[宮城県高校総体]常盤木学園が最多17度目の戴冠!幅広い選手起用をチーム力の底上げに結びつける
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令和4年度 宮城県高校総体は6日、みやぎ生協めぐみ野サッカー場Aで決勝が行われ、常盤木学園が聖和学園を3-1で下し、2大会連続17回目の優勝を飾った。
聖和学園は初戦となった仙台大明成との準決勝を1-0で制して決勝に進出。一方、3連戦となる常盤木学園は、1回戦(vs 合同チーム)と準決勝(vs 仙台育英)で多くの選手を起用しながら決勝に勝ち上がってきた。ともに優勝は16回(聖和学園は平成6年度に石巻女子商業と両校優勝)を誇り、互いに負けられない一戦となった。

前日までの好天から一転、朝から雨が降りつづく中での試合は立ち上がりから一進一退の攻防となる。
聖和学園は2トップの片岡花海(3年)と米村歩夏(2年)がボールを収め、右サイドハーフの本田悠良(2年)が積極的に縦に仕掛ける。そこに早瀬彩来(3年)、石川麗奈(1年)のダブルボランチが加わり、パスワークで常盤木学園ゴールに迫る。
一方、常盤木学園は10番でキャプテンを務める高塚映奈(3年)を中心とした攻撃陣がポジションチェンジを繰り返しながらフリーの選手を作り出し、空いているスペースを突きながらボールを動かしていく。
試合が動いたのは前半17分、聖和学園の左サイドからゴールが生まれる。早瀬からサイドチェンジのパスを受けた左SB今野杏凪(1年)がワンタッチで前方へ押し出すと、計良杏実(3年)が飛び出してきたGKの鼻先でゴール前へパス。ここに走り込んできた片岡が左足でゴールに流し込んだ。
聖和学園は前半終了間際にもコーナーキックから片岡が頭で合わせてゴールネットを揺らす。だが、ファールがあったとしてゴールは認められない。常盤木学園にとっては、0-1で前半を終えられたことは不幸中の幸いであった。
前半途中から出場した白木珠奈が決勝点を挙げる。
常盤木学園の選手たちがロッカールームに戻り、どこのスペースが空いているかなど選手同士で話し合っていると、阿部由晴監督はそう選手たちに声をかけたという。指揮官の指示を仰ぐまでもない。ピッチに立つ選手自身が何をすべきか心得ていた。
迎えた後半、常盤木学園は一気に流れを引き寄せる。後半8分には右サイドからのアーリークロスがGKのミスを誘い、こぼれ球を伊藤璃胡(3年)が詰めて試合は振り出しに。その3分後にはペナルティーエリア内で高塚、伊藤璃胡とつなぎ、フリーで受けた白木珠奈(2年)が右足を振り抜いて逆転ゴール。相手のミスを逃さず、立て直す時間も与えず、わずか3分で試合をひっくり返した。
後半21分、勝負を決定づける3点目が生まれる。その得点は聖和FKを葛西がヘディングではね返したプレーから始まった。このボールを白木、伊藤結菜(3年)とつなぎ、伊藤璃胡が左から折り返す。ボールウォッチャーとなったDFの背後に走り込んできた葛西が左足で流し込んだ。
常盤木学園が後半に試合の流れを引き寄せられたのには、阿部監督のアドバイスももちろんあった。
「ビルドアップをすることによって自分たちの流れを作っていけるから、そこを落ち着いてビビらずやっていけばいける、と話してくれた。回していたら自分たちの流れになって、そこで1点が入ったから、さらにモチベーションが上がって、だんだん全員が楽しくプレー出来ていた」(高塚)
後半はチームとして目指している選手の流動性がチーム全体に及び、完全にゲームを支配した。より多くの選手が攻撃にかかわり、より高い位置でボールを回収することで相手に反撃する余地を与えない。コメントにある通り、楽しくプレーした結果、後半は聖和学園のシュートをゼロに抑え込む。危なげない戦いぶりでタイムアップの笛を聞いた。

この決勝のスタメンが現時点でのベストメンバーであるならば、常盤木学園は今シーズンの公式戦で一度もベストメンバーで試合に臨んだことはない。ここまで5試合を戦った東北女子サッカーリーグTOPリーグでは、各試合で数人の選手にチャンスが与えられている。今大会の準決勝でも保原ひな(3年)、葛西、高塚、竹内瀬戸香(3年)の主力4人はベンチに温存されていた。
今大会でその起用に応えた筆頭は白木だろう。東北リーグでは4試合出場6ゴール。今大会は準決勝で2得点1アシストを記録し、前半25分から出場した決勝では勝ち越し点を決めている。
5試合(4試合にスタメン)に出場した澤登揚羽(3年)も台頭したひとり。この日は後半31分から出場。それまで右サイドバックを務めていた保原が前線に上がり、同ポジションでプレーした。プレー時間は短かったが、新たなオプションが可能となったのは澤登の成長があってこそ。保原のフォワードとしてのプレーにも期待がかかる。
東北リーグで種を蒔き、選手の成長を促すことでチーム力を積み上げた。18日に開幕する東北大会、その先のインターハイに向け、さらなるチームの成長に期待がかかる。