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[平成25年度高校総体]1回戦|初出場の山形西、最高の舞台で引退を迎えた3年生

トピックス Takuma Omori(みなサカ編集長)

佐賀県で開催されている全国高等学校総合体育大会は5日、1回戦8試合を消化した。大会は4日に佐賀県総合運動場(陸上競技場、球技場北/南)、鳥栖市陸上競技場で開幕したが、雷雨の影響で第1試合途中で中止。5日に残りの1回戦、6日に2回戦、7日に準決勝と日程を変更し、決勝は実施しないことに決まった。

■雷雨で中断、2日にまたがって行われた大会初戦

初出場の山形西(東北2/山形)は鳥栖市陸上競技場で大商学園(関西1/大阪)と対戦し、0-8で敗れた。試合前のアップの段階で雷が鳴り、定刻から30分遅れの10時半にキックオフした(試合は35分ハーフ)。

試合は大商学園の一方的な展開となる。大商学園はDFラインを高く上げ、時にはGK安村茂慧を残して全員が相手陣内でプレーする。MF三浦桃がボランチの位置からサイドを突いてクロスを放ったり、ゴール前に顔を出してシュートを狙えば、センターバックのDF松原有沙も積極的に得意のロングシュートを狙う。球際の競り合い、攻守の切り替えでも山形西を上回った。

8分にはFW田中江梨奈にスルーパスが放たれる。この場面は山形西GK古瀬遥花の鋭い飛び出しでシュートを阻止したが、大商学園は続く10分にゴールをこじあける。味方シュートのこぼれ球をFW大井美波が押し込み先制すると、1分後にはDFラインからのロングボールに抜け出したFW田中が追加点。15分にはキャプテンを務めるDF松原がFKから豪快に叩き込み、さらにMF鎌田千夏が2点を追加した。

前半終了まであと5分というところで再び雷が鳴り、試合はすぐに中断された。しばらくは屋根のあるメインスタンドで待機していたが、雷が鳴り止む気配がないため、選手たちはバスに移動。山形西の選手たちはその間に昼食を摂り、試合のビデオを見て、再開に向けて準備した。だが試合中断から約3時間、天候が回復する見込みがたたず、14時半頃に中止が決定した。

翌5日、10時に前半30分から再開された後半戦も大商学園の優位は揺るがない。44分にMF吉田紫穂のパスから田中が決めると、その4分後にもMF藤根有彩のクロスに田中が合わせる。前日の前半にも得点している田中は、2日越しでハットトリックを達成する。試合終了間際の65分にもCKからFW山田仁衣奈が決め、ゴールラッシュを締めくくった。

■進学校、山形西の3年生にとっての引退の舞台

「インターハイの1回戦を2日間に分けてやれて、貴重な経験が出来た。昨日、前半29分までやって、大商学園のスピード、パワーに圧倒された。個人的な能力の差があれだけありながら、ここまで踏ん張れたところは、『頑張ったね』と褒めてあげたい」と、村上周一監督は、2日間に渡る戦いを終えた選手を労った。

山形西は前半、大商学園DF松原のロングボールに悩まされた。松原はFKを決めた3点目に加えて、2つのアシストを記録。得点場面以外にも、DFラインから幾度もロングボールを放ち、山形西DFラインの背後を突いた。また、攻撃から守備への切り替えで後手を踏み、DFラインが整わないところでギャップを突かれた。2列目から飛び出してくる選手にフリーで飛び出され、GK古瀬が幾度も1対1となる局面を作られている。

「交代しちゃいましたけど、10番(松原)がボールを持ったらラインを一度下げる。うちのDFラインはオフサイドをかける技術もないので、2列目からの飛び出しにも反応出来ない。とにかく下げて反応しよう、待ち構えようと話しました」(村上監督)と、松原のロングボールに警戒して後半戦に臨んだ。

その松原は5日の試合再開と同時に、MF垣内愛菜と交代。DFラインからのロングボールという脅威がなくなった山形西は、中盤で相手の縦パスを断ち、GK古瀬が1対1に晒される場面も減った。チームの中心選手であるMF齋藤叶子が鋭い読みでボールを奪い、2トップにゴールを託したが、なかなか前線にボールが収まらない。

57分には齋藤が相手DFの間に走りこむFW阿部優紀にスルーパスを出すが、大商学園GK安村が冷静に対処。前半にも齋藤のパスにMF岡崎絵里が走り込んだが、数少ないチャンスをシュートに繋げることは出来なかった。シュートゼロに終わったが、後半の失点も3点に抑えた。

「この大会が最後の引退の舞台。ここに来ることは最高の引退、終わり方が出来る。高校サッカーライフが終焉を迎えた涙じゃないですかね」(村上監督)と、試合後に数人の選手、マネージャーが涙を流していた。山形西はほとんどの選手が高校からサッカーを始めた経験の浅いチーム。そんなチームが山形県予選、東北予選を勝ち抜き、インターハイに向けた準備を経て、2日にまたがる試合を闘いぬいた。

ここまでのプロセス、ともに過ごした時間こそが、彼女たちにとってはかけがえのないものに違いない。いつもより少し長い夏が終わり、スタンドに向かって挨拶するキャプテン、GK古瀬の表情には、"やり切った"という清々しさ、充実感に満ちていた。

そして、東北大会と同様に、バックスタンドから声援を送ったサブの選手たち。躍動感があり、途切れることのない彼女たちの応援は、文句なしで日本一の応援団だった。