[東北新人戦]決勝点を挙げたのはFW転向1週間の吉田伊織、高校サッカー最後の1年でコンバートに挑む
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第22回東北高校新人女子サッカー選手権大会は22日、相馬光陽サッカー場で準決勝が行われ、専大北上(岩手①)と尚志(福島①)が対戦。延長後半に2得点した尚志が2−0で勝ち、3大会連続となる決勝へ駒を進めた。23日の決勝では2年ぶり2度目の優勝をめざし聖和学園(宮城)と対戦する。
試合を決めたのは、初心者マークのフォワードだった。
押し気味に試合を進めた前半を折り返し、後半開始から投入されたのが吉田である。だが試合の主導権を専大北上に奪われる。専大北上は最終ラインから前線へロングボールを繰り出す。セカンドボールの回収を図った尚志だったが、専大北上に拾われて後手を踏む。公式記録によるシュート数でも後半は2対10と劣勢を余儀なくされ、吉田もシュートを撃つ機会はめぐってこなかった。
その機会がようやく訪れたのは延長後半3分。尚志は右サイドからカットインしたFW福田こはる(2年)が左足でシュート。このボールが相手DFに当たり、こぼれ球をDF吉田伊織(2年)が押し込み、試合の均衡を破る。その5分後には、DF三船さくら(1年)がけったFKのはね返りを福田は押し込み、ダメ押しの2点目。90分の戦いに決着をつけた。
「オフサイドかなと思った。へなちょこだったんですけど決められてよかったです」。照れ笑いしながら話したが、どんな形のゴールでも1点は1点だ。そして、この得点は松本克典監督、そして母親の誕生日に花を添えるゴールにもなった。

吉田はノジマステラ神奈川相模原アヴェニーレ出身の2年生。中学時代はセンターバックを務めていた。「上(ドゥーエ)に行くという選択肢もあったんですけど、練習会に行った時に人間性の部分が成長できると思った」と、尚志への進学を決断する。だがサッカーは順風満帆ではなかった。
1年目は前十字靭帯の怪我に苦しみ、復帰した2年目も怪我の影響か中学時代のようには動けなかったという。選手権が終わり、新チームがスタートして数日が過ぎたころ、「トレーナーさんにボールの持ち方とか、フォワードで収まるんじゃないかと言われて、やってみることになった」と、フォワードへのコンバートを決断する。
「(手応えは)他の人よりは身体が強いし身長もある方なので、収められる。(課題は)スピードがないので裏に抜ける時とか相手を抑えながら前に入れるように、スピードをカバーするようにしています」。尚志の特徴でもある前線からの守備に取り組みつつ、自らの長所やDFとしての経験を活かしながら課題とも向き合っている。
フォワードを始めてまだ一週間あまり。今大会が公式戦デビューどころか、対外試合をするのも初めてだった。不来方(岩手②)との1回戦では先発フル出場し、前半35分にチームの3点目を決めている。この日の得点で2試合連続ゴールとした。
「前でボールを収めて、周りのみんなに時間を作ってあげて、自分も点を決めますけどみんなにも点を取らせるような選手になりたい。そしてチームを勝たせたい」。吉田はそう将来を展望する。自身の成長を誓って飛び込んだ高校サッカーもラスト一年。まずは幸先のよいスタートを切った。ここからも自身の力で道を切り拓いていく。