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[選手権東北大会]前線に君臨する小柄なエース、FW片岡花海が絶大な存在感で聖和学園を全国へ導く

トピックス Takuma Omori(みなサカ編集長)



第31回全日本高校女子サッカー選手権大会東北大会は30日、いわぎんスタジアム(岩手県盛岡市)で3位決定戦が行われ、聖和学園(宮城①)と専大北上(岩手①)が対戦。3−0で勝利した聖和学園が東北第3代表の座を射止め、第1回大会からの連続出場記録を「31」に伸ばした。敗れた専大北上は2016年度からの連続出場が「6」で止まった。

この日の殊勲者はFW片岡花海(3年)である。記録として残されているのはアシスト「1」。これだけだ。だが、アシストした得点を含む、全ゴールに絡んだだけでなく、試合を通じて前線の軸であり続けた。

0−0で折り返した後半1分、聖和学園は右サイドを切り崩す。深い位置からの折り返しを受けた片岡は、すかさずターンして中央マイナス方向へパス。このボールをMF益子由愛(2年)が右足ダイレクトでゴールに叩き込む。

「(相手が)左足を切っていることはわかってた。由愛(益子)と彩来(早瀬)が空いてたんですけど、体勢的には由愛の方がいいかなっていうのは、一瞬ですけど判断を変えられた」と、片岡はアシストの場面を振り返る。

追加点はその7分後。専大北上の攻撃をしのいだ直後のことだった。相手クリアを拾ったMF本田悠良(2年)からのパスを右サイドで受ける。目の前を走り抜ける益子が作ったスペースに走り込んできたMF遠藤瑚子(2年)につなぎ、遠藤からのパスを受けたMF早瀬彩来(3年)がミドルシュートを決める。1点目と同じく、片岡が敵のマークを引きつけたことにより、味方がフリーとなった。

後半28分には勝負を決定づける3点目が生まれる。今度は左サイドで駆け上がってきた遠藤をサポート。遠藤からのパスを受け、右サイドバックの位置から上がってきていた小笠原由依(3年)に預ける。小笠原が放ったシュートが相手DFに当たってコースが変わり、ゴール前でFW河合梛月(3年)が押し込んだ。

聖和学園では例年、長身でポストプレーが得意な選手がセンターフォワードを務めてきた。ポストプレータイプの選手がいなければ、他のポジションからコンバートしている。2年前には島村美風(現・山梨学院大学)、6年前には当時1年生だった飯干絵里(現・流通経済大学)がコンバートされている。

今年は身長150cmの片岡に白羽の矢が立った。もちろん長身でなければならないわけではない。だがこれまでの聖和学園のセンターフォワードとは違ったタイプであると感じたため、その狙いについて曽山加奈子監督に尋ねてみた。

「最初はサイドハーフとか、中盤をやらせていました。前を向くようになって仕掛けられるっていうのはすごい大きいですし、相手が距離をとったりしてくれたら、詰めてきた時に落としもちゃんとやってくれる。すごく大きな存在かなと思います」。指揮官も絶大な信頼を寄せている。

曽山監督が話したとおり、片岡は前を向いたプレーが圧倒的に多い。小柄な体格を活かして、「相手の懐に潜り込むような感覚」(片岡)で時間もスペースもないペナルティーエリアに切り込んでいく。ゴールへ向かった仕掛け、得意の左足シュートには敵も警戒してくるが、空いている周りの味方を活かす術を身につけてきた。

「サイドハーフで得た技術とか、仕掛けるっていう部分、体の使い方とか教えてもらいながらやるにつれ、だんだんハマってきてるなっていう感覚はありますね」と、片岡も手応えを感じている。と同時に、”まだまだ”という言葉を繰り返し口にしている。満足しない姿勢こそが成長のエネルギーとなったのかもしれない。

この日はノーゴール。だが、どんな時でも前向きなプレーを心がけ、切り込み役を買って出るだけでなく、周りを活かす柔軟性をあわせ持つ。豊富な運動量でピッチを広くカバーしていたことは言うまでもない。最前線で奮闘する片岡の活躍なくして、聖和学園の勝利を語ることは出来ないのである。