[高校総体関東大会]「絶対勝つという思いだけで止めた」、日本航空GK田中至野がPKセーブで2連覇導く
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本大会のシード権もかかった日本航空(山梨)と星槎国際湘南(神奈川)の決勝戦。日本航空を大会2連覇に導いたのは、終了間際の延長後半8分に投入されたGK田中至野(3年、白岡SCL)である。
本来、日本航空の正GKは田中だった。昨年のインターハイでは全2試合に先発フル出場。冬の選手権でも2回戦で先発フル出場している。だがこの関東大会の前に怪我してしまい、スタートから出場することが不可能となる。それでも控えGKとしてメンバー入りを果たすと、堀祥太郎監督からはPK戦になったら行くからと伝えられていた。1回戦(vs 宇都宮文星女子)、準決勝(vs 前橋育英)はそれぞれ2ー0、1ー0で勝ち、出番はやってこない。「自分が出なくても勝ってほしい」。チームの勝利を願いながらピッチ脇で見守っていた決勝戦。試合は0ー0のまま動かない。そして延長終了間際、ついに声がかかる。1年生GK中嶋莉子(スフィーダ世田谷FCユース)との交代でピッチに送り込まれた。
「自分の番が来た時にいろんな人の顔が浮かんだ。まず親だったり、応援席にいる選手の子たちだったり、堀監督だったり、たくさんの人の顔が浮かんだ。ピッチに出られることへの感謝と、絶対PKになるので、絶対止めてやるぞって思いました」と、たくさんの人たちの想いを背負ってゴールマウスに立つ。

雨足が強まり、難しい状況でもあったPK戦は劣勢に立たされた。先攻の日本航空は1人目、2人目が成功。後攻の星槎国際湘南も1人目、2人目が田中の逆を突いて成功する。日本航空は3人目が失敗、田中は相手の3人目のコースを読んだが惜しくも決められてしまう。さらに互いに成功して4ー4となり、星槎国際湘南の5人目を迎える。
「駆け引きですね。心と心、絶対に負けられないので、止めるって思いだけで、絶対に勝つって思いだけで止めました。蹴る直前なんですけど、いつもどっちって勘でわかる時があって。止めました」。決められたら敗戦という崖っぷちに追い詰められた日本航空だったが、このシュートを田中がコースを読んで横っ飛び。余裕を持ってはじいてキャッチする。さらに日本航空が6人目、7人目を成功すると、星槎国際湘南7人目のシュートがポストを直撃。6ー5で日本航空に軍配が上がった。
「きっちり狙い通り仕事をしてくれました。今回はこういう役回りで、彼女も悔しかったと思うんですよ。(今大会における)彼女の役割はこうだよっていうのをしっかり理解もしてくれた。その思いを切らさずやってくれたんで、PKも止められたんかなっていうところです」(堀監督)。
インターハイに向け、ゼロからのスタート。92人の部員が横一線に並び、メンバー入りを争う。「粘り強くボールに向かって、絶対にゴールを決めさせないっていう気持ちが誰よりもあります。(メンバーに入ったら)自分も声をいっぱい出して、絶対にゴールを決めさせないっていう気持ちでやっていきます」。20人の登録メンバー入り、そしてレギュラー奪還に向けて、新たなスタートを切る。