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[なでしこジャパン]アジア大会|パス成功率は70%、宮間の復調がなでしこを3連覇に導くか

トピックス 大住良之(サッカージャーナリスト)

 決勝戦の相手は北朝鮮――。

 9月29日(月)、なでしこジャパンは韓国の仁川で開催されている第17回アジア競技大会の準決勝でベトナムと対戦し3-0の勝利、3大会連続の決勝戦進出を決めた。相手は4大会連続決勝進出、3大会連続して決勝戦で日本と当たる北朝鮮だ。

 この大会に入って続出していた故障者が次第に戦列に戻り、準々決勝の香港戦は、これまで出番の少なかった選手を中心に戦いながらも9-0の大勝。準決勝ではエースのFW高瀬愛実が先発に復帰し、北朝鮮と韓国の勝者と当たる決勝戦に向け「ギアアップ」を目指した。

■サイド攻撃不発も2トップが存在感

 先発は、GK山根恵里奈、DFは右から羽座妃粋、北原佳奈、長船加奈、有吉佐織、MFは宮間と阪口夢穂をボランチに置き、右に川澄奈穂美、左に中島依美、2トップのFWには、高瀬と増矢理花が並んだ。攻撃人4人はすべてINAC神戸。そのコンビネーションで攻撃のスピードアップを図ろうという布陣だった。

 ベトナムは厚い守備からボールを奪って速攻を狙うサッカー。しかし5月のアジアカップ時と比較するとパス能力が上がり、速攻ができないときにはしっかりとビルドアップするプレーを見せてなでしこジャパンがボールを取り戻すのに苦労する場面も見られた。

 この試合でなでしこジャパンが苦労した最大の原因は、サイド攻撃の不調だった。右の川澄は2011年ワールドカップ以来の攻撃の切り札。左の中島も昨年来、なでしこジャパンの中核メンバーとなった選手で、スピードと運動量に定評がある。しかしこのふたりのところで攻撃がスピードダウンし、突破もできず、有効なクロスも入らない。

 右サイドバックとしてこれまで交代出場ながら好プレーを見せてきた羽座は、初先発で固くなったのか、これまでのような落ち着いたプレーが見られず、フル出場したものの力を示すことはできなかった。

 右に羽座を入れたため、左に回った有吉は、しっかりとしたプレーを見せたが、ボールを支配し、攻め込んだ時間が長かった試合にもかかわらず、効果的な崩しができたのは、終盤になってからだった。

 佐々木則夫監督は、左のMF中島を後半は吉良知夏に代えた。有吉が攻撃に絡めるようになったのは、吉良がうまく生かしたからだった。しかし吉良自身のプレーは相変わらず粗削りで雑なところが多く、攻撃を強化するところまではいかなかった。

 川澄はこの大会の全試合に先発出場し、この試合もフル出場したが、状態は良くならず、「元気がない」としか言いようがない。守備の場面ではすばらしい働きをしているのだから体調が悪いわけではないのだろうが、ボールコントロールが乱れ、スピードも上がらず、攻撃を牽引するようなプレーはまったく見られない。

 サイド攻撃ができないから、攻撃は中央に頼ることになる。高瀬は相手DFからかなりひどいファウルを受けながら懸命にポストプレーをしようと試みたが、いまひとつ味方と合わない場面が続いた。しかし決勝戦に向け、高瀬の復帰は心強く映った。

 高瀬と組む増矢は、プレーのキレや判断、瞬間的なスピード、高い技術、攻撃のセンスなど、これまでの試合と同様、これからのなでしこジャパンで攻撃陣の一翼を担う能力を見せた。しかしこの試合でも、持ち味であるはずの「決定力」を発揮しきれず、ビッグチャンスをつかみながらゴールを決めることができなかった。

 前半40分、宮間の見事なスルーパスから右を川澄が突破し、中央でフリーの増矢に送ったチャンスは、しっかりと決めなければならなかった。技術的にミスがあったわけではない。しかしGKの届かないところに送り込むという一瞬の「余裕」に欠け、GKにぶつけてしまった。

 もうひとつの「余裕」があれば、この大会で得点王になっておかしくないチャンスを与えられてきた増矢だが、今後この壁をどう乗り越えるのか、期待したい。

■猶本が高レベルのプレー、宮間のポジションは?

 結局、この試合の3得点はすべてCKを起点にしたもの。前半24分、右CKがはね返されたのを拾って右の宮間に戻し、宮間が入れたクロスはベトナムGKに防がれたが、正面で拾った阪口がワンストップして冷静に空いたコースに送り込んだ。

後半8分には、左CKを相手DFがゴール正面で触れ、バーに当たって右にこぼれたところを拾った北原が中央に入れたところに飛び込んだ長船が頭で決めた。そして後半29分、右でショートコーナーを宮間-川澄-宮間とつなぎ、宮間が入れたクロスをニアポストに走った交代出場のFW菅澤優衣香がダイナミックなヘディングで決めた。

 今大会で私が気にかけてきたのが、ボランチとしてチームを引っ張る宮間のプレーだ。相手に渡るパスが多すぎ、それが日本の攻撃からリズムを奪っていた。

 この試合、私は宮間のパスを数えながら見た。結果は、試合を通じて127本のパスを送り、うち90本が成功。成功率は70.8%だった。内訳は、前半が64本中43本成功で67.2%、後半が63本中47本成功で74.6%。前半では、とくに立ち上がりの20分間でミスが目立ったものの、その後は急激に成功率が上がり、後半は安定していた。決勝に向け、宮間のパス精度が上がってきたのは好材料だ。

 後半30分から阪口に代わってボランチに入ったMF猶本光のプレーは、この試合で最もレベルの高いものに見えた。テンポよくゲームを作り、必要とあればドリブルで前進し、シュートも放った。

 北朝鮮は、日本のボランチに厳しいプレスをかけてくるだろう。ボランチは阪口と猶本で組ませ、宮間は以前のように左MFに置いて自由にプレーさせるほうが、相手にとって脅威になるのではないだろうか。宮間が引いてボランチのラインに並べば中盤を強化できるし、前線もより流動的になるだろう。宮間が自由にプレーするためには、左サイドバックがそのプレーを理解し、連動しなければならないが、有吉なら十分務まるだろう。

 アジア大会連覇へ挑むなでしこジャパン。佐々木監督はどんなチームを送り出し、どう北朝鮮に対抗しようとするだろうか。
(了)