[選手権神奈川県予選]勝利の鍵は夏の世代交代。圧倒的なチーム力を示した湘南学院が6年ぶり県制覇!
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第31回全日本高校女子サッカー選手権大会神奈川県予選は9月23日、星槎湘南スタジアムで決勝リーグ第3節が行われ、星槎国際湘南と湘南学院が対戦。3−1で制した湘南学院が3連勝を飾り、6年ぶりの優勝を果たした。両チームは11月に茨城県で開催される関東大会に出場する。
第2節終了時点で両チームともに2連勝で勝ち点6として、得失点差で上回る星槎国際湘南が首位に立つ。引き分け以上で優勝が決まる星槎国際湘南に対して、湘南学院は勝つしかない。県1位が都県2位、県2位が都県1位と関東大会1回戦で当たることが決まっており、互いに負けられない戦いとなった。
「インターハイ予選は相手のポゼッションサッカーを抑えるために、システムを変更して4-3-3で戦った。選手権は4-4-2でシステム変更はせず、自分たちの特長を活かせるサッカーをまず相手に見せていこうと臨んだ」と、木村みき監督。ライバルと真っ向勝負を挑んだ。
試合は立ち上がりから互いの特長を発揮し、攻め合う展開となる。湘南学院は早々にコーナーキックを獲得するなどいい試合の入りを見せる。対する星槎国際湘南もサイドをピッチを幅広く使いながらボール保持を高め、相手ゴールに迫っていく。ポゼッションでは星槎国際湘南が湘南学院を上回り、相手陣内に押し込んでいく。だがラストパスの精度を欠き、シュートにつなげられない。前半、星槎国際湘南のシュートは2本に留まった。
そんな中、前半34分に試合が動く。均衡を破ったのは、粘り強く守備をしていた湘南学院だった。相手のスローインから始まったプレーでボールを奪ったFW諸節海晴(2年)がドリブルで切り込み、左足でゴールネットを揺らす。
前半アディショナルタイムには追加点。諸節が今度は左サイドからペナルティーエリアに切り込み、ゴール前へラストパス。MF上野彩也那(3年)がスルーすると、その背後に走り込んできたFW山村美和子(1年)が押し込む。湘南学院が2点のリードを奪って前半を折り返す。

前半に引き続き、いい形で試合にはいったのは湘南学院だった。前線からのプレスで星槎国際湘南のビルドアップを封じ、相手陣内でボールを奪って攻撃に転じる。後半2分、同6分にはMF小川ゆきの(3年)がミドルシュートを放つなど、遠めからでも積極的にシュートを狙っていった。
星槎国際湘南は後半15分、MF宮本和心(2年)がシュート。この場面では湘南学院DFが体を張って守ったが、その6分後に宮本がミドルシュートを叩き込む。1点差に詰め寄った星槎国際湘南は、選手交代でフレッシュな1年生を投入するなど選手層の厚さでも湘南学院を上回り、攻勢を強めていく。
防戦一方となった湘南学院だったが、ここで救世主となったのは3年生MF上野である。後半30分、諸節からのパスをゴール正面で受けると、「(利き足ではない)左足だったので変に力も入らず、いい形でシュートが撃てた」というシュートが放物線を描いてゴールに吸い込まれていく。ダメ押しの3点目が決まった。3−1のままタイムアップの笛がなり、第1代表をめぐる戦いは湘南学院に軍配が上がった。
ダメ押しの3点目を決め、ガッツポーズで喜びを爆発させる上野彩也那(10番)
湘南学院はもともと、インターハイを境に3年生から2年生にキャプテンを引き継ぐのが恒例だった。だがチームの実情はその時々で異なる。主力の3年生が怪我をしたり、インターハイ予選で敗退したことを理由に、夏を越えても3年生にキャプテンを託すということはあった。ここ数年は3年生が選手権までキャプテンを務めていたが、今夏は6年ぶりに”世代交代”を行った。
「インターハイ予選は3年生も全員残って臨んでたんですけど、この夏を越えて受験もあって、3年生が4名残って3名が先に引退することになり、それを機に世代交代しました。2年生がキャプテンでチームを作っていくことで、3年生は逆に最後の高校サッカーを思い切ってやれるように」と、狙いについて話した木村監督は2年生について次のように話している。
「2年生が13名いて、勝ちに対してのこだわりとか、1年生からの経験がすごくいま活かされてきている。この決勝リーグは信抱強くいかないと、(トーナメントのように)勝ったらいけるとかではないので、2年生の精神的な強さの成長がすごくチームを支えていると思います」。
世代交代とはキャプテンだけを交代するわけではない。2年生が主体となってチームを運営していくということである。木村監督は2年生に責任を与えることで、さらなる成長を促したのだろう。新チームに移行してまだ日が浅いが、自覚を持った2年生がピッチ内外でチームを引っ張る姿が見られた。

一方、キャプテンの座を譲った上野は、”モヤモヤ”があったという。さらに聞いてみると、その想いを明かしてくれた。
「インターハイも星槎に獲られてしまって、関東リーグ(U-18関東女子サッカーリーグ2部)でもなかなか勝てずにキャプテンを代わってしまった。プレー的にはやってたけど、キャプテンとしての仕事をしきれなかったと思ったんです。でもこういう風に2年生がやってくれることによって、キャプテンだからという肩書きがなくなって、少し軽くなったから、ああいうシュートを生み出せたのかなというのはあります」
キャプテンではなくなったが、上野がチームにとって欠かせない選手であることに変わりはない。プレーはもちろん、精神面でも支えとなっている。インタビュー中、彼女が繰り返し口にしていたのが”いい声がけ”である。「1年生とかはここで出るのでさえ緊張する。できる限りいい声がけっていうのを意識していて、ミスしてもつぎ切り替えて!っていう風に、いい声がけをすることをみんなで意識しています」。
上野はこの声がけの部分で相手を上回ることが出来たと振り返っている。それには筆者も強く同意する。いい声がけが勝敗を左右したと言っても言い過ぎではないだろう。
チームメイトへの指示はもちろん、チームを盛り上げる声、仲間の背中を押したり、引っ張る声。2年生が中心となり、数少ない3年生もサポートする。その声に触発されるように、1年生も元気よく声を出していた。チーム全員が一丸となり、勝利という目標に向かって突き進んでいく。そういう雰囲気を作り出した。この点で湘南学院は相手を圧倒していた。
チームを牽引するキャプテンから後輩たちの背中を押す先輩へ。役割は少しばかり変わったが、上野を含めた4人の3年生がチームを支えていることに変わりはない。関東大会でもチームを盛り立て、2年ぶりの全国出場を勝ち取りにいく。