[東京都高校総体]「守備は落ち着いて出来た」(長谷川宙主将)、準V文京学院は攻撃OP構築に取り組む
トピックス2024年5月12日(日)
令和6年度 第25回東京都高等学校総合体育大会 決勝
十文字 0-2 文京学院
得点:[十文字]今ゆうり(17分)、新井萌禾(65分)
第25回東京都高等学校総合体育大会は12日、駒沢公園第二球技場で決勝が行われ、十文字と文京学院大学女子が対戦。前半17分にMF今ゆうり(1年)のゴールで先制した十文字が後半30分にもMF新井萌禾(3年)が追加点を挙げ、2-0で勝利した。
「守備の時間が長くて、キーパーに助けられた部分が多かった。攻める時間がなかったから大変だったけど、 もうちょっと落ち着いてつなげればなって思った部分はいくつかかありました」。文京学院のキャプテン、DF長谷川宙(3年)はこう試合を振り返った。
十文字はキャプテンの新井がベンチスタート。AFC U-17女子アジアカップに参加中のFW本多桃華(2年)も不在だったが、スタメンには個々の能力が高い選手が居並ぶ。
立ち上がりは日テレ・東京ヴェルディメニーナから加入した1年生・今が右サイドバックの位置から攻撃参加を繰り返し、8分、13分にシュート。その流れで今が先制点を奪った。その後は中盤の3枚、川口歩奏(2年)、伊藤芽紗(2年)、福島茉莉花(3年)ら、技術の高い選手たちが文京学院の守備網を切り崩そうとドリブル突破を幾度も仕掛ける。
対する文京学院は前半17分、MF新井爽花(2年)に替わって、FW海藤和心(1年)を投入。システムも5-4-1から4-4-2へ移行する。中央を固めて相手の攻撃を食い止めながら、シュートに持ち込まれても冒頭のコメント通り、GK木村真昼(3年)が好守を連発。追加点を与えない。
守備陣の頑張りに攻撃陣も奮起する。前半32分には長谷川のロングフィードを前線で海藤が収め、落としたボールにFW土屋美悠(3年)が反応するが、ボールタッチが大きくシュートには至らない。その4分後には土屋のロングボールに海藤が走り込むが、十文字DF小島世里(3年)が快速を飛ばしてカバーリングする。シュートには持ち込めなかったものの、ゴール近くに迫っていった。
「最初はテンパってたけど、だんだん流れが掴めてきたから、そこらへんはディフェンスラインみんな落ち着いてできてたんだと思います」と、キャプテンの長谷川は振り返る。相手の攻撃にも慣れ、落ち着いた守備からカウンター攻撃につなげる。シュートを記録することは出来なかったが、1失点目から2失点目までの約50分間、0-1の状況から同点ゴールを狙い続けた。
味方を鼓舞するキャプテン、DF長谷川宙
このチームのベースとなっているのは高い守備力である。新チームとなって最初の公式戦である東京都高校女子サッカー新人戦では5試合4失点。1回戦から準決勝までの4試合をすべて完封で勝ち上がっている。十文字との決勝は0-4で敗れたが、準優勝する原動力となった。今大会は4試合3失点。準決勝では東久留米総合に先制されながら追いつき、PK戦を制して決勝に駒を進める。十文字との決勝でも先制点を許した後も大崩れすることなく、追加点を与えない。接戦でも集中力を切らさず、粘り強い戦いを見せている。
守備力向上に一役勝っているのが、「9番」「10番」という攻撃的な番号を背負っている選手たち。DF藤井若葉(3年)とDF長野郁香(3年)である。
「自分たちはサイドバックが起点。元々は前線の選手だったんですけど、ディフェンスを固めるから後ろに下がってきてくれた。早いので他の試合で点を決める時に10番(長野)が多かったり、クロスを上げて逆のサイドバックが入ってくるみたいなことを考えてやっていました」(長谷川)。DFラインを安定させるだけでなく、攻撃でも鍵を握る存在だ。
チームの当面の課題は、藤井と長野が抜けたオフェンス面。インターハイ予選に向けても攻撃の練習をたくさんやってきたという。選手権予選に向けても解決すべき課題となりそうだ。
「(スタメンに)サイドバックが出来る子が入ってくれば、10番(長野)だったり9番(藤井)がひとつずつ前に上がれる。4番(DF杉野汐里)の子は今まで一緒にセンバ(センターバック)をやってたんですけど、14番(DF鎌田彩那)が入ってきてくれたことによって、4番がひとつ前に上がったり、サイドに出たり出来る。攻撃のレパートリーが増えるんですよ」(長谷川)。
実際、この試合でも途中から鎌田と長谷川がセンターバックコンビを組み、杉野がアンカーに上がっている。前半途中にフォワードとして投入された海藤も1年生。1年生の台頭は攻守において、チームのオプションを増やしている。
さらには「サイドバックがやりたいです。サイドの方が上がれるし楽しい」と、長谷川も希望を口にする。これにはインタビューを周りで聞いていた監督・コーチ陣も苦笑いしていた。
いずれにしても、1年生をはじめとする新たな選手の成長が選手起用の選択肢を増やす。すべてはこの夏の成長にかかっている。