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[TOYOTA Vitz CUP]INAC神戸 vs アーセナル、異なるスタイルの激突

トピックス Takuma Omori(みなサカ編集長)
東日本大震災のチャリティマッチとして開催される「TOYOTA Vitz CUP」の公式練習、監督と主将による会見が29日、西が丘サッカー場(東京都北区)と隣接する味の素ナショナルトレーニングセンターで行われた。プレナスなでしこリーグを初制覇したINAC神戸レオネッサが15時から、記者会見を挟んだ18時からイングランドチャンピオンであるアーセナル・レディースが前日トレーニングを行った。

アーセナルは新しく創設されたWSL(ウーマンズスーパーリーグ)の初代チャンピオンに輝くと、FAカップ、リーグカップも制し、国内3冠を獲得した。そして、永里優季(トゥルビネ・ポツダム)、熊谷紗希(フランクフルト)も参戦しているUEFA女子チャンピオンズリーグでも準々決勝に勝ち上がり、欧州でも指折りの強豪チームとして知られている。FIFA女子ワールドカップの日本戦で得点を挙げたことで知られるFWレイチェル・ヤンキー、FWエレン・ホワイトといったイングランド代表に加えて、アイルランド、スコットランド、ウェールズといった各国代表を揃えた多国籍チームでもある。

そのため、プレースタイルもイングランド代表とは全く異なる。アーセナルの女性指揮官、ローラ・ハービー監督曰く、「イングランド代表よりもショートパスで繋いでいくという特徴がある。自分たちのスタイルを崩さずに積極的に仕掛け、守備ではゴールを入れさせない」と、攻守において自信を見せている。実際、この日の練習でも5対5のミニゲームなど、パスワークを意識した練習を行い、紅白戦でもロングボール、ドリブル以上にボールを繋ぐことを重視していることは一目瞭然だった。DFラインもワンタッチで繋ぎながら逆サイドに展開するなど、しっかりとビルドアップしながら攻撃を組み立てていく印象だ。

ヤンキー、E・ホワイトとのマッチアップばかりに注目が集まる中、是非とも注目してもらいたいのはMFキム・リトル(21)である。今季のWPLでは中盤ながらふたりを上回る8ゴールを奪ってチームの得点王に輝き(得点ランキングは2位)、FA女子カップ決勝でも決勝点となる先制ゴールを挙げた。2010年には36試合で47ゴールを叩き出し、その年の最優秀女子選手にもノミネートされている。また、既に60試合以上のキャリアを誇るスコットランド女子代表でのデビュー戦は、2007年2月の日本戦(キプロスカップ)だった。

INAC神戸率いる星川敬監督も、「中盤のキム選手は得点を多く取っていることでもわかるように、プレーの質も動きも日本の中でも上位の選手だと思う」と、高い評価を与え、警戒を強めている。「旅館に入った瞬間と、イギリスにはない和室の雰囲気が印象的だった」と、京都旅行の感想を話したキムは、「攻撃的なプレーを随所に見せ、ショートパスを多く使った見応えのあるゲームをしたい」と、試合に向けた意気込みを語った。

アーセナルを迎え撃つINAC神戸はなでしこジャパン7人、韓国女子代表2人を揃え、今季は無敗でリーグ初制覇を飾った。その強さについて、いまさら語るまでもないだろう。日本の頂点に立つINAC神戸が、ヨーロッパの強豪チームにどういうサッカーを見せるのか。みどころは、その一点に尽きる。星川監督は、「なでしこジャパンは日本の新しいスタイルを世界に示したと思う。ボールを保持し、主導権を取っていくのが自分のたちの目指すスタイル。こだわっている部分では、なでしこジャパンにも決してヒケを取っていない」と、なでしこジャパン以上に主導権を握ってゲームを展開するという自負を隠さない。

この日の練習では、中盤から前線にいかにボールを供給するかに重点を置いた練習に取り組んでいた。素早いパスワークで中盤を攻略し、スピードがある前線がスペースに飛び出す。INAC神戸のパスワークに対して、アーセナルの中盤がどう対応するのかというのがひとつめのポイント。そして、ワンタッチ、ツータッチでの細かいパスワークはアーセナルの中盤を混乱に陥れることが期待されると同時に、中盤から前線にいかにラストパスを供給するかが、ふたつめのポイントとなる。中盤から前線へのパスの連携を合わせることも簡単ではない。そこには味方同士の連携に加えて、アーセナルのDFラインとの駆け引きも含まれる。

最後に、記者会見でのキャプテン・川澄奈穂美のコメントを紹介する。
「イングランド戦での敗戦は悔しい思いをしたが、イングランド代表とアーセナル、なでしこジャパンとINAC神戸は違うチーム。代表で活躍した両選手はキーマンになると思う。そこは注意しながら、しっかりとINAC神戸のスタイルで勝ちたい」

注視したいのは、イングランド代表の件ではなく、「INAC神戸のスタイルで勝ちたい」という言葉である。同様のコメントは、GK海堀あゆみもテレビのインタビューで話していた。チームとして、個人として、アーセナルに対して、どういうチャレンジをして、それがどういう結果となるのか。おそらく、選手たちはそこを考えているのだろう。その点を頭に入れながら試合を観ると、楽しく観られるのではないだろうか。