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[高校総体]「全員で走り勝つサッカー」で初優勝を飾る。神村学園のスタイルを体現した主将・愛川陽菜

トピックス Takuma Omori(みなサカ編集長)

[全国高校総体決勝 藤枝順心 1(延長)2 神村学園]

令和3年度全国高等学校総合体育大会は22日、日東シンコースタジアムで決勝が行われ、藤枝順心(東海①/静岡)と神村学園(九州②/鹿児島)が対戦。延長前半9分に勝ち越し点を奪った神村学園が90分に及ぶ死闘を制し、初優勝を飾った。



藤枝順心とは2年前の選手権決勝で対戦し、神村学園が0−1で敗れている。DF神水流琴望、MF田上歩実とともにその試合に出場していたキャプテンの愛川陽菜(いずれも3年)は、「優勝というよりリベンジマッチ。勝ち越すことを意識しました」と、雪辱を期して挑む。

開始40秒の先制点は、素早い攻守の切り替えから生まれた。愛川が奪い返したボールを左サイドの三冨りりか(1年)へパス。三冨はマークするDFをかわすと、思い切って右足を振り抜く。このボールが風にも乗り、ゴールに吸い込まれた。

この日の気温は33.7度。前後半ともに約3分のクーリングブレイクが設けられた。選手はいったんロッカールームへ下がり、休息をとってから試合が再開される(後半はベンチでクーリングブレイク)。

そのクーリングブレイク明けも神村学園は一気にアクセルを踏み込んでいく。前半25分にはボールを奪った田上からのパスを受け取った愛川がミドルシュート。試合再開と同時に、前線からの連動したプレッシングでボールを奪い、つぎつぎとチャンスを作っていった。

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前半のクーリングブレイク明け、愛川陽菜が左足でシュートを放つ。 前半のクーリングブレイク明け、愛川陽菜が左足でシュートを放つ。

後半は藤枝順心にボールを回される時間も増え、後半25分には同点ゴールを許した。苦しい時間帯、「今大会の目標は一試合一試合、出し切ること」と語っていた寺師勇太監督も”出し切ろう!”とベンチから檄を飛ばす。

運動量は落ちたが、それでもゴール前でしっかりと守り、ボールを奪えば顔を上げてゴールをめざす姿勢を持ち続けた。

チーム全体の疲労の色濃くなり、足が止まりかけた時間帯にこそ存在感を発揮したのがキャプテンの愛川だった。

後半終了間際には足を攣らせてピッチに横たわる場面もあったが、延長線に入っても運動量が衰えることはない。延長後半9分の決勝点も味方ゴールキックを愛川が収めたところから始まっている。

愛川が横へはたくと、オーバーラップを仕掛けた左SB古川陽菜(3年)がドリブルで運ぶ。この古川を追い越して左サイドへ飛び出した川浪実歩(3年)が先制点を繰り返すようなシュートを叩き込んでいる。

「毎年そうですが、全員で走り勝つサッカーです」(愛川)と、”出し切る”ことと”走り勝つ”ことを最大限にやり抜いた結果が優勝に結びついた。

献身的なプレーでチームのスタイルを体現した愛川だったが、「(走ることは)マスト。結果がすべてなので、得点が獲りたかった」と、自身のプレーには納得はしていない。

巧みな位置取りでボールを引き出し、ドリブルでボールを運ぶ。2得点の起点となり、タイムアップの笛がなる瞬間まで走り抜き、チームを勝利に導いた。この決勝でゴールという結果は残していないが、優勝という結果の原動力となったことに疑いの余地はない。