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[インターハイ]2回戦敗退も強豪相手に好勝負を演じた神戸弘陵。選手権に向けた糧を得た夏の舞台

トピックス Takuma Omori(みなサカ編集長)

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2024年7月31日(水)
令和6年度 全国高等学校総合体育大会 2回戦
神戸弘陵学園 1-2 大商学園
得点:[神戸弘陵]山田愛実(41分)、[大商学園]中野梨緒(35+2分)、笠崎愛乃(48分)




神戸弘陵(兵庫)は7月31日、インターハイ2回戦で大商学園(大阪)と対戦。前半終了間際に先制点を許したが、後半6分にコーナーキックからFW山田愛実(2年)のゴールで試合を振り出しに戻す。だが、同13分にふたたび勝ち越し点を許し、1-2で敗れた。

前半、主導権を握っていたのは大商学園だった。神戸弘陵が誇る2トップ、鈴木梨花(2年)と山田の走力を活かした攻撃に対して、左SB中野梨緒(2年)を高い位置に上げ、2トップに呼応して突破を仕掛けてくるMF横井睦(2年)を抑えると同時に神戸弘陵陣内に押し込んでいった。

神戸弘陵は前半シュートゼロに終わったが、大商学園に対してもシュート2本しか許していない。だが前半アディショナルタイム、クロス気味に放たれたボールがゴールインするやや不運な形で失点する。

「早い時間で失点すると勢いが出てくるチームというのはわかっていた。チームとしても失点を簡単にしないことは、ずっとミーティングでも言っていた。そこに関してはしっかり後ろは頑張ってくれたと思う」と松下昂佑監督。最小失点で抑え、ハーフタイムを迎えた。

神戸弘陵は後半6分にFW山田愛実のゴールで試合を振り出しに戻す。 神戸弘陵は後半6分にFW山田愛実のゴールで試合を振り出しに戻す。

巻き返しを狙う神戸弘陵は後半、横井をフォワードに上げ、山田をサイドへポジションチェンジする。「サイドから攻めて、点を取って、同点まで持っていったらチャンスができると思うし、点を取ることを意識しました」(鈴木)と、サイド攻撃の意識を高めて得点を狙いに行く。

同点ゴール(後半6分)のきっかけは鈴木の守備からだった。後半4分、自陣で山田とともに挟み込んでボールを奪うと、ドリブルで運んで前方の横井へパス。横井の突破は相手DFに阻まれたが、そこで得たスローインがDF佐治椋花(3年)のコーナーキックにつながり、山田の同点ゴールが生まれている。

後半7分には自陣左で鈴木、DF藤井結菜(3年)とつなぎ、藤井のパスに横井が抜け出すがオフサイド。その後もサイドからペナルティエリアへの侵入を試みるが、シュートにはつながらない。ここをしのいだ大商学園が後半13分に勝ち越し点を奪い、この得点が決勝点となった。

「パワーもスピードもすごくあるパワフルなチームというのはリーグ戦でもわかっていた。ただ構えすぎず、受け身になりすぎずに、しっかり前向きな守備、前向きな攻撃を意識して臨んだんですけど。自分たちの少ない時間帯の中で、もう少し畳み掛けられるかどうかが課題です。あとは単純に1人1人がもう少しタフに、フィジカル的にも戦えるようになることは、ああいうチームを上回っていくためには大事なのかなと思いました」と、松下監督は試合を振り返る。

松下監督はさらに続ける。「押し込めたときにサイドアタックだったり、そこで疲弊せずにゴール前に枚数をかける。少ないチャンスの中でも、畳み掛ける時間帯はもっと作れたと思う。そこでもう少しパワーを持ってできたら」。神戸弘陵にとっては、同点とした後半立ち上がりの時間帯に追加点を奪えなかったことが勝敗の分かれ目となってしまった。



3年ぶりに出場した昨年末の選手権、神戸弘陵は1回戦で優勝した藤枝順心(静岡)に1-7で敗れた。今年は新人戦とインターハイの県大会で初めて優勝すると、近畿大会も決勝に勝ち上がってインターハイ初出場を果たす。1回戦では優勝候補の一角であった十文字(東京)に4-0で大勝を飾り、2回戦では準優勝した大商学園と接戦を演じた。創部10年目を迎えた今年はチームの歴史を次々と塗り替えている。

「全く通用しないことと、通用することが、身に染みて整理できた。何が足りないから全国で勝ち上がっていけないか選手たちも感じてると思うし、僕自身も感じてるところはある。選手権から引き続き、全国の優勝、準優勝チームと、本気の勝負をやらしてもらったことで、全国で勝ち上がっていくチームの基準がどんなものか知れた。経験できた。だから自分らもどこを基準にやっていかないといけないか、経験できているのは、チームが成長する上で非常に良かった。冬はここからベスト4、ベスト8に間違いなく堅く勝ち上がっていけるようなチームになれたらいいかなと思います」(松下監督)。

敗戦直後ではあるが、ピッチに立っていた選手たちも選手権に向けた課題を話してくれた。

佐治
「クリアを拾ってカウンターでゴールっていうのしかできてないので、もっと後ろでつないで持っていくっていうサッカーができないと、全部カウンターカウンターってなると前の負担にもなると思うので、後ろでもっとつないでいくっていうのはやりたいです」。

鈴木
「まだ足りないところがたくさんある。もっと練習しないといけないと思いました。少ないチャンスの中で、そのチャンスものにできないところです」。

選手権での大敗を糧に確かな足跡を残したチームは、夏の舞台で得た収穫や課題を糧にして、もう一回り成長した姿を地元で開催される選手権で見せてくれるに違いない。