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[全日本女子ユース]FW京川舞がハットトリック!ポジティブシンキングで常盤木学園を2年ぶり決勝へ導く

トピックス Takuma Omori(みなサカ編集長)



まさに京川舞のひとり舞台だった。

3−3で迎えた後半アディショナルタイム、時計の針は3分に近づき、誰もが延長突入と思ったその時だった。常盤木学園高校は左サイドで仲田歩夢のスローインを受けた京川は、そのままゴールライン際をドリブルで突き進む。慌てて対応に来たディフェンスをかわすと、右足を振り抜きゴールに突き刺した。

「スローインを受けた時に、最初のディフェンスがもっと思い切り来ると思ったんですけど、なかなか来なくて、そこで大きく抜けられた。そこからはアジア予選のオーストラリア戦で決めたシュートが自然と頭に浮かんで、そういう感じで持っていければと思って打ったら入った。やっとチームのためにシュートも決められました」と、京川は決勝点の場面を振り返る。

オーストラリア戦というのは昨年10月、ベトナム・ホーチミンで開催されたAFC U-19女子選手権第3戦のこと。0−0で迎えた42分、MF猶本光(福岡J・アンクラス)が左スペースに出したパスに走り込んだ京川は、冒頭のゴールをビデオで再生したかのようにゴールに向かって切れ込み、GKの股間を抜くゴールを決めてみせる。京川の先制点を守り切った日本は、優勝に大きく近づく1−0の勝利を収めた。

試合の行方を左右するゴールを決め続け、大会MVPと得点王を受賞した京川だが、チームではゲームメーカーとしての顔を持つ。

「1年生の頃はフォワードとして使われることが多かった。3年生になって、自分がチームを作らなければいけない立場になり、チャンスでも決めていかなければいけない。役割が増えたけど、みんなの支えがあって、自分を自由に動かしてくれて、やりたいようにやらせてくれた。それが得点に繋がったり、ラストパスをみんなが決めてくれた」と、学年が上がるにつれて、役割が変化してきたことを明かしてくれた。

日ノ本学園戦のメンバー表には4人のFWが登録されていたが、実際には京川がフリーマンのように振る舞い、フィニッシュからゲームメイク、守備など、様々な役割を担っていた。自陣まで戻って守備を助ける場面を見るのも珍しいことではない。カウンターの起点が京川のボール奪取から始まることが幾度もあった。

その献身的なプレーには頭が下がるばかりだが、特筆すべきは全力でチームプレーをしながらも、チャレンジリーグでは断トツのゴール数で得点王に輝いているということである。この日も、接戦の中、全ての得点が勝ち越しゴールだった。

先制点は18分、中央をドリブルで突き進んだ京川が相手DFを振り切り、GK小高愛理との1対1からシュート。このボールは小高に阻まれたが、こぼれ球を京川が詰め、試合の均衡が破れる。その後も、追いつかれる度に京川のゴールで突き放していく。前半終了間際の44分には、「相手のブロックが低く整っていたので、ヴァイタルが空いていて、ミドルシュートが頭の中にあった」と、鮮やかなミドルシュートで貴重な勝ち越し点を決め、2−1で前半を折り返す。

そして、試合も終盤に差し掛かると風雲急を告げる。72分には常盤木DF鈴木里奈のパスミスを拾った川原奈央のゴールで日ノ本が試合を振り出しに戻す。すると、80分には道上彩花のパスから仲田の折り返したボールに京川が飛び込み、仲間のミスを帳消しにする三度目の勝ち越し点。これで勝負ありと思ったのもつかの間、日ノ本も後半終了直前の90分に川原の2点目が決まり、土壇場で追いついた。そして93分、冒頭の決勝ゴールが生まれるのである。

取っても取っても追いすがる日ノ本に対して、心が折れてもおかしくはない展開を京川は「楽しめた」という。「(最後の失点は)正直、『頼む』という感じでした。『何でだよ』と、いつもだったら言ってしまっていると思うんですけど、もし取られても自分たちが取り返せばいいと、先生に言われたことが自然と頭に浮かんだ。重く考えずに、やりたいように、楽しくプレーできました」と振り返る。

先述したAFC U-19女子選手権も苦しい戦いの連続だった。日本は苦しい展開、時間帯に幾度も京川の得点に救われてきた。その時の心境について、京川は次のように話している。「攻められている時、いかに良い準備が出来ているか。前向きな気持ちでプレー出来たから、点に繋がったのかなと思う。そういう気持ちのコントロールというのも、スタッフが声を掛けてくれたり、ベンチから『切り替えろ!』という声のおかげで自分もポジティブに考えられるようになったので、相手の隙を突けたと思っています」

技術の向上はもちろんのこと、どんな状況でも前向きにに考えることのできるポジティブシンキング。常盤木に入学してからの3年間、京川が最も成長を遂げたのはメンタルの部分かもしれない。ピンチの時、劣勢の時間帯、焦ってがむしゃらに点を取りに行くのではなく、冷静に虎視眈々とゴールを狙い続ける。そうした姿勢を持ち続けられたからこそ、今シーズンの京川は結果を残し続けてきたに違いない。