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[選手権予選]十文字が2年ぶり東京制覇!戦術浸透が進むチームで打開力に磨きをかけるエース・藤野あおば

トピックス Takuma Omori(みなサカ編集長)

選手権東京都予選決勝 修徳 2-4 十文字]

エースの一発が試合の流れを引き寄せた。開始早々の1分、自身のファーストプレーでゴールを決めたのは、十文字藤野あおば(3年)である。

自陣でボールを受けると、CF千葉梨々花(2年)にパス。リターンを受けるとふたたび千葉にパスを出し、スペースへ走り出す。千葉との2度に渡るパス交換で左サイドを前進すると、ペナルティーエリア手前から右足を振り抜く。向かい風を物ともしない鋭いシュートがゴール左隅に突き刺さった。

「先制点はすごく大事だと思っていました。まずボールを持ったときにゴールが見えたらシュートを振り切ろうという気持ちで試合に入った。だいぶ距離はあったと思うんですけど、振り切ることが大切だと思ったので、一本振り抜いたシュートがいい感じでゴールに入ってよかったです」(藤野)

準決勝ではツートップの一角でプレーしたが、この日は左ウイング(または左サイドハーフ)でスタート。藤野から千葉へ斜めにパスを入れながらサイドを切り崩してゴールが生まれた。



このふたりの関係性に左サイドバックの三村沙良(3年)が加わったのが、17分に生まれた2点目のゴールである。左サイドで三村を中心に細かくボールを動かすと、千葉を経由して藤野へボールが渡る。藤野のセンタリングに反応した千葉がゴールネットを揺らした。

「味方の選手のことをしっかり見て、その状況に合わせて柔軟にプレーをしてくれるという長所がある」と藤野が評する通り、三村は臨機応変なプレーで攻撃の組み立てに加わっている。

オーバーラップ、インナーラップなど前に仕掛けるプレーだけでなく、的確なポジションニングでボールを受け、攻撃にリズムを生み出す。高い位置を取る藤野にDFが引っ張られることにより、三村のゲームメイクが活きてくるという側面もあるだろう。

さらに敵の警戒を左サイドに向けることで活きてくるのが右サイド。サイドバック、三谷友夏(2年)がオーバーラップを繰り返してスペースを突いた。この両サイドバックを絡めた攻撃が機能し、前半を2−1で折り返した。

一方、後半は選手の配置を変えてきた修徳がペースを握る。十文字のビルドアップを断ち切り、攻撃に転じていく。それでも同点ゴールは許さない。76分に千葉が2点目のゴールを挙げれば、その3分後には途中出場したばかりの岡田恭佳(2年)が決めて突き放す。終了間際に一点を返されたが、4−2で逃げ切った。

「押される時間帯が多かったですが、チームとして焦れないで、しっかり集中する。そういう時間帯も試合の中ではあると思うので、ブレずにプレーする。クリアボールを自分が頑張って拾って時間を作れれば、少しずつ十文字のペースに持っていけるのかなと思った」。

この藤野の言葉を聞いて頭に浮かんだのは、野田明弘前監督(現在は広尾小石川コーチ)に率いられた2019年のチームである。相手が守備を固めてきてもどっしりと構え、最後にはゴールをこじ開ける。十文字伝統のポゼッションサッカーに芯の強さを植え付けた。今年の十文字はこれまで積み上げてきたサッカーに、昨年から就任した岸本昌蔵監督による二人、三人が関わってゴールをめざすサッカーが浸透しつつある。

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チームの攻撃を担うのは、十文字の10番を背負い、キャプテンを務める藤野である。高校チームから唯一、U-19日本女子代表に選出され、JFA・WEリーグ特別指定選手として日テレ・東京ヴェルディ・ベレーザでも活動する。十文字は決して、藤野のワンマンチームではないが、敵に与える脅威は別格だ。

中学時代(日テレ・メニーナ・セリアス)はスピードを武器にするアタッカー。高校では強靭なフィジカルの強さを武器としたドリブルが凄みを増した。さらには周りを活かしたプレーを身に着け、プレーの引き出しを増やしつつある。

だが相手からすれば、中盤でボールを回されても怖くない。藤野がゴール前でボールを持って前を向かれることだけは避けたい。各チームともあの手この手を使って、藤野を中盤まで押し下げようと対策してくる。そこは本人も自覚しながらプレーしている。

「自分が下に落ちてしまうと、前での攻撃力が少し低下してしまう。課題に挙げられていた部分なので、そこは逃げないで自分の力を信じてゴールに向かってプレーできればいいなと思っています」。

この日はサイドでスタートし、後半途中からフォワードに戻ってプレーしたが、幾度もドリブルを仕掛けてゴールに迫っていった。単独突破からの得点こそなかったものの、セットプレーにつなげるなど敵の脅威であり続けた。周囲を活かしたプレーに関しても先制点のように、ゴールに直結したコンビネーションが増えてきている。

「自分自身で状況を打開する力も今後は自分でも伸ばしていきたいと思っているので、そこは逃げないでチャレンジしていければなと思っています」と口にする通り、関東大会以降も個人の突破力とチームプレーを交えながら攻撃を牽引していく。