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[日韓女子LCS]プレビュー:INAC神戸にとって重要な2週間、澤不在の中盤OP作りが課題

Takuma Omori(みなサカ編集長)
この試合で頭に入れておくべきことは、リーグ開幕までまだ1ヶ月近く残している段階で開催されるということである。なでしこジャパンに代表7人を送り出していたINAC神戸は、ようやく本格的なチーム作りをスタートさせたところである。この大会が終わるとすぐに鹿児島・沖縄に遠征を行い、スカイブルーFCと合同合宿、プレシーズンマッチを行う。一方、大教高陽が所属するWKリーグは3月26日に開幕を控えており、両チームのコンディションには開きがあるだろう。「チャンピオン同士がやることは良いことだが、時期的なことを考えたらプレシーズンマッチに近い。シーズンを意識しながら、勝敗より内容が問われる」と、INAC神戸率いる星川敬監督はこの試合をどう捉えるか説明した。

ただ、そうしたことを差し引いても、この対戦には幾つかの魅力的な要素を見出すことができる。「韓国女子代表に似たポゼッションを意識したチーム。分類すれば、なでしこジャパンよりは相手のほうが自分たちのスタイルに近い。ポゼッション志向のチームにブラジル人がいたり、変化を付けられる。アジアの中でも良いチームだと思う」と、星川監督は大教高陽を高く評価する。攻撃ではポゼッション、守備では前線からの連動したプレスでボール奪取を狙う似たもの同士。さらに、プレチーニャ、イ・ジナ、クォン・ウンソムというINAC出身の選手たちの存在も忘れることは出来ない。

大教高陽は昨日、約30分間の紅白戦で前日練習を締めくくった。星川監督の言葉を借りるまでもなく、紅白戦の中でチームの志向するスタイルは一目瞭然だ。ボール回しの上手さは確かにあるが、それ以上に守備が組織化されている。2トップが相手DFに寄せてパスコースを限定、サイドでも同様に縦のコースを切ると、中に出したボールをパスカットして一気に攻めに転じる。そうしたプレーが紅白戦の中で幾度も見ることが出来た。INAC神戸としては、最終ラインで起点となるDF田中明が判断よくサイドへボールを供給することが必要となると同時に、中盤の3人が的確なポジショニング、サポートし、相手に主導権を奪われないように気をつけたい。

そういう意味でも、「良性発作性めまい症」で欠場が決まったMF澤穂希が不在となる中盤の構成が注目される。「攻撃陣の誰か。京川が入れば大野、中島が中盤に入ればそのまま」と、星川監督は大野忍、中島依美の名前を挙げた。常盤木とのチャリティマッチ(2月19日)では、MF田中陽子が代役を務めたが、チ・ソヨン負傷退場のアクシデントを受け、左SBに入っていた中島が前半途中から中盤に移っている。中島はその試合で2アシストするなど、左SBでも中盤でも得点に絡んでいる。左SBには昨年レギュラーを務めた高良亮子もおり、ある程度計算出来る。中島が起用されるポジションによって、星川監督の今季の起用方針を量ることが出来る。

常盤木の選手として90分間プレーしていた京川舞にもチャンスが与えられるだろう。だが、いきなり大野を中盤に下げて先発することは考えにくい。攻撃のオプションとして試合途中に京川を入れ、大野が中盤に下がる形が現実的ではないか。星川監督からは名前が挙がらなかったが、常盤木戦では果敢にゴール前に飛び出して、バー直撃のシュートを放つなどアピールした田中陽の起用にも期待したい。いずれにしても、今後も澤が欠場する状況は十分に考えられるため、いくつかの組み合わせが試されるに違いない。

澤不在の中盤で主導権を握ることが出来れば、おのずとゴールへの道は開けてくる。大教高陽の最終ラインには長身でフィジカルの強い選手が並ぶ。だが、ポゼッションしながら後方からの攻撃参加を促すため、背後には広大なスペースが広がっている。とりわけ、両サイドバックが積極的に攻撃に関わる反面、そのスペースを突かれてカウンターに晒されるというシーンを短い紅白戦の中でも幾度も見ることができた。ボールを奪った瞬間に相手ディフェンスの綻びを素早く見つけ、ボールの出し手と受け手の意識がシンクロするような攻撃を期待したい。

大教高陽はボール回すことにだけでなく、臨機応変にロングボールを交えてくるため注意が必要だ。プレチーニャと2トップを組む長身FWはターゲット役だけでなく、中盤に降りてボールを引き出したり、背後を狙ったり、多彩な動きをする。その動きに対して、プレチーニャ、両サイドハーフが裏のスペースを虎視眈々と狙っている。センターバックからのロングフィード、左サイドバックからダイアゴナルに(斜めに)逆サイドのスペースを突くロングボールを蹴りこんでくる。最終ラインから蹴らせないのか、DFラインで跳ね返すのか、チーム全体で意識を統一させたい。

先述したとおり、代表選手はポルトガル遠征から帰国したばかり。一方、残った選手たちも同じ時期に、日本体育大学、吉備国際大学、常盤木学園高校の選手と合同チームを組み、中国・南京で親善大会に出場した。この試合、続く鹿児島・沖縄遠征など、ここから次の代表召集までの約2週間はチームにとっても重要な期間となる。自分たちのやるべきこと、目指すサッカーに対してチャレンジすることが出来れば、勝敗に関わらずポジティブな収穫・課題が出てくるに違いない。