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[東京都高校総体]十文字、過密日程を乗り越えつかんだ8連覇!

トピックス Takuma Omori(みなサカ編集長)

10日で5試合。十文字は関東女子サッカーリーグを並行して戦う中、第25回東京都高等学校総合体育大会で優勝を成し遂げた。終わってみれば8連覇達成という強さを見せたが、その道のりは簡単ではなかった。

東大和との初戦(4/29)に4-0で勝利した十文字は5月4日、準々決勝で帝京と対戦する。試合は22-0で大勝を飾る。筆者はこの試合を見ていない。だが、チームSNSに投稿された結果に記載された得点者を見る限り、主力選手の出場もあったようだ。

最大の山場は決勝のひとつ前、修徳との準決勝(5/6)で訪れた。いつも決勝で対戦することの多い両者だが、新人戦の結果によりこの時点での対戦となっている。

十文字はこの試合の前日、5日にVONDS市原レディースと関東女子サッカーリーグを戦っている(●1-2)。準決勝にはこの試合からメンバーをひとりだけ替えて臨む。

連戦の疲れもある中、試合を優位に進めたのは修徳だった。十文字は前半、シュート1本に抑え込まれている。焦りからか前半からゴール前へロングボールを放り込むような場面もあったが、修徳のDFラインはびくともしない。VONDS市原戦のスタメンから唯一のベンチスタートだった澤田さくらアリーヤ(2年)を前半28分から投入するなど、主力選手を休ませる暇を与えてもらえない。

それでも次第に攻勢を強めていった後半、同12分には中央を破られて失点する。35分ハーフという短い時間の中では苦しい展開となったが、すぐにビハインドを挽回。失点から2分後、十文字はPKを獲得すると、これをMF新井萌禾(3年)が冷静に決めて試合を振り出しに戻した。

規定の70分では決着がつかず、10分ハーフの延長戦に突入する。延長前半8分、十文字は浮き球のパスに反応したMF伊藤芽紗(2年)がスペースを突くが、シュートは相手GKに阻まれる。すると延長後半6分にはペナルティーエリア内で相手を倒してPKを与えてしまう。だが、PKはクロスバーを直撃。九死に一生を得る。

延長戦でも均衡が破れず、試合の行方はPK戦に委ねられる。4人目が失敗した修徳に対して、十文字は同点ゴールのPKを成功した新井ら、全員が成功。5-4で制して、かろうじて修徳を退けた。

過密日程を部員全員で乗り越えた十文字。 過密日程を部員全員で乗り越えた十文字。

そして迎えた決勝戦(5/12)。この日も十文字は前日に関東女子サッカーリーグの東京国際大学戦があり、まったく同じ11人がスタメンに並んだ。

試合は右サイドバックのスタメンに抜擢された1年生、今ゆうりのゴールで十文字が先制する。だがその後は文京学院の集中した守備を崩せず、追加点を奪うことが出来ない。

中盤の選手たちが個人技でこじ開けようと、ドリブル突破を繰り返す。ゴールを脅かすシーンもあったが、相手も徐々に十文字の攻撃に慣れてくる。シュートに持ち込んでもGKのファインセーブに止められる。約50分間、1-0の時間帯が続いた。

ようやく追加点が生まれたのは後半30分。途中出場の新井がDF小島世里(3年)のパスから放ったシュートが決まり、粘る文京学院を突き放した。スコアは2-0、シュート数は24対0。相手にシュートを一本も打たせない完封勝利だったが、スコア以上に苦しいゲームをモノにした。



9日間で5試合という過密日程、さらにはセンターフォワードを務めているFW本多桃華(2年)がAFC U-17女子アジアカップに参加するU-17日本女子代表に招集されていたため不在。悪条件が重なる中で優勝をつかんだ意味は決して小さくない。

過密日程について、十文字としては関東女子サッカーリーグで格上の大学生や社会人チームと対戦できることの恩恵は計り知れない。

一方で筆者には別の想いもある。同リーグはVONDS市原レディース、南葛SC WINGSといった、なでしこリーグ昇格をめざしているクラブが所属している、関東で最高峰のリーグである。十文字は高校にとって大事なインターハイ予選との連戦となってもベストメンバーを送り出した。結果として優勝したが、いかなる結果だったとしてもこの姿勢をリスペクトしたい。
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