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[なでしこジャパン]改善が見られないフランス戦、なでしこのサッカーを取り戻せるか

トピックス 大住良之(サッカージャーナリスト)
ロンドンオリンピック開幕まで1週間を切ったが、なでしこジャパンの準備状況がはかばかしくない。7月19日、パリで優勝候補の一角であるフランスと対戦したなでしこは0-2で完敗だった。

16日にフランス入りして4日目。大会前の「追い込み」で体は重く、フランスの動きについていけなかったのは仕方がないのかもしれない。心配なのは、なでしこジャパンが本来の良さをまったく見失い、改善の跡が見られないことだ。

7月11日に国立競技場で若手に切り換えたばかりのオーストラリアと対戦。3-0で勝ったものの、攻撃にリズムがなかったのが気になった。ボールを持ったときに選手間の距離が遠いため、パスは長くなり、「止めて、見て、パス」というリズムになる。スピード感が出ず、相手は楽に対応できてしまう。その傾向は、フランス戦でもまったく同じだった。

★★★ この日の先発は、明らかに「本番」を意識したものだった。GK福元美穂、DFは右から近賀ゆかり、岩清水梓、熊谷紗希、鮫島彩、MFは澤穂希と阪口夢穂をボランチに置き、右に大野忍、左に宮間あや、FWは川澄奈穂美と大儀見(永里)優季。オーストラリア戦ではハーフタイムに3人など計6人の交代をしたが、フランス戦ではGK(ハーフタイムに海堀あゆみに交代)を除くと「本番仕様」だった。

だがなでしこは立ち上がりからフランスの大きく正確な展開に翻弄され、ボールをもっても攻撃ゾーンまでなかなか入っていけない。前半20分にようやく右サイドの大野と近賀で攻め込んだが、前半24分、ルーズな守りからフランスに先制点を許す。近賀がボールに行かず、岩清水がそれに影響されてポジションを取れず、熊谷は一瞬マークを離してしまった。

プレーのテンポの遅さとともに気になったのは、球際の弱さだった。五分五分のボールにフランスの選手がスライディングでくるのに対し、日本は足先でかわそうという形が多く、ほとんどのボールを持っていかれた。これは後半、とくに終盤になると大きく改善され、試合の形勢はややもちなおしたものの、攻撃のリズムのなさは最後まで続いた。その結果、効果的な崩しやシュートチャンスの数は、前半と大差のないものだった。

オーストラリア戦のときにも選手間の距離の遠さは気になったが、佐々木則夫監督は問題点と考えなかったのだろうか。それとも「この距離感でないと、相手のプレスの餌食になる」との判断から、意図的にそうさせているのだろうか。しかしそれでは「なでしこのサッカー」は出来ない。攻守ともに集団で戦うというなでしこの力が出ず、個人対個人の勝負になってしまう。そうなれば、フィジカルで大きく劣るなでしこに勝機はない。

★★★ 象徴的だったのは、宮間からのパスが通らないことだった。宮間は、ボールを受けると、ほとんどの場合、遠くを見て、相手DFラインの裏や逆サイドに大きなパスを通そうとした。そのパスの多くが相手にひっかかった。

さらに、遠くに出せないと判断して短いパスに切り換えたときには、相手に詰め寄られ、短いパスの先にプレスをかけられてピンチという場面(後半21分)もあった。宮間のロングパスが絶妙であっても、こうした攻撃ではなでしこのフォワードと相手DFが1対1で走り合う形になり、スピードのある選手を並べたフランスに楽に守られてしまった。

後半29分、なでしこは2失点目を喫する。フランスの左CK。ゴール前に入れられたボールを、187センチの長身DFルナールに強烈なヘディングで叩き込まれたのだ。大儀見と熊谷がついていたが、走り込みざまのヘディングを妨害することはできなかった。

★★★ 本来のショートパスをベースにしたサッカー、そのためにボールの周囲に人を集めるサッカーができないと、オリンピックではどの試合も苦しいことになるのは避けられない。まして第1戦で当たるカナダはFWシンクレア、第2戦のスウェーデンはFWシェリンという超エースをもつチーム。0点で抑えるのは難しい。2点を取らなければ勝ち点3を得ることはできないだろう。

オリンピックの女子サッカーはグループ3位でも準々決勝に進む可能性のある大会だ。初戦からトップフォームでなくても、グループリーグの3試合を戦ううちに調子が上がっていけばいいのだが、調子を上げるためには、問題点を理解し、チームとして同じ方向に軌道修正していく必要がある。

昨年のワールドカップのビデオを見て、リズムを思い起こす必要もあるかもしれない。ともかく、なでしこジャパンの復調は「なでしこのサッカー」を取り戻せるかどうかにかかっている。
(了)