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[インターハイ]専大北上、藤枝順心にPK敗退も選手権につながる”前向きな敗戦”

トピックス Takuma Omori(みなサカ編集長)
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2024年7月30日(火)
令和6年度 全国高等学校総合体育大会 1回戦
藤枝順心 1(4PK2)1 専大北上
[藤枝順心]植本愛実(28分)、[専大北上]昆野杏梨(70+3分)




専大北上(岩手)は7月31日、全国高等学校総合体育大会で藤枝順心(静岡)と対戦。1-1からのPK戦の末に敗れた。

昨年は1回戦で秀岳館(熊本)とのPK戦を制してベスト8入りを果たしている。それから比べると、この結果は一歩後退と言えるかもしれない。だが、その試合内容を見ると、ここ数年にわたるチームの成長が反映されていると、筆者は感じている。佐藤徳信監督は試合を次のように振り返る。

「相手との力関係もあって、こういうゲームをしなきゃダメかなと思っていた。前半は思ったより選手たちも頑張ってくれたし、しっかりはまった。ある程度狙い通りに進んでいった。終盤に少しギア上げて、だんだんそういう選手入れて点を取りたいなと。勝ち上がるためには、1-1PKでも全然ありだと思っていたので、そういった意味では狙った形になったゲームですね」。

試合は守備的にはいった。公式記録によると前半のシュートはゼロ。最終ラインからロングボールを織り交ぜてくる藤枝順心に対して、ゴール前を固めてペナルティエリアへの侵入を許さない。前半28分にはミドルシュートを決められ、藤枝順心に先制点を許したが、集中が途切れることはなかった。

専大北上は守備の要であるDF佐々木こころ(3年)が負傷により大会の登録メンバーから外れている。代役を務めたのはDF岩渕心春(2年)、DF加川凛(3年)とセンターバックコンビを組んだ。「加川がしっかり対応できると思ったし、代わりに入った岩渕もまだ2年生ですけど、全然やれる能力がある。今日も1対1でほぼ負けてない」(佐藤監督)と、佐々木の穴をしっかりと埋める。決定的なシュートも打たれたが、GK山下真央(3年)が好セーブで防いだ。

負傷離脱した佐々木こころに代わって、DFラインを統率した加川凛。 負傷離脱した佐々木こころに代わって、DFラインを統率した加川凛。

0-1で折り返した後半も守備から入りつつ、前からプレッシャーをかけてボールを奪い、攻撃に転じる機会を窺っていた。そのきっかけとなったのは選手交代である。専大北上は後半19分にMF平山梨暖(2年)、同29分にMF工藤梨乃(3年)を投入。徐々に攻守の切り替えを速く、前からボールを奪いに出ていく。すると終盤に向けて、立て続けにチャンスが生まれた。

後半33分には素早い攻守の切り替えでボールを奪い、MF昆野杏梨(3年)のパスから工藤がシュート。同35+1分には自陣からのフリーキックに反応したMF高鹿沙紀(2年)がゴール前に飛び込んでいく。飛び出したGK伊藤楓夏(2年)がキャッチしたが、触れば1点という決定機だった。

その1分後には複数の選手で囲い込んでボールを奪い、高鹿がシュート。これもGK伊藤がパンチングで逃れる。そして迎えた後半35+3分、ついにフリーキックから昆野がヘディングシュートを決め、土壇場で試合を振り出しに戻した。

「どこかで1つギアを上げて、ボールを奪いに全員で行くっていうのを狙い持ってやってたので、どこかでボールひっかけて全員で攻撃して、コーナーでもいいから取れたら1本のチャンスを決め切ろうっていうふうに話してました」と、キャプテンのMF大野妃菜(3年)が語る通り、狙い通りの形でPK戦へと持ち込んだ。



PK戦は2-4で敗れて初戦敗退となった。佐藤監督と大野キャプテンは次のように試合を振り返っている。

「前向きな負けというか、やっぱり日本一になってるチームなので。そういったチームと戦えたこと、勝てはしなかったけど、そこに近づけたということ。というのは何かしら自信になるし、モチベーションにも絶対つながると思う。この経験は冬に向けては非常に大きいんじゃないかなと思ってます」(佐藤監督)

「自分たちよりレベルが高い相手に対しての戦い方というのは、先生が準備してくれた部分を整理して自分たちでピッチ内で声をかけて出来ていた。あとは最後に勝ち切るところにまだ甘さがある。日常から変えていかなければならないかなと思います」(大野)

勝てはしなかったものの、強豪相手にいかに戦うか。準備してきた戦術をピッチで表現できる選手がいるからこそ、PK戦まで持ち込むことができた。ここ数年、全国ベスト4を目標に掲げるチームにとって、この日の敗戦は決して挫折ではない。佐藤監督の言うとおり、前向きな敗戦であり、冬の選手権に向けての糧となるに違いない。
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