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[神奈川県高校総体]PK敗退の危機から這い上がった湘南学院が5年ぶりV

トピックス Takuma Omori(みなサカ編集長)

2024年5月6日(月・祝)
令和6年度 第13回 神奈川県高校総合体育大会 女子サッカー大会
湘南学院 1-0 星槎国際湘南
得点:[‪湘南学院]髙田夏葵(38分)


神奈川県高校総合体育大会 女子サッカー大会は6日、保土ヶ谷公園サッカー場で決勝が行われ、湘南学院星槎国際湘南が対戦。後半立ち上がりに先制した湘南学院が1-0で勝利を収めた。

5年ぶりの優勝を飾った湘南学院だったが、相模原弥栄との大会初戦(準々決勝)ではいきなり敗退の危機が訪れる。スコアレスのままPK戦にもつれ込み、PK戦では互いに5人蹴っても決着がつかない。サドンデスの末、5-4でなんとか退けた。

「弥栄戦では相手に合わせてしまった部分があって、自分たちの気持ちもどんどん下がってしまった。次の藤沢清流戦に向けて、弥栄戦の結果が全てじゃないっていうのをしっかりチームで話し合えた。そこは成長できたかなと思ってます」。

キャプテンのMF山村美和子(3年)が振り返った通り、藤沢清流との準決勝では気持ちの強さを見せた。前半7分にいきなり先制点を許すが、その2分後に山村がPKを決めてすぐさま追いつく。その後も積極的にゴールをめざし、後半に山村、FW五十嵐捺(3年)が加点。3-1と逆転勝利を収めている。



そして迎えた決勝戦。星槎国際湘南とは新人戦でも決勝で顔を合わせ、2-0で勝利している。

「星槎のつなぐサッカーに対して、自分たちがはめることを中心に練習をしてきた」(髙田夏葵)。4-3-3の星槎国際湘南に対して、湘南学院もシステムを合わせて臨む。準決勝ではMF寺田さくら(2年)をアンカーに置いた4-3-3だったが、決勝ではインサイドハーフのMF髙田夏葵(3年)が下がり目の位置で相手のインサイドハーフに対応した。

試合は星槎国際湘南のキックオフで始まる。立ち上がりからボールを保持して湘南学院陣内に押し込んでいく。湘南学院はCF五十嵐とトップ下の河原桃香(3年)が相手のCBふたりとアンカーを見ていたが、数的優位の相手にボールを運ばれてしまう。その後、中盤に下がるなど相手が主導権を握るなかでプレスのかけ方を試行錯誤する。前半を無失点で終えたことが後半につながった。

0-0で折り返した後半は湘南学院のキックオフで始まる。湘南学院は前線からプレスをかけ、試合の入りから主導権を引き寄せる。そして後半開始早々の3分、DF木下明海(3年)が放った浮き球に頭で合わせたMF髙田の先制点が生まれる。

「前半は相手にもチャンスを作られてましたけど、0-0で行けた。後半はうちのキックオフだったので、立ち上がりから相手のセンターバックに蹴らせないようにということは言っていました。最初の5分でしっかり自分たちの流れ作るというのは、ここ一年ぐらいずっとやってきていることで、少しずつ浸透してきた」と、木村みき監督。先制点はここまで積み上げてきたことが実を結んだ瞬間だった。

先制後もラインを押し上げてプレスをかけていく湘南学院に対して、ビルドアップを封じられた星槎国際湘南は相手を見ながら次の手を打ってくる。後半は風上に立っており、最終ラインには精度の高いロングキックを蹴れる選手もいる。DFラインの背後を狙って、ロングボールを入れてきた。

湘南学院はGK太田香奈(3年)の素早い飛び出し、最終ラインのカバーリングなどでしのぎ、シュートを打たせない。アディショナルタイムも含めたラスト10分の猛攻もしのぐ。公式記録によると、星槎国際湘南の後半シュートはゼロだった。プレスをかけていく前線と、カバーリングや体を張ってゴールを守るDF陣。互いに補い合い、両者が上手く噛み合った無失点勝利だった。

チームメイトとともに優勝カップを掲げるキャプテン・山村美和子(中央) チームメイトとともに優勝カップを掲げるキャプテン・山村美和子(中央)

「ハーフタイムの時、ここでやるしかないっていうので、みんながスイッチを入れて(試合に)入ることができた。入りのところでシュートを打ったりとか、いいプレーができてたので、それが点に結びついて勝利できたのかなって思います」。

そう試合を振り返ったのはキャプテンの山村である。1年時からレギュラーとして試合に出続け、神奈川県国体選抜にも選ばれるなど経験を積んだ彼女は、最終学年を迎えてキャプテンに就任した。

「正直、自分がキャプテンで平気なのかなっていう気持ちはあった。やっぱり選ばれたからにはやらなきゃいけないし、チームの成績を上げるためにも自分がやらなきゃチームも成長できない。やってやろうっていう気持ちが強かったです」と、キャプテンに指名された時の想いを語る。

その強い想いを感じさせたのが藤沢清流との準決勝である。前述した同点のPKを含む、2得点を挙げている。2点目は山村自身が仕掛けて奪ったコーナーキックのこぼれ球を押し込んだ得点だった。このプレーを筆頭に、幾度となくドリブルを仕掛けてゴールに迫っていく。前を向かせたら誰にも止められないと感じさせるような気迫に満ちたプレーだった。山村は自身にとっての今大会を次のように振り返る。

「新人戦の時は自分個人だけのサッカーになってしまって、チームや周りを見れてなかったんですけど、今回、関東大会に出場するという中で、自分のプレーだけではなくてチームを支えられることができていた。そこは成長したかなって思います」。

チーム、選手が成長を遂げることで関東大会出場権を獲得した湘南学院は、10年ぶりのインターハイ出場をかけて関東大会(5/25-27@千葉県)に挑む。
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