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[選手権]主将・土谷葵の提案で始まったZoomトレ、今年の修徳は3年生中心に深めた一体感で頂点めざす

トピックス Takuma Omori(みなサカ編集長)

「今年はキャプテンを選出する意味が感じられない。みんなですごくまとまっている」。

誰がキャプテンに決まったのかを問い合わせた6月頃、そう話していたのは修徳の有賀重和監督だ。新型コロナウイルス感染拡大による部活動の自粛により、個人練習やオンライントレーニングのみに制限されていたものの、チームは3年生を中心にまとまっていたという。

「全員が指摘し合えたり、正しいことは正しいと伝えられる。誰がキャプテンになってもその人を立てて頑張れるという学年でした。最初は(キャプテンは)要らないと言ってたんですけど、コロナウイルスがあったり、下の学年が入ってきたりして、やっぱり誰かがなった方がいい。誰かが周りを見て、誰かを動かしてってやった方がチームの流れがよくなる」(土谷葵)

3年生一人ひとりがしっかりしていても、それぞれの意見をまとめたり、選手を代表して監督に何かを伝えるためにはキャプテンが必要である。そうした理由でキャプテンに指名されたのが土谷葵(3年)である。キャプテン就任について、土谷は次のように話している。

「自分が1、2年生の時にも先生に指摘してもらって、コミュニケーションをたくさん取っていました。それが今となってはいい面で、有賀先生とたくさんのことを話せています。(これまで)プレーのことで言ってもらったり、たくさん指摘をしてもらっていたので、周りよりはコミュニケーションを取っていたのかなと思います」

有賀監督からたくさん怒られていたことは想像に難くない。そうした感情的な部分ではなく、指摘された部分についてしっかりと受け止め、”指摘してもらった”と、筆者にも説明している。キャプテンを決める必要がないほど一人ひとりがしっかりして、チームがまとまっていても、キャプテンは土谷にしか務まらない。私はそう感じた。

「最初は会えないことが当たり前だと思わなかった。会えなかった時にみんなの顔が見たいってすごく思って、まずはZoomからみんなでやろうよと声をかけました。ふざけることから始まったズームなんですけど、みんなの顔が見えた時にすごく嬉しそうな顔をしているのを覚えていました。それで3年生と面談とか話し合いをできたらいいじゃないかと、私が有賀先生に連絡を取りました。3年生と先生のミーティングから始めて、そこからオンライントレーニングに発展していきました」

緊急事態宣言が出された自粛期間中には、多くのチームでオンライントレーニングが取り入れられている。修徳も例に漏れず、Zoomによるオンライントレーニングを実施していた。しかし、これは指導者が導入したのではなく、選手からの提案で始められたものであった。その実現にはチームメイトの思いを汲み取り、指導者へ伝えるキャプテンの存在が欠かせなかったのである。

ゴールを決めた土谷葵(右)と出迎える片山由菜(左) ゴールを決めた土谷葵(右)と出迎える片山由菜(左)

例年、公式戦を重ねながらチームを熟成させ、選手権までにきっちりと仕上げてくるのが修徳だ。しかし今シーズンは公式戦どころか、対外試合も激減。さらに47都道府県で感染者が最も多い東京では、活動再開が他地域より遅れた。ようやく学年別のトレーニングが再開されたのが6月下旬のことである。選手権予選に向け、いかにしてチームを作ってきたのか。

「JKリーグや練習試合でも上手くいかないことがたくさんありました。上手くいかない時にどうやってチームを作っていくのか。上手くいかない中で全員がどうやってチームを良くするのか。そういうイメージをたくさんやってきました。練習で上手くいかなくてもみんなで盛り上げたり、常に試合で使えるように練習の中で意識していました。上手くいかなかった時は話し合ったり、常にみんなとの距離感を縮めて、みんなで頑張ろう!という大きい力にチームで変えて、ピッチでもできるように意識していました」(土谷)

わずかな準備期間で臨んだ選手権予選だったが、東京都予選と関東大会で優勝を飾っている。だが結果を残したとはいえ、簡単な戦いではなかった。

都予選決勝では十文字と対戦。片山由菜(3年)の2得点で先行するものの追いつかれ、最後は途中出場の吉川はなの(2年)が勝ち越し点を挙げ、3−2で逃げ切っている。エース格である吉川をベンチに置いておけるほどの選手層の厚さが終盤にモノを言った。

関東大会2回戦では5バックで固めた本庄第一の守備に苦しんだ。開始早々に加瀬百花のゴールで先制したものの追加点が奪えない。右サイドハーフで先発した土谷はサイドに張ることなく、積極的にゴール前に入り、逆サイドからのボールを呼び込んだ。そうすることで相手のマークを中に引きつけ、右サイドバックの攻撃参加などサイドに起点を作らせる動きを見せる。

後半は土谷がFW、FWの片山がボランチへ移動。ボールキープ力の高い片山が中盤でタメを作り、そこからサイドに展開すると自らもゴール前に入っていく。コーナーキックなどセットプレーからの得点も増えた。選手が複数のポジションをこなし、選手交代をしなくても戦い方を変えられるところも強み。今予選では接戦を制する勝負強さが光った。

星槎国際湘南との準決勝では延長前半に先制点を奪われながら、延長後半に片山が同点ゴール。PKの末に勝利を収めた。つづく決勝・暁星国際戦では0−2から3得点を奪い、3−2で逆転勝ちを収めている。

筆者は毎年のように修徳を優勝候補に挙げている。だが、これまでの最高成績はベスト4度(2011,15,16,19)と、決勝まであと一歩届かない。それでも今年も優勝候補のひとつに推したい。