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[皇后杯東北大会]竹内瀬戸香の同点弾で流れを一気にひっくり返した常盤木学園が3年ぶり本大会へ

トピックス Takuma Omori(みなサカ編集長)



[皇后杯東北大会 決勝 常盤木学園高校 2-1 聖和学園高校]

皇后杯JFA第44回全日本女子サッカー選手権大会東北大会は10日、みやぎ生協めぐみ野サッカー場で決勝が行われ、常盤木学園高校(東北リーグ/宮城)と聖和学園高校(東北リーグ/宮城)が対戦。聖和学園に先制を許した常盤木学園が、FW竹内瀬戸香の2ゴールで2−1と逆転勝利を収め、2019年以来3年ぶりの本大会出場権を獲得した。

前半は完全な聖和学園ペース。攻撃はもちろん、守備でも常盤木学園を圧倒する。突破力のあるサイドを使った攻撃で相手陣内に押し込んでいき、ボールを失っても素早く攻守を切り替える。選手が自由にポジションチェンジしながらボールを動かしていきたい常盤木学園だったが、人が動いてパスを引き出す時間を与えてもらえない。攻撃は単調になり、相手にとっては守備の的が絞りやすくなっていた。

そうした流れで試合が動く。前半28分、ペナルティーエリアへの侵入を許した常盤木学園がPKを献上。これをMF早瀬彩来が決めた聖和学園がリードを奪う。

同じ場所で行われた宮城県高校総体決勝と同じ経過だった。加えてこの日は試合内容でも聖和学園が圧倒的に優位に進めている。この時点で筆者は常盤木学園が逆転勝利を収めることになるとは想像することも出来なかった。だが、常盤木学園の選手たちはまったく焦ってはいなかったようだ。

「誰も下を向いてる人がいなかったし、声をかけ合ってできてた」。そう話した竹内の言葉を裏づける光景を筆者も目にしている。筆者の目の前でボールがタッチラインを割り、常盤木学園のスローインになったとき、選手が笑みを浮かべながら言葉を交わしていたのだ。”選手は焦らず、冷静にやれている”と感じた。

そして迎えた前半41分、常盤木学園はFW茂垣咲椰夏からのパスを右サイドで受けた竹内が思い切って右足を振り抜く。「前半を負け越した状態では終わりたくなかった」という竹内が放ったミドルシュートがゴールに吸い込まれ、試合は振り出しに戻った。

「ミドルシュートの練習をたくさんやってきたので、そのイメージが湧いていた。チャンスをものにできてよかった」と竹内。1−2で聖和学園に敗れた選手権宮城県予選決勝後からメニューに取り入れられていたミドルシュートの練習が実った瞬間だった。

後半は一転して、常盤木学園が主導権を引き寄せる。

「ハーフタイムでの話し合いで、いい方向に持っていけた。ビルドアップがうまくいったのと、右も左もサイドハーフが結構キーになってきて、 結構スペースあった。そこからチャンスも生まれてきたのかなと思います」(竹内)。

そのキーとなるサイドハーフ、竹内とMF伊藤璃胡は後半立ち上がりからポジションを左右入れ替えてプレーするなど、臨機応変なプレーが出始める。チーム全体としても選手一人ひとりの動きが増し、ボールを動かせていた。それはシュート数でも明らかだった。3本だった前半に対して、後半は9本に増えている。

後半30分にはPKを獲得。「本当はシュートを撃とうと思ったんですけど、ちょっと迷っちゃった末」に、竹内がペナルティーエリア内の茂垣へパス。この後のプレーで相手のハンドを誘う。このPKを竹内が決め、勝ち越しに成功。このまま逃げ切った。

(本文は下につづく)

|個々の成長がチームの成長に


常盤木学園は今夏、インターハイを開幕前日に辞退。その後、活動自粛などを経て、8月半ばに練習をスタートさせた。さらに主力のひとりであるDF保原ひなが怪我で戦線離脱する。実戦不足、戦力の低下が懸念されたが、この夏を乗り越えたチームはバージョンアップを遂げている。

この日2得点した竹内は、その1週間後に行われた選手権東北大会でもミドルレンジからFKを直接決めるなど、新たな得点パターンを確立。2得点にからんだ茂垣はポストプレーの精度が向上。ペナルティーエリアにはいってくる選手とのコンビネーションなど崩しのパターンが増えた。

保原が戦列を離れる前から右サイドバックとして機会を与えられていたDF澤登揚羽はスピードを活かしたオーバーラップからのクロスに加えて、中に絞ってパスの起点になるなどプレーの幅を広げ始めている。

例に挙げたのは一部に過ぎないが、選手の成長によりプレーの幅が広がり、攻撃のバリエーションが広がった。この日の2得点はいずれも選手の成長がチーム力のアップにつながったと感じさせるような形であった。

11月26日に開幕する皇后杯では、FC今治レディース(四国①/愛媛)との対戦が決まった(皇后杯組み合わせはコチラ)。前回大会で日テレ・東京ヴェルディメニーナが達成したベスト4をめざすと話した竹内はさらにつづける。「勝ち上がればWEリーグのチームとも当たると思うので、そこでプロ倒せるぐらいにレベルをもっとあげて、全国で戦いたい」。

初戦突破すれば伊賀FCくノ一三重(なでしこリーグ1部)、3勝すればちふれASエルフェン埼玉(WEリーグ)と対戦することができる。その目標を実現させるためには、この残り一ヶ月半(皇后杯終了時点)で個人としてもチームとしてもいかにアップさせるかにかかっている。