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[選手権]「まず自分たちが出来ることを」(齊藤綾音)、東北大会での敗北から立て直した常盤木学園が8強

トピックス Takuma Omori(みなサカ編集長)

[2021.1.4 全日本高校女子サッカー選手権2回戦 星槎国際湘南 2(3PK5)2 常盤木学園]

全日本高校女子サッカー選手権は4日、三木総合防災公園で2回戦8試合が行われた。みきぼうパークひょうご第1球技場の第2試合では星槎国際湘南(関東④/神奈川)と常盤木学園(東北③/宮城)が対戦。2年前決勝の再現となった一戦は、2-2からのPK戦を制した常盤木学園が準々決勝に駒を進めた。

試合は立ち上がりから常盤木学園が深い位置までプレスをかけ、星槎国際湘南がそれをかい潜ってボールを運ぶ展開。常盤木学園はセカンドボールを拾い、分厚い攻撃を仕掛けていく。グッと引き寄せた流れを無駄にはしなかった。

試合が動いたのは前半11分。クリアを拾った中岡理子(3年)が右サイドからクロスを上げると、ファーサイドでパスを引き出した齊藤綾音(3年)がヘディングシュート。これが決まり、常盤木学園が先制する。

つづく23分、飲水タイム明けのことだった。常盤木学園は岸田あかり(3年)がスルーパス。DFの背後をとった佐藤まどか(2年)がクロスを上げ、山本結菜(3年)がヘディングシュート。GKがはじいたボールを高塚映奈(1年)が押し込んだ。

対する星槎国際湘南は2分後、カウンターから松尾美月(3年)がGKとの1対1から冷静に決めて1点を返す。その後も常盤木学園に押し込まれながら反撃のチャンスを窺い、後半31分、ロングボールの処理でミスが出たところを逃さなかった長山萌花(2年)が同点弾。試合は2−2で後半を終え、決着はPK戦に持ち込まれる。

迎えたPK戦では、GK西川佳那(2年)が星槎国際湘南の3人目を右に飛んでストップ。5人全員が成功した常盤木学園が5−3で制し、2年ぶりのベスト8に駒を進めた。



常盤木学園は東北大会準決勝で専大北上にPK戦で敗戦。翌日の3位決定戦で尚志を下して出場権を手に入れた。だが東北大会から2ヶ月、見違えるような内容でトーナメントを勝ち上がっている。

「サイドの二人が縦に抜けられる力があるので、クロスボールを合わせる練習を徹底してやってきました。守備のところを連動していく練習を結構重ねてきて、ここまでいい形でできていると思います」と、齊藤は今大会までの取り組みについて話している。

サイドの二人とは、佐藤まどかと中村円香(ともに2年)である。右の佐藤は2点目の起点となるクロスを上げ、左の中村も得点には絡んでいないものの鋭い突破を幾度も見せている。

強力なサイドアタッカーの存在に中央の選手も恩恵を受けている。このチームで最も警戒すべき10番・山本のドリブルがより威力を発揮。山本にマークが集中することで、高塚、齊藤といったインサイドハーフの選手にシュートチャンスが巡ってくる。

前線の選手は守備でも相手DFラインにプレスをかけ続け、序盤から主導権を握る原動力となった。相手のビルドアップを封じると、2列目以降の選手が連動してボール奪取。ロングボールに対しても、藤井映菜子(3年)を中心とした3バックがしっかりとカバーリングしている。

いい守備がいい攻撃を作り出し、チームに好循環が生まれている。

★★★

今大会初ゴールを挙げた齊藤。クロスからのヘディングシュートは練習通りの形だった。

「2年生の高校総体の時に合わせたボールから、自分が落下点に入ることができるというのを知って、どんどん積極的に狙っていくようにしていました。選手権の東北大会でも同じ形でのシーンがあったけど決めきれなかったから、そこからはイメージをつけるためにずっと練習してきました」

決めきれなかった東北大会の試合とは、専大北上との準決勝だろう。この試合では2本のヘディングシュートを放っている。1本目はコーナーキックからフリーで合わせたが枠を捉えられず、2本目はクロスに合わせたヘディングシュートがクロスバーに阻まれた。

小柄だが運動能力は高い。コメントにあるように、空間認知能力が高く、コーナーキックなどでも積極的にヘディングシュートを狙っている。空間認知能力とはボールの軌道を把握し、蹴られたボールの落下地点を予測する能力のことである。

この2年間、その能力をトレーニングで磨き上げ、チームメイトとのコンビネーションも高まった。その成果がこの日の結果につながった。

東北大会では2回戦、準決勝で先制点を与えるなど苦しい戦いが続いた常盤木学園。東北第3代表として出場するのは初めてのことである。選手権優勝五度を誇る名門チームの選手として、相当のプレッシャーもかかっていたに違いない。選手はどんな思いで今大会に臨んでいるのだろうか。

「自分たちはそんなにうまいわけではない。先輩たちが残してきた伝統を考えすぎて自分たちのプレーができないというのをなくそう。まずは自分たちができることをやろう。そして楽しもうと、みんなで言い合っています」(齊藤)

齊藤が1年時にはインターハイで優勝、選手権でも準優勝している。だが、その試合を齊藤はスタンドから応援していたにすぎない。2年前の選手権で試合に出場したのは、40分間出場した山本ただひとりである。

出来ないことではなく、出来ることに目を向ける。自分はいなかった過去の結果に重圧を感じるのではなく、ここまで自分たちがやってきたことに自信を持つ。そう気持ちを切り替えた。

「自分たちなりのプレーをすれば結果はついてくる。自分たちは朝清掃とかでゴミ拾いをして、徳は積んでいる。やれることはやってきている。それを信じてやるだけです」(齊藤)。自分を、仲間を信じて、あとはやるだけだ。