[皇后杯]OSAレイア湘南がなでしこ1部を撃破。落とし込んだ戦術と全員守備で番狂わせを成し遂げる
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[皇后杯1回戦 日体大FIELDS横浜 0-1 SEISA OSAレイア湘南FC]
なでしこリーグ2部入替戦の敗退から2週間。喉から手が出るほど欲しかったゴールがジャイアントキリングをもたらした。
皇后杯 JFA 第43回全日本女子サッカー選手権大会は27日、28日に各地で1回戦が行われた。初出場のSEISA OSAレイア湘南は、藤枝総合運動公園サッカー場で日体大FIELDS横浜(なでしこ1部)と対戦。神奈川県勢同士の顔合わせとなった一戦は、64分に遠藤彩椋が決めた先制点を守りきり、1-0で湘南が逃げ切った。
湘南はこの2ヶ月、なでしこリーグ2部昇格をかけた戦いに身を投じていた。9月に行われた予選大会を2位通過すると、予選突破した3チームになでしこリーグ2部最下位の岡山湯郷Belleを加えた4チームによる入替戦に臨む。上位3チームが来季のなでしこリーグ2部で戦うことができるというレギュレーションだったが、湘南は2敗1分で最下位。3試合ノーゴールで敗退した。
「気持ちは落ちてたんですけど、皇后杯となでしこリーグ2部入替戦は全然違う大会だし、皇后杯では格上のチームと対戦できるチャンスがある。どんな試合でも自分たちがやりたいサッカーを見せて、ひとりでも多くの人を魅了したい」。キャプテンマークを巻く夏目萌由は話す。
チームにも変更が加えられた。柄澤俊介監督に替わって、2014年に福岡J・アンクラスを率いた経験のある対馬武志コーチが指揮をとる。「やることの根本は変わらないんですけど、戦術的な部分を結構みんなで落とし込んで、この初戦を勝つことを目標にやってきた。スタメンもイチからちゃんとメンバー選考をしてくれて、このメンバーを選んでいるので、自信を持って迎えられた」(夏目)
新たな気持で迎えた初戦、湘南はこの2週間で積み上げてきたものを立ち上がりからピッチで表現する。
前線から連動してプレスをかけ、セカンドボールも拾って、日体大陣内でボールを保持。両サイドバックも髙い位置で攻撃に絡み、試合を優位に進めていく。とりわけ右サイドではSB鈴木真央が起点となり、チャンスが生まれた。
前半3分には鈴木真央のフィードに抜け出した長山萌花がドリブルでペナルティーエリアに侵入。その1分後には夏目のフィードに抜け出した高橋沙矢香が折り返すと、遠藤と長山がゴール前に走り込む。
「今までクロスが上がっても1枚とか2枚しかいなくて、それをサイドバックまで出していく。ゴール前の崩しの部分は練習してきたので、今日はみんなを前に前に出せたのかなと思います」(夏目)
湘南が試合のはいりに成功した一方、日体大は早々に修正を余儀なくされる。前半も半ばを過ぎた頃、3バックから4バックに変更。相手のサイド攻撃をケアすると同時に、前線からのプレスも強化した。これにより、湘南のビルドアップを封じ込め、ボール保持率も高めて、シュートチャンスを作り出していく。日体大が流れを引き寄せて前半を終える。
後半もボールを握る日体大に対して、湘南は背後のスペースを狙っていった。だが高さがあり、カバーリングもしっかりしている日体大のDFラインをなかなか越えられない。この最終ラインでのせめぎ合いがつづく。
56分には右スペースを長山が抜け出すが副審の旗が上がる。長山は構わずボールを蹴って主審から注意を受ける。苛立ちを隠せない湘南。その2分後にはDFの背後を突いた遠藤が、その直後にも左サイドを駆け上がった阿久井泉がシュート。だが、前者は枠を捉えられず、後者はGKに阻まれた。
ようやく試合が動いたのは64分。中盤から鈴木陽笑がGKと最終ライン間のスペースへラストパスを放つ。今度は間一髪で抜け出した長山がドリブルでペナルティーエリアに侵入すると、GKのファールを誘ってPKを獲得した。
このPKのキッカーをまかされたのが遠藤だ。数分前に決定的なチャンスを外している遠藤だったが、このPKを冷静にゴール右隅に決める。湘南の10番・塩野海風の指定席だったCFでの抜擢に見事に応え、先制に成功する。
待望のゴールを奪った湘南だったが、安堵している暇はない。ここから日体大の猛攻が始まった。86分には富岡千宙のシュートがクロスバーを直撃。88分、89分にも金子麻優、三浦晴香が決定的なチャンスを迎える。試合が終わりに近づくにつれ、日体大の攻撃は激しさを増していく。
「一枚行ったらしっかりチャレンジ&カバーするというのを意識した。あとは一発で抜かれない。やられるのはしょうがないからしっかりついてきてという指示は、特にサイドバックには出していました。そこは粘り強くやってくれた」(夏目)
GK浅越千裕が好守を見せ、夏目を中心としたDFラインが体を張る。投入されたベンチメンバーも労を惜しまずピッチを駆け回り、チーム全体の集中力と運動量を落とさない。チーム全体でゴールを守った末、ついに歓喜の瞬間が訪れた。
サッカー人生でこんなにも守備に奔走したことがあったのだろうかと尋ねると、夏目はこう話した。
「高校(星槎国際湘南)で日ノ本学園、常盤木学園とやったときも最後は押し込まれる時間が多かった。それで失点してPKにもつれ込まれて負ける試合を多く経験しているので、今日はキーパーやサイドバックの選手に助けられました」
2回戦で対戦する日テレ・東京ヴェルディ・メニーナには、関東大会で敗れている。「0-5で負けてるので、リベンジを目標にやってきました」と試合後に話していたが、4日に行われた2回戦は1-5で敗戦。目標を果たすことは出来なかった。今季は5日の関東リーグ最終戦を残すのみとなった。連戦だが勝って有終の美を飾りたい。