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[選手権東京都予選]修徳FW那須野陽向、磨き上げたシュート力でゴールを量産するオレンジ軍団の大黒柱

トピックス Takuma Omori(みなサカ編集長)


2023年9月24日(日)
第32回全日本高等学校女子サッカー選手権大会東京都予選 決勝
十文字 1(3PK4)1 修徳
得点:[十文字]三宅万尋、[修徳]那須野陽向


延長、PK戦までもつれこんだ十文字と修徳の決勝戦。先制点を許す苦しい展開を打ち破り、その後のPK勝ちにつなげたのは、オレンジ軍団の絶対エース・FW那須野陽向(3年、FC町田ボニータ)の一発である。

規定の80分を終わってもスコアは動かず、試合は10分ハーフの延長戦に突入する。その立ち上がり、延長前半2分に試合の均衡を破ったのは十文字だった。ビハインドを背負ってベンチに戻ってきた修徳の選手たちだったが、「まだまだいけるって前向きな声が多かった」という。「自分たちの方が攻めてチャンスがある感覚だった。まだまだいける」と、那須野も気持ちを切り替え、延長戦の後半に臨む。

挽回の機会はすぐにやってきた。延長後半4分。修徳はMF筒井まつり(2年、JFAアカデミー福島)が左サイドへ展開。このパスは十文字に阻まれるが、クリアミスしたボールをピッチ中央にいた那須野が拾う。シュートするのに迷いはなかった。

「もう一個運ぼうと思ったんですけど、自分の体勢が整った形で打った時に相手に止められる印象があった。早めに打とうと思って、トラップした瞬間に顔上げたらコースが空いてたので打ちました」。右足から放たれたシュートは、相手GKの頭上を射抜いてゴールに突き刺さった。

その後も攻め続けた修徳だったが勝ち越し点は奪えず。つづくPK戦を制して、3年ぶりの優勝をつかみ取った。

インターハイ東京都予選決勝では十文字に1-6の大敗を喫した修徳。選手権予選に向け、自分たちの強みを伸ばすことを意識して練習を積んできたという。

「中盤の白城、まつり(筒井)はラストパスの精度が高くて、スルーパスが上手い。そういう選手が持った時にサイド(の選手)や自分が動き出すことを意識しました。中盤の選手が持ったときの裏への抜け出し。あとは最後の決定力、シュートを意識して練習してきました」(那須野)。

今年の修徳は中盤に技術の高い選手が多い。アンカーを務めるMF白城璃々花(3年)、インサイドハーフのMF筒井などから決定的なパスが出てくる。付け加えるならば、右SB高野彩音(2年)とCB加藤麗(3年)も質の高いクロス、フィードを持っている。パスの出し手が数多くいることはこのチームの強みである。

それらのパスの受け手であり、ゴールを決める役割を担っている那須野。1年の時から試合に出ているが、最終学年を迎えている今年の成長には目を見張るものがある。練習してきたというシュートの決定力、とりわけロングレンジのシュートの精度の高さがピカイチだ。この日のゴールだけではない。

東久留米総合との準々決勝。左サイドでボールを持つと、顔を上げすかさず右足を振り抜く。シュートは相手GKの頭上を越えて、ゴールに吸い込まれていった。「キーパーがシュートを打とうとしても下がらないという印象があった。ボールを持ったら打とうと決めていました」と、那須野は振り返る。

関東大会の準決勝・暁星国際戦でも高野からのパスを受け、GKの頭越しにロングシュートを決めている。十文字との決勝では1得点2アシストの活躍。0-2で折り返した後半、2つのゴールをお膳立てして試合を振り出しに戻すと、自身のボール奪取からミドルシュートを叩き込み、3-2の逆転勝利に導いた。

コンスタントに得点を挙げるだけでなく、チームが最もゴールを必要とするときに決めてくれる。”勝負強さ”という言葉だけでは物足りなさを感じてしまう。それほど今の那須野は充実している。選手権でもその驚異的な決定力でどこまで道を切り開いていくのか。期待したい。