[U18関東]「チームのために何をすべきか…」、役割と向き合い続ける湘南学院のキャプテン増茂菜波
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甲信越地方が梅雨明けしたと気象庁が発表した翌日、17日には夏本番を迎えた湘南学院高校グラウンドで関東U-18女子サッカーリーグ第4節 湘南学院高校 vs KASHIMA-LSCが行われた。
「集合!」。立っているだけで意識が朦朧としてきそうな熱気を吹き飛ばすような凛とした声がピッチに響き渡る。
声の主は湘南学院のキャプテン、増茂菜波(3年)である。彼女の声かけを合図に選手たちがベンチ前に集まり、ミーティングが始まる。気持ちを切り替えた選手たちが、灼熱のピッチへ散っていった。

「45分ハーフできつかったんですけど、声を途切れさせないようにということをチーム全員で練習中から徹底しているので、そこは結構できていたかなと」。そう話した増茂をはじめ、3年生が中心となって声を掛け合うことを意識した。
試合は中盤で数的優位を作りながらマイボールにしたKASHIMAの攻撃を受ける時間帯もあったが、シュートらしいシュートは打たせていない。3年生CBコンビ、外林花音と豊村佳音を中心とした守備陣がしっかりと守り、相手の背後を突きながらゴールを脅かし続ける。
試合が動いたのは40分、右サイドでボールを受けた田中美咲(1年)がゴール前に折り返すと、ここに走り込んできた小川ゆきの(2年)が合わせて試合の均衡を破る。さらにアディショナルタイム2分には、右スペースに飛び出した諸節海晴(2年)が追加点を決めた。
湘南学院は後半、怪我で戦列を離れていた金子柚月(3年)を投入。2トップを両サイドに配する形に布陣を変更する。
DFを背負ったプレーが得意な金子が前線でタメを作り、ドリブルや裏への飛び出しが得意な両サイドが前向きでプレーするなど、選手交代と配置転換で前半とは違った攻撃を披露する。
スコアが動いたのは80分。ふたたび終盤の時間帯である。金子が左サイドからペナルティーエリアへ切り込み、マイナス方向へパス。このボールは相手DFに阻まれたが、このプレーでコーナーキックを獲得する。増茂がけったボールに豊村が頭で合わせ、KASHIMAを突き放す。
その3分後には、鮮やかなダブルタッチで相手GKを抜き去った田中がダメ押しの4点目。試合はこのままタイムアップを迎え、湘南学院が4−0で快勝を飾っている。
同時に、キャプテンとしての役割も求められる。2,3年生が少なく、1年生が多いチームをキャプテンとしてまとめるのは簡単なことではないが、先輩からの助言が意識を変えてくれたという。
「今までは自分が上手くいかなくなるとチームに対して落ち込んでしまうところがあった。チームの事を一番に考えるのがキャプテンだから、自分が上手くいかなくてもチームとして上手くいくようにと言われた。(それを聞いて)自分の中でも意識が変わって、すごくいい刺激になって頑張ろうと思いました」
アドバイスしたのは湘南学院、そして現在は帝京平成大学でもキャプテンを務める佐久間未稀である。佐久間は湘南学院時代の高校総体神奈川県予選準決勝で退場処分となり、決勝を出場停止となった経験がある。
上手くいかないどころかピッチに立つことさえ出来ない。そこまでの経験をしたキャプテンはなかなかいないが、同じチームでキャプテンだった佐久間の言葉だからこそ心に響いたのだろう。

そんな増茂がキャプテンとして大切にしていること。それは声を出すことである。このインタビュー中、増茂の口から繰り返し出てきたワードである。
「自分の声ひとつでチームの雰囲気も変わるので、自分がどれだけいい雰囲気にするかということが勝負にも関わってくる。声の出し方も意識してやっています」
紹介した冒頭のシーンでも、ただ声を張り上げていたわけではない。お腹から声を出して、トーンを上げていた。声の出し方でチームメイトに伝える工夫をしている。
「切り替えようというところで、試合にはいるときに気持ちをだらだらしたまま入っちゃうと駄目なので。パッてやるというのは練習の時でも意識してやっています」
選手権予選開幕まで1ヶ月余り。増茂はチームが上手くいくために何をするべきかを考え続ける。