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[東京都高校総体]鮮烈FKを決めた十文字MF野口初奈、「ひとつひとつ勝っていきたい」

トピックス Takuma Omori(みなサカ編集長)

[東京都高校総体 決勝 十文字 5-1 修徳]

10番を背負ったキャプテンの一撃が勝利を決定づけた。

3-1で迎えた後半30分、十文字はFKを獲得する。ボールの前に立ったキャプテンの野口初奈(3年)とFW千葉梨々花(3年)が言葉を交わす。「自分がける」と、キッカーを申し出た野口が右足を振り抜くと、鋭いボールが壁を越えてゴール隅に突き刺さった。

「キーパーの反応が遅れるように壁でボールを見えないようにして、それを狙ってニアに速いボールを入れていくというのをずっと練習してきてた。今日初めて公式戦でやったので、それが一発で入ってよかったです」

積み重ねてきたトレーニングの成果が実った瞬間だった。

令和4年度 第23回東京都高等学校総合体育大会は8日、清瀬内山運動公園サッカー場で決勝が行われた。前半10分、20分に野村亜未(3年)の連続ゴールで2点のリードを奪った十文字が、後半、修徳に1点を返されながらも米口和花(2年)のゴールで突き放すと、冒頭の野口の追加点など3点を奪って5-1で勝利。2016年度から6連覇を飾った(20年度は中止)。

「前線での守備が効いて前で(ボールを)取れた」という野口の言葉通り、十文字は立ち上がりからハイプレスをかけて主導権を握り、ゴールに結びつけていく。

試合を動かしたのは、めぬまカップ決勝でも先制点の起点となった最終ラインからのロングボール。CB杉山遥菜(3年)がけったボールを前線で受けた野村がゴールネットを揺らす。

さらに右サイドに流れた菊池真唯子(2年)がクロスを放つと、ファーサイドで待ち受けていた野村がワンタッチでゴールに流し込んだ。

その後も自分たちのペースで試合を進め、両サイドバックが高い位置をとって押し込んでいく。前半26分には三宅万尋(2年)、千葉、菊池、千葉と前線でボールをつなぎ、左サイドへ展開。オーバーラップしてきた早間美空(2年)が折り返す。この場面はオフサイドとなったが、多くの選手がからんだ攻撃を見せる。

後半14分には修徳に特点を許し、1点差に詰め寄られる。だが後半27分、相手の反撃ムードを断ち切る追加点が生まれた。コーナーキックの流れから三宅がシュート。このボールは修徳GK長峰怜愛(3年)に阻まれたが、こぼれ球を米口が押し込んだ。

さらに前述した野口のFKが決まると、試合終了間際の後半34分には三宅が決めてゴールラッシュを締めくくる。中盤から太田千満(3年)がクロスを上げると、今度はGKに阻まれることなく決め切った。

十文字は左右のサイドバックを新たに抜擢。右に米口、左には早間がスタメンに名を連ねる。

「左利きの選手が左サイドバックになった。キックの精度がすごく高くて、今回のインターハイ予選ではアーリークロスやセンタリングから何点もとれている。攻撃力がすごく上がったなという印象です」(野口)

早間は攻撃参加を繰り返してクロスを送るだけでなく、シュートも狙った。米口もSHと連動しながら攻撃にかかわった。これまで以上に両サイドバックが高い位置を取れるようになり、両SHの動きもサイド突破だけでなくバリエーションに富む。2トップもポジションを変えながらボールを収め、サイドで起点となるなど、マークするDFを悩ませた。

「めぬまの時はトップの片方だけが落ちてバランスが偏ってしまった。(今日は)フォワード2枚がバランスよく間に落ちてきて、相手もなかなか付いてこれないという状況が多かった。試合経験を積んだことがいいボール回しに繋がったのかなと思います」(野口)

今年は試合ごとにテーマを持ち、それを全員が意識しながらゲームに臨んでいるという。「それが身についていって、今までの経験が発揮できた」と、野口は手応えを口にする。日替わりで取り組んできたテーマを血肉としながらチーム力を蓄えてきた。



つづく関東大会(5/28-30)では、神奈川県予選で優勝した星槎国際湘南との対戦が決まっている。

関東大会を制して出場した昨年のインターハイでは、初戦で日ノ本学園と対戦。0-2で完封負けを喫している。その試合に出場していた6人がこの日の決勝でもスタメンに名を連ねている。もちろん野口もそのひとり。インターハイへの思いを次のように話した。

「まずは関東優勝して全国に向かうことですけど、先のことを見ずに一戦一戦、ひとつひとつ勝っていきたい」

これまで積み上げてきたもの、そしてこれから積み上げていくものを信じて、一戦一戦、目の前の試合に集中しながら階段を上っていく。