[高校総体関東大会]星槎国際湘南MF宮本和心、仲間に助けられた10番が恩返しの一発でチーム救う
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チームを敗戦の危機から救ったのは、前日に仲間から助けられた背番号10だった。
1回戦で優勝候補の筆頭・十文字(東京)をPK戦の末に下した星槎国際湘南(神奈川)は、準決勝で鹿島学園(茨城)と対戦。試合は前日の1回戦からスタメン全員を入れ替えた鹿島学園がアクセル全開でプレスをかけていく。そして前半16分にはスペースに抜け出したFW増田帆花(3年、GRAMADO FC TOKINAN)に先制点を奪われた。
いきなりのビハインドを背負った星槎湘南はすかさず動く。失点から1分後、ベンチに置いていた10番・MF宮本和心(3年、五戸スポーツクラブ)を投入する。センターフォワードの位置にはいった宮本は流動的に動いてボールを引き出しながら、積極的にシュートも狙っていく。
前半終了間際の35分にFKからクロスバー直撃のシュートを放つと、後半13分には右サイドでDFをかわしてシュートに持ち込み、同27分にもFKを直接狙う。いずれもわずかに枠をとらえられなかった。
刻一刻とタイムアップが近づくなか、星槎湘南に絶好のチャンスが訪れる。後半アディショナルタイム。自陣からのロングボールに宮本が走り込む。正確なトラップからペナルティーエリアに侵入したところで相手DFに倒されて、PKを告げる笛が鳴る。歓喜の輪に包まれるなか、「冷静に蹴れた」と、宮本自身が右足で思い切りよく蹴り込む。試合は土壇場で振り出しに戻った。
「ディフェンスがボールを持った時に、自分が左サイドから流れてきた。 自分もまだ左サイドに残ってて、ちょっとポジション悪かったんですけど、ここだと思って出してくれた選手とも目が合って、そこに出してくれた」と、宮本はPK奪取のシーンを振り返った。
10分ハーフの延長戦でも均衡はすぐに破れた。延長前半4分、星槎湘南がコーナーキックを獲得する。キッカーは宮本。右足で山なりのボールを蹴ったがはね返されて、二回目のコーナーキック。「ファーに蹴ろうか迷ったんですけど、流れちゃったらもうないなと思った。ニアに蹴って、最悪ファーに流れても、まだボールがあるんでいけるかなと思ってニアに蹴った」と、ニアへ速いボールを入れると、CB鈴木碧華(3年、SEISA OSAレイア湘南FC U-15)が頭で合わせる。これが決まって勝ち越しに成功。この得点が決勝点となり、星槎湘南が2ー1で逆転勝利を収めた。

宮本はこの日、並々ならぬ思いで試合に臨んでいた。
「昨日の試合で自分のミスから失点して、チームを苦しい思いさせちゃって。だから今日途中から出たら自分が流れを変える、自分がやるっていう気持ちでした」
昨日の試合とは十文字との1回戦。1ー0とリードして迎えた後半35分、途中出場していた宮本が相手GKと1対1の状況を迎える。ラストワンプレーという時間帯だったが、「キープでも良かったんですけど、相手とほぼ1対1の状況で、シュート打ちに行っちゃって」と、シュートを撃ちにいく。
だがそのシュートをキャッチした十文字GK中村菫(3年、日テレ・東京ヴェルディメニーナ)がすかさず左へ展開すると、ボールはあっという間にゴール前まで運ばれ、MF三宅万尋(3年、十文字中学校)に同点ゴールを決められた。試合の流れは一気に十文字へ傾いたかと思われたが、星槎湘南は驚異的な粘り強さで追加点を許さない。PK戦ではGK内海佑南(2年、SEISA OSAレイア湘南FC U-15)がPKストップするなど、4ー2で制した。
”ボールキープするべきだった”と言うのは簡単だ。だが、心理面、コンディションなど様々な要素が加わることにより、異なる判断をしてしまうこともあるだろう。だからこそサッカーには互いを補い、ミスをカバーできる11人の仲間がピッチにいる。「2日連続で悪くなる選手じゃないから」(柄澤俊介監督)と指揮官も厚い信頼も揺るがない。自身初となるインターハイでも仲間を助けてチームを勝利へ導く。