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[インカレ]技術、戦術、チーム力で勝負、価値ある準優勝果たした筑波大学

トピックス Takuma Omori(みなサカ編集長)

どちらが勝っても"初優勝"というフレッシュな顔合わせとなった第22回全日本大学女子サッカー選手権の決勝戦。延長で吉備国際大学(中国1/岡山)に1-2で敗れた筑波大学(関東6/茨城)だったが、「自分たちが今シーズンやってきたことは出しきれた」と主将のMF大友あかねが語る通り、持てる力を存分に発揮した。

1回戦から登場した筑波大は、接戦を制してトーナメントを勝ち上がった。初戦を3-0で勝利すると、2回戦(vs 関東学園大学)、準々決勝(vs 新潟医療福祉大学)はいずれもPK戦での決着となる。2回戦ではMF瀬戸口梢とMF大友あかね(主将)、準々決勝ではFW秋山未空がPKを成功。昨年度、日本体育大学との2回戦で決められなかった3人がゴールネットを揺らし、3年ぶりの準決勝に駒を進める。

■1本のFKが勝敗を分けた準決勝

年が明けた1月17日、迎えた準決勝の相手は東京国際大学(関東7/埼玉)。9月に対戦した関東大学女子サッカーリーグでは0-0で引き分け。リーグ戦の順位も筑波大が6位(勝ち点12)、2ポイント差で東国大が7位(勝ち点10)と力の差はない。

1点を争う僅差の戦いが予想される中、試合は立ち上がりから東国大が主導権を引き寄せる。長身FW池上菜央にボールを集めて押し込む東国大に対して、筑波大は粘り強い守備でシュートを撃たせず、最後はGK國香想子の好セーブでゴールを死守。相手の攻撃を食い止めると、素早く攻撃に転じて相手のDFライン背後のスペースにロングボールを放ち、得点のチャンスを伺った。

後半も試合展開は変わらない。東国大はMF相沢優里が積極的にシュートを放つなど、筑波大が我慢する時間が続く。だが、ひとつのプレーがその流れを断ち切った。後半27分、筑波大はFKを獲得。MF瀬戸口が直接狙ったボールはクロスバーに弾かれ、相手DFにクリアされてしまうが、試合の空気は一変。筑波大は流れを一気に引き寄せ、FW横山亜依の2ゴールに繋げる。

後半28分、「それまで自分のプレーが全然出来ていなかったので、変えるためにも思い切って撃とうと思った」と振り返った横山が左サイドから切れ込み、右足でゴール右隅に突き刺す。その2分後には、「自分の得意な形に持って行けて、シュートもコースに流し込むことが出来た」(横山)と、今度は縦に仕掛けて相手DFを振り切り、左足でゴールに流し込んでいる。

今大会、ここまで得点のなかった横山の活躍は、決勝に向けて追い風となるに違いないはずだった。だが、2回戦に続いてイエローカードを受けた横山は累積警告で出場停止となり、スタンドから仲間をサポートする側に回った。

■なでしこリーグ参戦の吉備国大を延長まで追い込む

GK平尾恵理、DF田口ひかりを欠いたうえ、決勝進出の立役者・横山が出場停止。吉備国大も数名の選手が出場できないといっても、筑波大の選手層の薄さは否めない。なでしこリーグに参戦する吉備国大が有利かと思われたが、筑波大はそんな下馬評をも翻してみせた。

ホームベンチ側からアウェイベンチ側に冷たい風が吹きつける悪コンディションの中、筑波大は風下で前半をスタートする。追い風に乗って攻め込んでくる相手の攻撃を粘り強く凌ぐと、素早い攻守の切り替えから反撃に出る。MF大友、MF瀬戸口から右サイドのFW山守杏奈にパスが渡り、吉備国大の3バックのサイドのスペースを幾度も突く。主導権は吉備国大にあったが、筑波大は狙い通りの戦いを見せる。

しかし迎えた34分、ついにCKから先制点を許してしまう。FW濱本まりんの鋭いヘディングシュートがゴールを襲い、GK國香がパンチングでCKに逃れる。続くCKでMF重政絵が蹴ったボールをDF鎌田蘭にニアサイドで合わされた。

先制した吉備国大はゴールをきっかけに本来のサッカーを取り戻す。前半終了間際には濱本のループパスがDFの頭越しに出てくるが、この場面でもGK國香の鋭い飛び出しでシュートを撃たせない。後半も強風を受ける吉備国大がボールを繋いで押し込むが、筑波大は追加点を与えなかった。1失点で踏ん張ったことが、同点弾を呼び込んだのだ。

後半32分、MF伊藤栞のシュートをGKが弾いて得たCK。瀬戸口の蹴ったボールに途中出場のDF藤本真央が反応し、精いっぱい足を伸ばしてボールに触る。そのボールが目の前にこぼれてきた伊藤が右足を振り抜き、ゴールネットを揺らす。延長戦で一瞬の隙からMF高野紗希に勝ち越し点を奪われ、敗れたことは悔やまれる。それでも筑波大らしいサッカーを見せたとという意味では、悔いは残らないだろう。

■技術、戦術、チーム力で能力の差を埋める

試合前、記者に配られるメンバー表には選手名の横に前所属チームが記されている。準決勝の東国大、決勝の吉備国大には藤枝順心、神村学園、湘南学院といった全日本高校女子サッカー選手権の常連校の名前がズラリと並ぶ。

一方、国立大学の筑波大はセンター試験、AO入試(自己推薦)を突破した選手でないと入部出来ない。「GK(國香)は中学、高校とバレーボール部、センターバックのふたりは柔道部(菅原明香)と帰宅部(平麗実)」(三輪由衣監督)と、高校時代はサッカー部に所属していなかった選手もいるのだ。

個々の能力、経験の差を補うため、「身体能力の差を技術で埋めるように努力して、足りないものは戦術、それ以上はチーム力でと全員が認識して取り組んだ」と三輪監督は述べる。また、ミーティングは数時間に及んだという。組織的かつ体を張った守備で相手の時間を凌ぎ、中盤の技術力、前線の突破力を活かした攻撃でゴールを奪う。日ごろのトレーニングの成果をチーム全体で表現しつくした準決勝、決勝の2試合だった。

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