minasaka.net

日本女子サッカーの"今"が分かるWEBマガジン「みんな@サッカー」

[選手権]前半の無失点が示したチームの成長 ー 明桜キャプテン・長谷川日保が託した次世代への想い

トピックス Takuma Omori(みなサカ編集長)
当サイトのリンクに広告が含まれています。

2024年12月29日(日)
第33回全日本高等学校女子サッカー選手権大会 1回戦
星槎国際湘南 3-0 ノースアジア大学明桜
得点:[星槎国際湘南]後藤瀬里葉(45分)、松崎茉怜(63分)、石平愛菜(73分)




12月29日に行われた第33回全日本高校女子サッカー選手権大会1回戦で、ノースアジア大学明桜(秋田)は星槎国際湘南(神奈川)に0-3で敗れた(試合は40分ハーフ)。

★★★

「スライドしたり、限定をかけてから取り切るという形を何週間も前から練習してきました。それを試合で出せたのはプラスなんじゃないかなと思ってます」。そう振り返ったのはキャプテンの長谷川日保(3年)である。

試合は序盤からボールを保持する星槎に対して、明桜はDFラインまでプレスをかけていく。それをかいくぐった星槎がパスをつないで前進すると、明桜は徐々にラインを下げていった。しかし、コンパクトな陣形を保ち、集中力を切らすことはなかった。

ピッチを広く使いながらボールを動かす星槎に対して、明桜もしっかりとスライド。サイドチェンジのボールを受け手の手前ではね返していく。DFラインの背後を狙ったボールには、GK三浦晴(2年)が素早い飛び出しを見せる。シュートも打たれたが、ゴールを割らせることなく前半を折り返した。

「(前半を)0-0に抑えられたことは本当に嬉しい。その中で得点を決めきれなかったのは悔しいんですけど、前半0-0という結果を自分たちが残したことは本当に嬉しいです」と、長谷川は喜んだ。

★★★

一方、後半は悔しさが残る内容になってしまった。後半開始直後の41分には相手陣内でボールを奪うと、オーバーラップしたDF宇沼愛菜(2年)がFW中山晴楠(2年)のパスを受けてゴールに迫っていく。後半も良い形で試合に入った。だが直後の44分、スペースを突かれて最後は星槎のFW松崎茉怜(3年)に先制点を決められてしまう。

その後も星槎の攻勢がつづいたが、明桜も立て直しを図ってふたたび前からプレスをかけていく。52分には長谷川がボールを奪い、ルーズボールを拾ったMF小松奈保(1年)のパスに走り込んだ中山がシュートに持ち込む。つづく61分にも相手のバックパスを拾った長谷川がゴールに迫るが、いずれも相手GKに阻まれる。決定機を作りながら決めきれず、逆に63分には追加点を奪われてしまった。

長谷川は次のように語る。「1点入ってから前にかけるという形にはなってしまったんですけど、やっぱり失点する前から前からかけたかった。相手が結果を残してるチームだったので、ちょっと身構えちゃった部分あるんですけど、最初からもっとできてたら良かったです」。攻撃的な守備でボールを奪うことができていた後半は勝機もあっただけに、悔しさが残った。

コミュニケーションをたくさん取り、行動に移していくことを意識した。その成果を全国の舞台で発揮した。 コミュニケーションをたくさん取り、行動に移していくことを意識した。その成果を全国の舞台で発揮した。

試合には敗れた明桜だったが、その内容はこの一年間の成長を感じさせる内容だった。

2024年6月のインターハイ東北大会では、準決勝で常盤木学園に0-5で敗れている。先制点を許して前半を折り返すと、後半にはさらに4失点を喫した。しかし、夏以降の練習で守備の練度を高め、全国大会の舞台では強豪を相手に粘り強い守備を見せた。チームとしての成長が内容にも表れていた。

「常盤木戦でもスライドの守備は練習してたんですけど、でも結構時間をかけて練習してきたので、その中でこういう守り方がもっとインターハイの時より上達した守備ができた」と、長谷川も手応えを口にする。

★★★

9年ぶりの全国大会を戦い抜いた明桜のキャプテンが次世代に託したのは、「コミュニケーション」の大切さだった。感じたことをすぐに伝え、それをもとに行動することが大事だと語る。

「思ったことをもっとちゃんと伝えて、その伝えたことをしっかり次につなげられるかが鍵になってくると思う。今年は伝えて行動することができるようになってきてたので、来年は思ったらすぐ伝えることをもっと意識してほしいなと思います」(長谷川)。

長谷川を含む3年生3人がこの試合を最後にチームを去る一方で、より多くの新1年生が加わり、競争がさらに激しくなるだろう。そんな中で、キャプテンが説いた「コミュニケーション」の重要性は、チームの結束力を高める柱になるはずだ。この試合を土台として、来シーズンの明桜がどのような進化を遂げるのか、期待が高まる。