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[高校総体]藤枝順心が7年ぶり優勝 抜群の戦術遂行能力!一発で仕留めた先制点で試合の流れを引き寄せる

トピックス Takuma Omori(みなサカ編集長)

[2023.7.30 全国高校総体 決勝 藤枝順心 3-0 聖和学園]

全国高校総体は7月30日、帯広の森陸上競技場で決勝が行われ、藤枝順心(静岡)が聖和学園(宮城)に3ー0で勝ち、7年ぶり2度目の優勝を飾った。

2年ぶりの決勝に臨んだ藤枝順心は開始早々の前半3分、DF松本琉那(2年、バニーズ京都SC flaps U-15)のクロスにFW辻澤亜唯(3年、FCグローバル)が頭で合わせて先制する。同14分にはコーナーキックからFW高岡澪(3年、日テレ・東京ヴェルディセリアス)のヘディングシュートが決まり追加点。後半26分には、FW久保田真生(3年、スフィーダ世田谷FCユース)がドリブルからダメ押しの3点目を奪った。



藤枝順心はU-17日本女子代表として昨年のU-17女子ワールドカップを経験した3選手が得点するなど、年代別代表経験者を多数揃える。また、平均身長では聖和学園を5センチ以上も上回っている。だが、フィジカル要素や選手の実績以上にこの決勝で際立っていたのは、チームの戦術を理解して実行する能力の高さである。

前半3分の先制点。藤枝順心は右SB松本がGKとDFの間にアーリークロスを放つ。相手DFの背後からスペースに走り込んだ辻澤が飛び出してきたGKより一瞬早く頭で合わせた。「DFとGKの間が弱点だとミーティングで言われていたので狙っていた」と辻澤。松本の正確なロングキックと、辻澤のタイミングいい飛び出し。最初のチャンスを逃すことなく、一発で仕留める決定力の高さを見せつけた。

「聖和さんは立ち上がりのああいう時間帯に少し集中力を欠いているプレーがDFラインに見られるというのは、全試合見させてもらって感じていた。それを選手たちが頭の中で理解して、最初のプレーであれを狙えたということが一番の勝因じゃないかと思います」と中村翔監督。相手を分析し、ミーティングで共有したことをしっかりとピッチで表現できたことが先制点につながり、試合の流れを引き寄せた。

先制点を決めた辻澤亜唯(手前)と3点目の久保田真生(奥) 先制点を決めた辻澤亜唯(手前)と3点目の久保田真生(奥)

今大会は前後半途中に約3分間のクーリングブレイクが設けられている。実質的に4ピリオドの試合となり、試合の開始・再開時のはいりで集中できるかどうかが重要である。藤枝順心の3点目は後半のクーリングブレイク明けに生まれた。

後半26分、久保田のパスを聖和DFがカット。そのこぼれ球をめぐって両チームの選手がもつれあい、一瞬、選手の動きが止まる。その隙を逃さなかった久保田が一気にギアを入れてボールをかっさらうと、ゴールに向かって一直線にドリブル。聖和の選手を置き去りにし、飛び出してきたGKもかわして、ゴールに流し込んだ。

「あの位置で奪ったらゴールを意識していた。自分の得意なスピードで得点を決められたので嬉しかった。ゴール前だったので足を止めなければ絶対に点になると思っていた。そこは意識していました」(久保田)

「今日は4試合の中で一番安心して見ることができた。ベンチから指示は出してましたけど、指示は出さずとも選手たちはよく理解していました。ピッチの中でよくコミュニケーションをとっていた。その表情を見ている限り、”今日のゲームは大丈夫だ”と確信していました」と中村監督。2ー0となっても気を緩めることなく、集中するべき時間帯に勝負を決定づける3点目を奪った。



「4試合の中で一番、順心らしいサッカーで得点を奪えたので嬉しいです。(順心らしさとは)前線からのハイプレスだったり、コンビネーションで崩してしっかり決めるところです」。そう話したのは、久保田とともにダブルキャプテンとして、チームを率いたDF大川和流(3年、KASHIMA-LSC)である。

1点目はGK菊地優杏(3年、いわてグルージャ盛岡Jrユース)から始まった攻撃。SB松本とSH中出朱音(3年、日テレ・東京ヴェルディメニーナ)が連携して右サイドに起点を作った。2点目はMF下吉優衣(3年、日テレ・東京ヴェルディセリアス)から辻澤へつなぎ、左サイドを駆け上がったDF永田優奈(2年、RESC GIRLS U-15)のインナーラップからコーナーキックを獲得している。

守備でもしっかりとプレスをかけながら、パスとドリブルを融合させた聖和学園の攻撃を封じる。そのプレスをかいくぐられてシュートに持ち込まれるシーンもあった。だが聖和学園のもうひとつの狙い。同サイドに人を集めて相手の守備を引きつけ、手薄となった逆サイドへ展開するという形は許さない。これにより、聖和学園の攻撃力は半減した。

夏のタイトル獲得は7年ぶり。選手権との夏冬連覇はもちろんだが、9月18日に行われるJFA U-18女子サッカーファイナルズ2023(※1)も含めた3冠獲得の可能性が見えてきた。「めざせることは素晴らしいこと。3冠をめざして取り組んでいきたい」と中村監督が言えば、「4試合戦って改善点がたくさんあった。そこを修正して真の日本一になりたい」と、大川キャプテンの想いも変わらない。初戦敗退した昨年の雪辱を晴らした藤枝順心の挑戦は始まったばかりだ。

※インターハイ優勝チームと日本クラブユース女子サッカー大会(U-18)優勝チームが対戦する。