minasaka.net

日本女子サッカーの"今"が分かるWEBマガジン「みんな@サッカー」

[北海道高校総体]大谷室蘭MF白濱彩夏、PK勝利へ導く貴重な同点弾!新たな決意を胸に、未来を切り拓く

トピックス Takuma Omori(みなサカ編集長)

2024年6月18日(火)
第13回 北海道高等学校総合体育大会 準決勝
北海道大谷室蘭 2(5PK4)2 札幌大谷
得点:[大谷室蘭]樋口夢來(9分)、白濱彩夏(49分)、[札幌大谷]野辺千尋(5分)、左近仁蘭(45分)



インターハイは北海道・室蘭で開催。洞爺・室蘭・登別のホテル予約はコチラ

インターハイの出場権がかかった北海道高等学校総合体育大会の準決勝。札幌大谷と対戦した北海道大谷室蘭は、前半5分に失点したもののその4分後にDF樋口純怜(1年)が同点ゴールを挙げる。だが試合を振り出しに戻した後も札幌大谷にボールを保持される時間が多く、苦しい展開が続いていた。

「ディフェンスが頑張ってくれているので、とりあえず一つのチャンスを掴まないとなと思っていました」。

PK勝利に導く、同点ゴールを呼び込んだのは、高い技術と落ち着きを兼ね備えるFW白濱彩夏(1年)である。

白濱にとって最初のチャンスは前半15分。左SB成田結理(2年)から縦パスを引き出し、中央からサイドに流れてくる。そのままドリブルでペナルティエリアに侵入するが、相手DFの必死の守備にシュートには持ち込めない。

つづく前半31分には右SB木村愛(3年)がアーリークロスを放つ。先に反応したのは相手DFだったが、巧みに相手とボールの間に入り込んでマイボールにすると、そのままドリブルでゴールに迫る。飛び出してきたGKもかわしてシュートを試みるが、打ち切ることはできなかった。

後半10分にはふたたび札幌大谷にリードを奪われるが、失点からわずか4分後に絶好のチャンスが訪れる。

大谷室蘭はFW横田純怜(2年)が右サイドからドリブルで切り込んでいく。ペナルティエリアに侵入してゴールに迫ったが、飛び出してきた相手GKに阻まれる。このプレーのこぼれ球に走り込んできたのが白濱である。

「力んだら外しちゃうと自分でわかっていたので、力まずにゴールを見て打ちました。落ち着けない時もあるんですけど、今日は調子が良かった」と、冷静にゴールネットを揺らした。

「ゴールが近くなったらシュートを意識するというのを練習からずっとやっていたんです。パスで逃げないでシュートをイメージする。それがよく出せたなと思います」と、ゴールを振り返った白濱は6月15日が誕生日。16歳になって初めての公式戦で貴重な同点弾を叩き出した。

その後はスコアが動かず、10分ハーフの延長戦の末、PK戦に突入する。4人目のキッカーに指名された白濱だったが、「緊張しました。PK苦手なんですよ。心臓とかドキドキしちゃって、いつも通りできなくなっちゃう」と、緊張していた。前日練習でも3本中2本を外していたという。それでも見事に成功。この日二度目のゴールネットを揺らし、苦手意識も払拭している。

ドリブルで侵入する白濱彩夏 ドリブルで侵入する白濱彩夏

室蘭出身(室蘭アイスバーズU-15)の白濱にとって、地元の高校に進学するのは自然なことだったのかというと、実は大きな転機となる出来事があった。

「本当は道外に行くつもりでした。石川県に行くつもりだったんですけど、地震で行けなくなってしまった」(白濱)。

今年の元日に起こった能登半島地震が彼女の運命を大きく変えた。2024年度に創部した日本航空石川に進学する予定だったが、能登空港に隣接した場所にある同校も被災する。石川での部活動はもちろん授業をすることもできなくなる。最終的に東京都青梅市にあるキャンパスに一時的な移転をすることになったが、なかなか決まらない不安もあり、進学先を変えることとなった。

「自分にとっても道外っていうのは大きなチャレンジでした。それは出来なくなってしまったんですけど、地元でも大谷室蘭という強いチームがある。地元で自分なりにも出来ることがたくさんある。技術をもっと磨いて、北海道のタイトルを全て獲れるようなチームになりたいと思って入りました」と、大谷室蘭に進学した決意を語る。

突然の進路変更を強いられた白濱だったが、そこでつかんだのは地元・室蘭で開催されるインターハイの出場権だった。大会に向けた決意を次のように話す。

「相手に飲まれることは絶対にされないようにしたい。自分はスピードを武器に相手の裏を突いたりするのが得意なので、自分から引き出したり味方に引き出してもらったりしつつ、相手の裏を突いていきたい」。

運命に振り回された白濱だが、この日の試合のように自らのプレーで未来を切り拓いていく。