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[選手権]得意のドリブルで切り開いた再逆転勝利!常盤木学園FW伊藤璃胡は、「ポゼッションも得意です」

トピックス Takuma Omori(みなサカ編集長)

[選手権1回戦 常盤木学園 4-2 霞ヶ浦]

第31回全日本高校女子サッカー選手権大会は30日、三木防災公園などで1回戦が行われた。みきぼうパークひょうご第2球技場 第1試合では常盤木学園(東北①/宮城)と霞ヶ浦(関東⑥/茨城)が対戦。開始早々に先制点を挙げた常盤木学園だったが、霞ヶ浦に逆転を許すと、そこから3得点を奪って再逆転勝利を収めた。

開始早々の前半4分、常盤木学園はFW竹内瀬戸香(3年)の浮き球に走り込んだMF伊藤結菜(3年)がゴールネットを揺らす。ロースコアで関東予選を勝ち上がった霞ヶ浦に対して、早い時間に先制したことにより、試合を優位に進められるはずだった。だが、ここからが苦しい戦いの始まりだった。

機転の効いたパス1本で生まれた先制点だったが、この後もシンプルにゴールをめざす形が多く、常盤木学園本来のサッカーを展開できない。霞ヶ浦は前半17分にMF折田澪(2年)の得点で試合を振り出しに戻すと、後半開始早々の6分にDF岡田知里(3年)のゴールで勝ち越しに成功する。

逆転を許した常盤木学園だったが、前半途中から徐々にボールをつなぎ始め、修正を図っていた。1−1で折り返した後半、常盤木学園の反撃が始まった。霞ヶ浦が勝ち越し点を挙げた5分後、常盤木学園はGK中屋音葉(3年)が右サイドへロングフィード。このボールに走り込んだ竹内が相手GKの位置を見て、すかさずロングシュートを放つ。これが無人のゴールに吸い込まれ、2−2のタイスコアに。



勝利への道筋を切り開いたのはFW伊藤璃胡(3年)のドリブルだった。

後半21分、竹内からのパスを左サイドで受けると躊躇なくドリブルを開始する。対面のサイドバックをかわしてペナルティーエリアに侵入すると、カバーに出てきたセンターバックも抜き去り右足を振り抜く。そこに飛び込んできたMF高塚映奈(3年)がブラインドとなり、ボールはゴールに転がり込んだ。この得点が決勝点となり、その9分後には高塚がダメ押しの4点目を決めている。

「自分がカットインで内側に入って狭くしていた。サイドから行けと言われてたので、みんなも自分にボールを集めてくれた。1枚剥がして、そこから縦に行って、 最後はシュートで終われたんでよかったです」(伊藤璃)。

伊藤璃の武器は左サイドで縦に仕掛けてのクロス、カットインして敵陣深くまで侵入してからのラストパス、そしてシュートにある。時間もスペースもないゴール前の密集でもわずかな道をみつけて切り込んでいく。一方、常盤木学園は選手がポジションチェンジを繰り返しながらボールを動かしていくスタイル。サイドアタッカーにも動揺の動きが求められる。チーム戦術に合わせながら自身の特長を発揮する難しさはなかったのか?

「自分はサイドも得意だけど、内側に入ってパスを回すのもポゼッションも得意です。外(サイド)から見てて、サイドの選手が一番見えると思う。空いたスペースを意識して見ていて、空いたら自分が入るようにしていた。 ボールを落ち着かせられるようなゲームができればいいなと思って内側に入ってます」

ドリブラーという印象を持っていた筆者には意外な答えだった。だが本人の言うとおり、この試合でもピッチを縦横無尽に動き回っている。右サイドの竹内と入れ替わることはもちろん、中央に入ってきたり、時には最終ライン近くまで降りてきてビルドアップに加わることもあった。

チームが現在のプレースタイルに舵を切ってから一年。攻撃の組み立て、仕掛けからフィニッシュまで、あらゆる局面で自身の特徴を存分に発揮しながら常盤木学園のサッカーを体現する。