minasaka.net

日本女子サッカーの"今"が分かるWEBマガジン「みんな@サッカー」

[なでしこ2部入替戦]レイア湘南、次節の選択肢を増やす初戦勝利!アタッカー陣が勝利への道を切り開く

トピックス Takuma Omori(みなサカ編集長)

2023年11月5日(日)
2023プレナスなでしこリーグ2部入替戦 第1節
‪SEISA OSAレイア湘南FC‬ 2-0 ディオッサ出雲FC
得点:[R湘南]中島咲友菜、鈴木陽笑


2023プレナスなでしこリーグ2部入替戦が開幕した。5日、レモンガススタジアム平塚(神奈川県)では‪SEISA OSAレイア湘南FC‬がディオッサ出雲FCを迎えた一戦が行われ、後半にMF中島咲友菜とFW鈴木陽笑がゴールを挙げた湘南が2-0で勝ち、白星スタートを切った。

9月21日から24日にかけてJヴィレッジ(福島県)で行われた「2023プレナスなでしこリーグ2部入替戦予選大会」でグループリーグを首位通過した両チームは、順位決定戦で激突。2-0で勝利した湘南が予選大会で1位となり、この入替戦ではホームゲームを2試合を開催する権利を得ている。悲願のなでしこリーグ昇格をめざし、ふたたび両者が相まみえた一戦は湘南に軍配が上がった。

★★★

試合は立ち上がりから湘南がボールを保持する。出雲は最終ラインを押し上げ、中盤でコンパクトなブロックを作り、またマンツーマン気味に守って、湘南のゴール前への侵入を許さない。湘南が最終ラインから相手の背後を狙ったボールは出雲のDFラインがはね返し、GK長竹亜依も素早いカバーでスペースを埋める。

相手の最終ラインをなかなか突破できない湘南だったが、それでもチャンスを作る。

21分にはMF国吉花吏埜が左サイドからカットイン。この試合最初のシュートを放つ。23分にはDF阿久井泉からのロングフィードに走り込んだFW高橋沙矢香の折り返しをFW塩野海風がシュートする。その2分後には巧みな動きでスペースに飛び出した鈴木陽がゴールネットを揺らすが、オフサイド判定でゴールは認められない。

出雲はCFタイス・フェヘルへボールを集め、両サイドからの仕掛けで切り崩しを図る。22分には攻勢を仕掛ける湘南の間隙を縫って、チャンスを作る。MF住徳彩からのパスを左サイドで受けたタイス・フェヘルがクロスを上げ、ゴール前のDF伊藤明里が頭で合わせる。これは湘南GK浅越千裕が懸命にキャッチした。

先制点には至らなかった出雲だが、ここから挽回。前半の終わりから、後半の立ち上がりにかけては、攻める出雲・守る湘南という構図で試合が進む。湘南はこの我慢の時間帯を無失点で切り抜けたことで、試合を動かしていくことになる。

「(前半は)ちょっと柔軟性に欠けてたかなと思っていて、いつもの形で攻めたいのはあるけど、あまりいい状況じゃないところにボールが入っていた。後半すこし改善していったと思うんですけど、サイドに起点を作って、センターバックからなるべく早めに前の推進力ある選手にボール預けた。パスだけじゃないので」。

そう話した柄澤俊介監督は後半、次々とアタッカーをピッチに送り込んでいく。まずは56分、右ウイングを務めていたDF鈴木真央に替えて、FW加藤ももが入ると、鈴木真の位置に回った高橋を積極的に勝負を挑ませる。64分には鈴木陽とのパス交換で突破を図ると、その1分後にはドリブルからのシュートで得たコーナーキックから阿久井が頭で合わせる。さらに67分にも高橋のクロスから塩野がヘディングシュートを放つ。

出雲も65分、左サイドを駆け上がったMF宮川真莉乃のクロスにFW山本早織が合わせる。決定的なシーンだったが、ダイレクトで振り抜いたシュートは枠をとらえられない。公式記録によると、出雲が後半に放ったシュートはこの一本。結果的に最後のシュートとなり、湘南が主導権を握り続ける。

そして72分にはボランチのMF遠藤彩椋に替わって、MF中島咲友菜を投入。すると79分、ついに試合が動いた。中島が左サイドからカットインしてゴールに迫ると、出雲は突破を阻もうと3人が寄せていく。中島の突破は阻まれたかに見えたが、相手が触ったボールが中島に当たってゴールに吸い込まれていった。

後半アディショナルタイム3分には追加点。塩野が国吉にボールを預けると、左サイドをドリブルで持ち上がってゴール前へ横パス。ここに走り込んできた鈴木陽が右足でゴールネットを揺らす。前がかりになった相手の背後を突き、ダメ押しのゴールを奪った。

★★★

苦しみながら勝ち点3をつかみ取った湘南。第1節終了時点でFC今治レディースと勝ち点3で並び、得失点差で首位に立った。

4チームによる総当たり1回戦で行われるこの入替戦。上位3チームがなでしこリーグ2部への昇格、または残留する。次節の結果次第では、最終節を待たずになでしこリーグ2部への昇格を決められる優位な状況だ。

柄澤俊介監督はこの日の結果について、次のように話した。

「勝ち点1でも御の字かなと考えてました。3試合通して勝ち点をいくつ取れるかというところで、昇格が一番の目的なので。そう考えた時に(引き分けでも)そんなに焦る必要はないかなと。他の会場で勝ち負けが出ているので、勝ち点ゼロというのが一番のリスクでした」。

第2節は12日、ホーム(荻野運動公園競技場)にFC今治レディースを迎える。勝利すれば文句なしに、引き分けでも1時間早くキックオフする他会場の結果次第で昇格が決まる。だが、第2節と第3節は困難が待ち受けている。

11日には全日本高校女子サッカー選手権関東大会が開幕。全国大会への出場権を懸けた戦いが18日まで行われる(開催日は11,12,18,19日)。湘南の下部組織である星槎国際湘南は、10年連続10回目の出場をめざして大会に臨む。トップチームである湘南には先発した国吉、先制点の中島をはじめ、複数の選手が下部組織登録されている。このため、第2節と第3節はふたつの大会を並行して戦わなければならない。

「どっちも取れるように。今、スケジュールを組んでいます。12日のゲームがどっちもキーじゃないですか。今週のトレーニングを見て、考えようかなと思います。今日勝ち点3が取れたので、そういう意味では来週の選択肢は増えた」と柄澤監督。

「二兎追うものは一兎も得ず」ということわざがあるが、二羽のウサギ(二兎)を得るための戦いに湘南は挑む。