[U18関西]課題も見つかった追手門学院戦。大商学園はチーム一丸で乗り越え、インターハイ予選へ
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U-18女子サッカーリーグ2023 関西1部で大商学園が開幕7連勝を飾った。14日にJ-Green堺で行われた第7節 追手門学院戦では、前半に奪った2点のリードを守り切り、2−0で勝利を収めた。
立ち上がりから主導権を握ったのは大商学園。開始早々の7分に試合の均衡を破る。MF柳原さくら(3年)のコーナーキックからDF太田美月(2年)がファーサイドで頭を合わせてゴールネットを揺らす。大商学園は最初のセットプレーを得点に結びつける。
先制直後の9分にはFW盧初奈(3年)のポストプレーからテンポよくボールをつなぎ、FW枚田乙愛(2年)がシュート。流れるような攻撃でフィニッシュまで持ち込む。
対する追手門学院もFW西杏琳(3年)が左サイドで起点となり、左SB祐谷くるみ(3年)の攻撃参加などから反撃のチャンスを窺う。大商学園は相手のカウンター攻撃に対処しながら徐々に最終ラインを押し上げていくと、前半終了間際の42分に追加点を奪う。
枚田が右サイドからドリブルでカットイン。このプレーは相手DFに引っかかったが、こぼれ球をMF佐溝愛唯(3年)が左足ダイレクトでけり込んだ。2ー0とリードを広げて前半を折り返す。
エンドが変わった後半、大商学園は一転して苦戦を強いられる。2点を追いかける追手門学院がDFラインを押し上げ、前線から相手の最終ラインにプレスをかけていく。圧力をかけられた大商学園はビルドアップが上手くいかず、相手の背後をつくこともままならない。
それでも絶好の追加点チャンスが訪れる。83分、ペナルティーエリアに侵入した佐溝が倒され、PKを獲得。だがこのPKをまかされたFW佐藤ももサロワンウエキ(1年)のシュートは枠を捉えられない。
その2分後、追手門学院は左サイドハーフからフォワードへポジションを移した西がワンツーからシュートに持ち込むが、これも枠を捉えることは出来ない。後半は相手から主導権を奪い返した追手門学院だったが、後半のシュートはこの1本のみ。大商学園が集中した守備でゴールに鍵をかけ、今シーズン6試合目の完封勝利を飾った。

スコアの上では快勝だったが、スッキリしない内容で課題の残るゲームとなった。キャプテンのDF松浦加奈(3年)は試合を次のように振り返る。
「前半は結構自分たちのやりたいことができてて、主導権を握れてたんですけど、後半になってから相手が前への勢いを増してきて、やりたいことあまりできずにどんどん押し込まれるシーンが多くなった。終わり方もあまり良くなかったので、まだ課題が多いなという感じです」
追手門学院が前からプレッシャーをかけてきた後半は、自陣で相手の攻撃をしのぎながら我慢する時間帯が続いた。ラインを押し上げていた相手DFラインの裏にはスペースがあり、そこへボールを運んで仕掛けようと試みていた。だがボールを奪う位置が低く、そこからの攻撃は先に相手に対処されたり、セカンボールを拾われたりした。主導権を握り返すには至らなかった。
「(後半の)最初は風もあって裏まで届かなかったり、 相手の形が変わった中で、それに対応できなかった。もうちょっと前と後ろの意図を合わせていきたいなって思います」と、キャプテンの松浦は語った。(写真後へつづく)
この日のインタビューで松浦が何度か口にした言葉である。意図を合わせるためには味方同士のコミュニケーションが必須だが、質量ともにコミュニケーション能力が高いことが大商学園の強みである。
筆者は4月に三重県伊勢市で開催された「7th ISE VENUS CUP 2023」という大会に参加した大商学園の試合をすべて観戦したが、Aチーム、Bチームともによく声が出ていて、選手間のコミュニケーションも活発に行われていた。
この日の試合でもハーフタイム、飲水タイムなど試合が止まる度にポジションが近い選手たちが話し合っているのを目撃している。「ずっと言ってますけどね。今年は特に意識してやってるかな。ピッチ上では上下関係もありません」(岡久奨監督)。
「チームとして、チーム力を1番大事にやっています。出る出ないとか、立場が分かれてしまう中なんですけど、立場は関係なく、全員が大商っていうチームとして戦って、出てない人は出てる人に思いを託したいし、出てる人も出てない人の気持ちを背負って戦おうっていうのは、常にみんなで言ってます」(松浦)
決して今年のチームだけがコミュニケーションを意識しているわけではないようだが、筆者には強い印象を残した。松浦が話すように、それぞれの立場にかかわらず、ひとりひとりがチームのために行動しているからこそ、それがコミュニケーションという形となって表れているのかもしれない。
大商学園は21日にインターハイ予選(大阪高校春季サッカー大会)の初戦を迎える。これまで戦ってきた90分のリーグ戦とは違って、一発勝負のトーナメント。しかも試合時間は70分しかない。この日の後半のように手をこまねいている間に試合が終わってしまう展開は十分にありうる。チームにとって苦しいとき、このチームの強みであるコミュニケーション能力の高さが助けとなってくれるに違いない。