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[高校総体関東大会]十文字MF太田千満|野口初奈とニコイチで中盤を支えるボランチ

トピックス Takuma Omori(みなサカ編集長)

[高校総体関東大会 決勝 十文字 4-0 鹿島学園]

令和4年度第11回 関東高等学校女子サッカー大会は5月29日、綾瀬市民スポーツセンター陸上競技場(神奈川県綾瀬市)で準決勝2試合が行われた。第1試合では十文字(東京)と鹿島学園(茨城)が対戦。開始早々の3分に先制した十文字が4−0で勝ち、昨年につづくインターハイ出場を決めた。

話は約半年前に遡る。2021年11月13日、選手権関東大会1回戦で十文字は鹿島学園に0−1で敗戦。2年連続で選手権出場を逃した。藤野あおば(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)が受験で不在だったとはいえ、個々の能力の高さを考えれば番狂わせと言っていい。

「鹿島学園には絶対に負けるな」

大会前にある先輩と話した十文字の選手は、こう告げられたという。そんな先輩の思いも背負って臨んだこの日の鹿島学園戦だったが、想定外のことが起こった。鹿島学園は1回戦から大幅にメンバーを入れ替え、大会3日間をチーム全員で戦うという選択をした。

それでも試合は開始早々の3分に米口和花(2年)のゴールで十文字が幸先よく先制する。だがその後は引いた相手の守備を崩すことが出来ず、ゴール前に入っていくことが出来ない。それでも前半32分に千葉梨々花(3年)がミドルシュートを決めて追加点を挙げると、後半17分と同30分に菊池真唯子(2年)と福島茉莉花(1年)が追加点。粘り強く戦う鹿島学園を突き放し、4−0で勝利した。



この試合で2アシストを記録して、千葉と菊池のゴールを演出したのがボランチの太田千満(3年)である。針の穴を通すようなスルーパスで決定機を演出するだけでなく、ドリブルで果敢にゴール前へ切り込んでいく司令塔。十文字のチャンスは、この7番を経由して生まれる。

太田は北海道七飯市出身。姉・涼日は北海道文教大明清(現・北海道文教大附属)の選手として、インターハイと選手権の全国大会に三度出場している。そして、現在は女子Fリーグに所属するエスポラーダ北海道イルネーヴェの選手として活動する。そんな姉と同じ道を進むのではなく、妹は上京する道を選んだ。

「お兄ちゃんが中学で青森山田に行ってて、その背中を見てると羨ましいなと思っていた。自分の知らない世界に行ってるお兄ちゃんの姿を見て、自分も高いレベルでやりたいなって思って探して、勉強もサッカーもできる。あと、フットサル。中学校にはフットサルがあったので、その3つに惹かれて、十文字のブランドに惹かれて入ってきた」

サッカーと勉強の両立、そしてフットサル。フットサルでは全日本U-15女子フットサル選手権大会に3年連続で出場。中1と中3の時に全国制覇を成し遂げている。

小学校時代は長身のフォワードとして、スピードとパワーを武器にプレーしていた。だが、身長の伸びが止まるとともに、プレースタイルの変更を迫られる。最初はサイドバックをやりながらチームのレベルにフィットする時間を与えられた。中2からボランチとしてプレーしているが、ここまで来るのにも一筋縄ではいかなかったという。

「自分が理想とするボランチはビルドアップして、どんどん配球してみたいな。でもそれができなくて、それでもボランチを求められた。そこでどうやろうかなってなった時に、自分が1枚剥がして、中央で相手を寄せて、サイドのスペース作って、サイドにパスしたりとか。自分ができる中での自分に合ったプレーをしようと中学の頃にやっていた。高校に入って色んな先輩のプレー見て、いいところを盗んで、今、自分なりのボランチができるようになった」

そんな太田にとって頼りになる存在なのが、ボランチでコンビを組む野口初奈。「中学からずっと一緒だったので、何も言わなくても考えていることは結構わかる。ずっと一緒にやってきたのが、太田選手がやることがわかるので、次に動きやすいというか、連携が上手く取りやすい」と野口は話していたが、太田は野口をどう思っているのか。

「自分ができないことを(野口)初奈ができて、初奈にない部分を自分が持っている。そこは同じ特徴だったり、同じプレーだとできない。ふたりのボランチが出来上がっていると思っている。今までやってきたボランチの中で1番やりやすいと感じてます」。

「(自分にない野口の特徴とは)空中戦だったり、危険の察知能力だったり。 もともと足は速くなくいんですけど、予測があるから全然気にならない。キック力もあるから、自分がショートショートで繋いだところ、大きな展開をしてくれる。小さくても落下地点に入ったり、空中戦が強いので、そこをやってくれたりとか。全然真逆のボランチですけど、自分はやりやすい」と続ける。

どちらが欠けても成り立たない。ふたり合わせてひとつのボランチ。言うなれば、ニコイチだ。

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来るべきインターハイ。太田にとっては高校に入学して初めての全国大会となる。一昨年のインターハイは中止となり、昨年は怪我で戦列を離れていた。選手権は過去2年、十文字は関東大会で敗退している(太田はメンバー外)。

「自分のプレーとかサッカーがどれだけ通用するかはわからないけど、自分ひとりがサッカーするわけじゃない。全国までの期間でチームもレベルアップするし、自分のウィークポイントも減らしたい。全国優勝をしっかり獲りたいという気持ちが一番強いです」

めぬまカップ、インターハイの東京都予選と関東大会。大会を経るごとにチームとしての連動、個々の流動的な動きが増え、攻撃のバリエーションが多彩になっていると筆者は感じている。そう伝えると、太田からは力強い言葉が返ってきた。

「その個人を生かすのは自分の仕事だと思っている。そこを生かしつつ、やっぱりチームとして強いチームにしたい。まだまだ突き詰める部分があると思ってる。自分が目指すところは上なので、目標高く持てば、もっともっと成長できる。もっと強いチームにしたい」