは生かされていると思います」

床爪監督の下で見守られながら選手たちで考えることを育んできた女子高生は今年、ふたたびキャプテンマークを巻いている。

そしていよいよ24日にはインカレが開幕。昨年は準々決勝で早稲田大学に0−3で敗れ、西が丘で行われた準決勝進出を逃した(小平は3試合フル出場2得点)。二度目にして最後の挑戦となるインカレの舞台で、「筑波大のユニホームを着て西が丘のピッチに立つ」という夢を叶えるために昨年以上の成績を狙いにいく。

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