[選手権]「夏に優勝しても菊池まりあさん達を越えられていない」、神村学園MF愛川陽菜が冬に懸ける想い
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[第30回全日本高校女子サッカー選手権1回戦 聖和学園 0-1 神村学園]
夏の覇者・神村学園(九州①/鹿児島)は聖和学園(東北②/宮城)を1-0で下し、夏冬制覇に向けて第一歩を踏み出した。前半をスコアレスで折り返すと、後半11分、川浪実歩(3年)からのパスを受けた黒岩沙羽(1年)が左足でゴールネットを揺らす。この先制点を守りきった。
相手の粘り強い守備に手こずり、ゴールを積み重ねていくことは出来なかった。先制してからも予断を許さない状況が続いたが、小倉莉彩(3年)、稲田雛(3年)、岩下心々愛(1年)とベンチメンバーも起用し、2回戦以降にもつながる勝利を収めている。寺師勇太監督にそう問いかけると、次のように話した。
「自分たちとしては最悪な内容だったけど、それでも勝ちきれるというのは、自力があったりとか、人を代えても大崩れしなかったところは、明日以降にもつながる。今年のチームは選手層が厚いと思うので、そこは良かった。ただ中身は改善ばっかり。今日のミーティングはダメ出しのオンパレードです」
キャプテンの愛川陽菜(3年)も、「今までやってきたことが上手く出せなかった。自分たちできつい状況にしてしまったなっていうのが率直な感想です」と、反省を口にする。
聖和学園はマンツーマン気味に守り、神村学園のひとりひとりを抑えにきた。その守備に対して、1対1でプレーしてしまったことが反省点。状況を判断しながら、1対1を打開することが出来なかった。それはここまでトレーニングしてきたことを発揮できなかったことを意味する。
「インターハイは個で打開より、1対1で仕掛けながらというところが多かった。それをしながらも相手を見て判断するとか、技術的なところを意識したトレーニング、ポゼッションだったりやってたんですけど、上手くいかなかったですね。引いた相手が多くなってくると言われたので、1対1だけじゃ打開できないと思うので、グループでどうやってそこを崩しながらゴールまでいくかというのを想定してやってきました」
「インターハイに優勝した実感がなくて、自分もそうなので3年生を始めとして実感がないのかなという感じ。大会前はもっと感動したりとか、ホイッスルが鳴った後に涙が出てくるのかなという想像してたんですけど、優勝してからもそんな実感はなかったです」
そのインターハイ決勝、愛川を始めとする選手たちは死力を尽くして走っていた。とりわけ愛川は規定の70分を終えると足をつらせてピッチに倒れ込み、ベンチまで担架で運ばれている。わずかな時間で治療を施すと、延長戦を含めた90分間を走りきった。そうまでして掴んだ優勝にも関わらず、実感は沸かなかったという。
「1年のときに2位を経験して、夏の勝ちより2位の経験のほうが大きいと思っている。菊池まりあさんたちが3年生だったんですけど、夏に優勝してもそこは越えられていないと思っている。自分だけじゃなくてみんな思っているし、技術だったりチーム力もその時の方が上だった。そこは越えたいなと思っています」
選手権こそ真の高校女子日本一を決める大会である。そして、自分たちが1年生のときに3年生だった先輩たちが成し遂げた準優勝がいかに価値のあるものなのか、そのチームに自分もいたからこそよく理解している。だからこそ先輩たちを越えたい。
愛川にとっては1年前の借りを返さなければならない大会でもある。昨年度の大会では負傷した3年生に代わってキャプテンマークを託されていたが、2回戦敗退を喫しているからだ。
「去年の冬、自分はキャプテンマークを巻かせてもらったんですけど、2回戦敗退で悔しい結果に終わった。インターハイよりかは去年の冬の借りを返したいという気持ちが強いです」。冬に懸ける想いは誰よりも強い。
