[選手権]追手門学院FW中内花咲|藤枝順心の無失点記録を止めたのは美容師志望のストライカー
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[第30回全日本高校女子サッカー選手権 準々決勝 藤枝順心 4-1 追手門学院]
初出場の追手門学院(関西②/大阪)は1回戦で北海道大谷室蘭(北海道②)に3ー2で競り勝つと、つづく2回戦では聖カピタニオ女子(東海③/愛知)を0ー0からのPK戦の末に下す。そして迎えた準々決勝では大会2連覇中の藤枝順心(東海①/静岡)に対して、臆することなく挑んだ。
立ち上がり、相手の最終ラインまでプレスをかけてボール奪取を狙う。だがその寄せをかいくぐった藤枝順心がゴールを積み重ねていく。開始早々の前半3分に先制点を奪われると、25分までに3失点。0−3と点差は開いたが、追手門学院の選手たちがモチベーションを下げることはなかった。
最初のチャンスは3失点した直後の前半26分。左サイドでMF安田直生(2年)がマイボールにすると、前線のFW中内花咲(3年)にパス。中内の横パスを受けたFW太田凪砂(3年)がパスコースを見つけて右足を振り抜く。鋭いシュートは藤枝順心GK小野未織(3年)がパンチングで枠外へはじいた。
つづくチャンスは前半終了間際の39分。追手門学院はコーナーキックを獲得する。最初のCKは相手GKに触られたが、直後の2本目。キッカーのDF徳弘海羽(3年)がマイナス方向に蹴り入れると、ゴール前の密集から落ちてきた太田がフリーでシュート。このボールはGKが反応したが、こぼれ球を中内が押し込んだ。
「コーナーキックは追手門が得意としていて練習もしてきました。太田と小堀が合わせるこぼれを狙ってたんですけど、前にこぼれてきたのでつっこんだ」。そう振り返った中内だったが、あまり覚えていないという。無我夢中でこぼれ球に詰め、すぐさまボールを拾って中央にボールを戻した。”諦めるのはまだ早い”、そう言っているかのようだった。
そしてこの瞬間、藤枝順心が19年度大会決勝から続けてきた選手権の無失点記録は「8」でストップした。
「夏に順心と練習試合をした時も前半30秒くらいで1点取れたんですけど、そのいいイメージを持ちながら今日の試合ができた。1点取れたことは大きいんですけど、やっぱり相手の方がゴール前での決定率だったり、パス回しが上手かった。負けている中でチームに勢いをもたせていい守備を作る流れはできたんですけど、その後に得点を重ねることができなくて、自分たちの良い流れに持ってくることができなかった」と、中内は得点を喜びながらも試合内容については悔やんだ。
中内にとって、この試合はサッカー競技人生の公式戦ラストゲームとなった。「中学生からの夢でずっと美容師になりたくて、美容師の道に進もうと思っています」。卒業後は美容師になるための専門学校に通うという。最後に大仕事をしたストライカーはスパイクをハサミに変え、新たな人生の一歩を踏み出した。
